星月夜の少年人形 33
母はきっぱりと言い切った。
「優月の人生ですもの。優月がいいなら、お母さんには何の異存もないわ。」
父も頷いた。
「少し遠くなるが、華桜陰高校なら自宅から通えない距離ではないな。それに、正直言うと優月がいないと塔矢が毎日ぐずって困るんだよ。帰ってくれると助かる。」
くす…と優月は、塔矢を見やった。
「そうなの?塔矢はお兄ちゃんになったから、美紘の面倒も見て頑張ってるんだよね?」
塔矢は真っ赤になってそっぽを向いている。どうやら、聞き分けのなかった自覚がある様だ。優月はよいしょと塔矢を抱き上げた。きっと、生まれたばかりの赤ん坊に両親は振り回されて、塔矢のことはきっと二の次になっているのだろうと、想像がつく。
寂しかった塔矢の気持ちをはかった。
「ねぇ、塔矢はお母さんのお弁当と、ぼくのお弁当どっちが好き?」
首に巻きついた塔矢が耳元で「兄ちゃん。」と、正直にささやいた。
「おうちに帰ったらね、塔矢のお弁当は兄ちゃんが作るからね、約束する。」
「ほんと・・・?ぴかちゅうの・・・?」
きゃあっ・・・と、塔矢は声を上げた。老人は、どこか寂しそうな顔で娘の家族の会話を聞いていた。
「ここで、共に暮らすのかと思ったが・・・そうか、おまえは帰るのか。」
申し訳ありませんと、榊原が深々と頭を下げた。寂しい老人と、社長と二人が暮らす広い屋敷に、優月が共に暮らすと榊原が告げたのを、老人は密かに心待ちにしていたらしい。
「まあ、誘拐事件は大抵、犯人が逮捕されて終わると、決まっているからな。榊原の思惑通りにはいかないこともあるだろう。たまには、顔を出しなさい。」
「週二日、語学の勉強をこちらでしてはいかがですか?」
「いいんですか?少し、わかり始めた所だったから嬉しいです。出来れば、このまま続けたいなって思ってたから。」
「では週末、木曜と金曜日、先生にこちらに来ていただくようにお願いしておきます。」
はい、と、返事した優月の顔は明るかった。
優成の会社のことも、もう安心だった。何もかも、これで大丈夫だと、胸をなでおろした。
だが、たった一つだけ、あのマンションでの少年たちのことが片付いていなかった。
「星月夜」という名の売春組織の「少年人形」桃李と、紘一郎と名乗った二人は、必ず電話をしてくると優月に告げた。
抜き損ねた棘のように、チクリと胸が痛んだ。
(´・ω・`) すまぬ~・・・時間がなくて短めになってしまいました。後、一話か二話くらいで終わるはずです。
拍手もポチもありがとうございます。
励みになりますので、応援よろしくお願いします。
コメント、感想等もお待ちしております。 此花咲耶
「優月の人生ですもの。優月がいいなら、お母さんには何の異存もないわ。」
父も頷いた。
「少し遠くなるが、華桜陰高校なら自宅から通えない距離ではないな。それに、正直言うと優月がいないと塔矢が毎日ぐずって困るんだよ。帰ってくれると助かる。」
くす…と優月は、塔矢を見やった。
「そうなの?塔矢はお兄ちゃんになったから、美紘の面倒も見て頑張ってるんだよね?」
塔矢は真っ赤になってそっぽを向いている。どうやら、聞き分けのなかった自覚がある様だ。優月はよいしょと塔矢を抱き上げた。きっと、生まれたばかりの赤ん坊に両親は振り回されて、塔矢のことはきっと二の次になっているのだろうと、想像がつく。
寂しかった塔矢の気持ちをはかった。
「ねぇ、塔矢はお母さんのお弁当と、ぼくのお弁当どっちが好き?」
首に巻きついた塔矢が耳元で「兄ちゃん。」と、正直にささやいた。
「おうちに帰ったらね、塔矢のお弁当は兄ちゃんが作るからね、約束する。」
「ほんと・・・?ぴかちゅうの・・・?」
きゃあっ・・・と、塔矢は声を上げた。老人は、どこか寂しそうな顔で娘の家族の会話を聞いていた。
「ここで、共に暮らすのかと思ったが・・・そうか、おまえは帰るのか。」
申し訳ありませんと、榊原が深々と頭を下げた。寂しい老人と、社長と二人が暮らす広い屋敷に、優月が共に暮らすと榊原が告げたのを、老人は密かに心待ちにしていたらしい。
「まあ、誘拐事件は大抵、犯人が逮捕されて終わると、決まっているからな。榊原の思惑通りにはいかないこともあるだろう。たまには、顔を出しなさい。」
「週二日、語学の勉強をこちらでしてはいかがですか?」
「いいんですか?少し、わかり始めた所だったから嬉しいです。出来れば、このまま続けたいなって思ってたから。」
「では週末、木曜と金曜日、先生にこちらに来ていただくようにお願いしておきます。」
はい、と、返事した優月の顔は明るかった。
優成の会社のことも、もう安心だった。何もかも、これで大丈夫だと、胸をなでおろした。
だが、たった一つだけ、あのマンションでの少年たちのことが片付いていなかった。
「星月夜」という名の売春組織の「少年人形」桃李と、紘一郎と名乗った二人は、必ず電話をしてくると優月に告げた。
抜き損ねた棘のように、チクリと胸が痛んだ。
(´・ω・`) すまぬ~・・・時間がなくて短めになってしまいました。後、一話か二話くらいで終わるはずです。
拍手もポチもありがとうございます。
励みになりますので、応援よろしくお願いします。
コメント、感想等もお待ちしております。 此花咲耶
- 関連記事
-
- 星月夜の少年人形 番外編 「それから・・・」 (2011/06/15)
- 星月夜の少年人形 35 【最終話】 (2011/06/14)
- 星月夜の少年人形 34 (2011/06/13)
- 星月夜の少年人形 33 (2011/06/12)
- 星月夜の少年人形 32 (2011/06/11)
- 星月夜の少年人形 31 (2011/06/10)
- 星月夜の少年人形 30 (2011/06/09)
- 星月夜の少年人形 29 (2011/06/08)
- 星月夜の少年人形 28 (2011/06/07)
- 星月夜の少年人形 27 (2011/06/06)
- 星月夜の少年人形 26 (2011/06/05)
- 星月夜の少年人形 25 (2011/06/04)
- 星月夜の少年人形 24 (2011/06/03)
- 星月夜の少年人形 23 (2011/06/02)
- 星月夜の少年人形 22 (2011/06/01)