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小説・約束・18 

明日、勝次に自慢してやろうと思っていた。
古い洋館に居るのは・・・
居るのは・・・
向こうむきに、顔を覆った白い包帯らしきものをゆっくりと解き始める。
・・・動悸が早くなった。
幽霊・・・?
勝次の言葉が、耳元で聞こえる気がする。
長い包帯を、側において眼を伏せたまま、今度はこちら向きに長いすに腰掛けた。
目を瞑って、背もたれに斜めに身を預けたまま、眠ろうとしているのか・・・?
そこにいるのは、市松人形よりも髪の長い、雛人形のように白い呉須の肌をした人だった。
閉じた目の、長いまつ毛が影を落としている。
白い肌に、異様なほど紅い唇が息をついた・・・

「・・・人間じゃないか・・・」

汗ばんだ手を、ズボンにこすり付けて、良平は扉に手をかけた。
古い扉に塗られた塗料は劣化して、はがれた魚の鱗のようにざらざらと手についた。

「パリ・・・」

足元で、枯れ枝が音を立てた・・・・
ゆっくりと、良平に視線を向けた、市松人形・・・


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