小説・若様と過ごした夏・35
「良いわ。
何とかやってみましょう。
おばあちゃんは、何事か決心したらしい。
「ちょっと、佳奈。」
おばあちゃんが、佳奈叔母さんを借りた住職の部屋へと呼んだ。
「何?
後は、お料理の手配をしておかないと・・・
まだ、忙しいのよ、お母さん。」
「いいから、ちょっといらっしゃい。」
おばあちゃんは、凛としていた。
「あなたね、宗太郎が生まれた時のこと、覚えている?」
「なんなのよ、もう。
そんな昔の事どうだっていいじゃない。」
「宗太郎が生まれたとき、双子の片方の男の子が死んで、佳奈は病み疲れていたんだわね。」
え!?宗ちゃんも、双子だったの?
「・・・いいのよ。宗の方は無事だったんだから。」
「あたしは、宗が無事ならそれでいいの。」
どこか不自然な、佳奈叔母さんの言葉だった。
「おまえは、死んでしまった宗太郎の兄弟のことは、考えなかったの?」
「・・・」
佳奈叔母さんの顔は白かった。
視線はおばあちゃんから離れない。
「名前は何と付けたの?おっしゃい。」
「宗太郎の・・・兄弟の名前・・・?」
「宗太郎の・・・」
佳奈叔母さんは、記憶の底に沈んだものを無理矢理に、思い出そうとしていた。
「待って、お母さん。
・・・そうよ、わたしが名前をつけたのよ。」
「いつも、死んでしまう・・・
あなたの生んだ子は、双子だった。」
おばあちゃんは、佳奈叔母さんの中にいる人に、記憶を取り戻してもらおうと懸命に話しかけているのだった。
宗ちゃんが双子で、しかも兄弟は亡くなっていたなんて話は衝撃だった。
そんな風に何度も、繰り返されてしまったのだろうか・・・
若様は、再び生まれたもののやはり早くに亡くなったらしかった。
でも、そんな話の記憶は若様に無いと思う。
突然に、お墓の前に自分でもわからぬまま、佇んでいたのだから・・・
迷子になったまま、ずっとこの世に生まれてこれなくなった魂が若様だった・・・
何とかやってみましょう。
おばあちゃんは、何事か決心したらしい。
「ちょっと、佳奈。」
おばあちゃんが、佳奈叔母さんを借りた住職の部屋へと呼んだ。
「何?
後は、お料理の手配をしておかないと・・・
まだ、忙しいのよ、お母さん。」
「いいから、ちょっといらっしゃい。」
おばあちゃんは、凛としていた。
「あなたね、宗太郎が生まれた時のこと、覚えている?」
「なんなのよ、もう。
そんな昔の事どうだっていいじゃない。」
「宗太郎が生まれたとき、双子の片方の男の子が死んで、佳奈は病み疲れていたんだわね。」
え!?宗ちゃんも、双子だったの?
「・・・いいのよ。宗の方は無事だったんだから。」
「あたしは、宗が無事ならそれでいいの。」
どこか不自然な、佳奈叔母さんの言葉だった。
「おまえは、死んでしまった宗太郎の兄弟のことは、考えなかったの?」
「・・・」
佳奈叔母さんの顔は白かった。
視線はおばあちゃんから離れない。
「名前は何と付けたの?おっしゃい。」
「宗太郎の・・・兄弟の名前・・・?」
「宗太郎の・・・」
佳奈叔母さんは、記憶の底に沈んだものを無理矢理に、思い出そうとしていた。
「待って、お母さん。
・・・そうよ、わたしが名前をつけたのよ。」
「いつも、死んでしまう・・・
あなたの生んだ子は、双子だった。」
おばあちゃんは、佳奈叔母さんの中にいる人に、記憶を取り戻してもらおうと懸命に話しかけているのだった。
宗ちゃんが双子で、しかも兄弟は亡くなっていたなんて話は衝撃だった。
そんな風に何度も、繰り返されてしまったのだろうか・・・
若様は、再び生まれたもののやはり早くに亡くなったらしかった。
でも、そんな話の記憶は若様に無いと思う。
突然に、お墓の前に自分でもわからぬまま、佇んでいたのだから・・・
迷子になったまま、ずっとこの世に生まれてこれなくなった魂が若様だった・・・
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