小説・蜻蛉(とんぼ)の記・4
事切れる前、お袖の方は、息子貴久の乳母であったお福に言い含めた。
「わたくしは、心の臓の病がおきました。」
「後は・・・後は・・・」
命の尽きようとする、女主人に
「若様には、この福と大輔が付いております。」
そう言うのがやっとだった。
冷たい骸となって、お袖の方は屋敷に帰ってきた。
蒼白の顔でお福が心の臓の病でと告げると、貴久は激昂した。
「母上は、健康であったはず。何故だ、お福。」
「何があった?」
語らぬ乳母に、不信が募る。
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「わたくしは、心の臓の病がおきました。」
「後は・・・後は・・・」
命の尽きようとする、女主人に
「若様には、この福と大輔が付いております。」
そう言うのがやっとだった。
冷たい骸となって、お袖の方は屋敷に帰ってきた。
蒼白の顔でお福が心の臓の病でと告げると、貴久は激昂した。
「母上は、健康であったはず。何故だ、お福。」
「何があった?」
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