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小説・若様と過ごした夏・34 

「転生している若様のお母さんに会うことは、無理でしょうか?」


いくら何でも、無理だろうと思ったがお芳さんは


「奥方様は、そこにおわす・・・」


と指を差す。


まじっすか・・・?


誰?


指し示す指の先にいたのは、本堂で甲斐甲斐しく働いている「佳奈叔母さん」だった。


今は殆ど、若様のことを忘れかかっている若様の母上が守護霊なのだという。


同じ名前の宗ちゃんの、お母さんというのは偶然ではなかった。


どうする・・?真子。

ここは、現当主のおばあちゃんに相談するしかないと思う。


後、宗ちゃんにも。


ママは・・・ま、いいか。


役に立ちそうに無いもん。(ごめん)


佳奈叔母さんの背後にいる、若様のお母さんの記憶は薄れているだけで全て消えたわけではないのだろうか。


大法要のお経は、きっと若様を連れて行くことはできるだろうけど、幸せにはできない。


泣き濡れた若様が諦めて悲しくこの世に別れを告げる様子が脳裏に浮かんで、あたしを思い切り切なくさせた。


おばあちゃんは、黙り込んでずっと何かを考えているようだった。

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