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小説・初恋・9(如月奏) 

その頃、寄宿舎の自室に戻った如月奏は、荒れていた。


「あいつっ・・・!」

「あいつっ・・・!」

怒りに平常心を失って、握りしめた華奢なこぶしがみるみる白くなる。

「白雪っ。」

白雪の持ってきた飲み物を乱暴にあおると、足元に叩き付けた。


無性に苛立って、乗馬鞭を所かまわず振りまくり、高価な家具に傷をつけた。


取り巻きは恐れをなして自室に退散し、残された小姓は機嫌を取る事も出来ず、甘んじて鞭の下に背中を晒した。


下手に止めると、なおも怒りは酷くなるので手に負えない。


主人の怒りをひたすら受けた、小姓の白いシャツは血に染まり裂けた。

激しい物音に気づいた多くが、遠巻きに扉の外から室内を覗っていた。


踏み込む勇気のあるものは、いない。


何しろ校内で、奏よりも身分が上の者は居なかったので、入るなと言われればそうするしかないと皆思っていたようだ。


「奏さま、お静まりください、奏さまっ・・・白雪が・・」


「きゃあっ・・・」


聞くに堪えない悲鳴が響く。

呑気に帰って来た二人は、人だかりに気が付いた。


「何かあったの?」


食堂で話しかけてきた者を見つけて、聞いた。


「奏さまが、ご乱心らしい。」


清輝はほら、あなたのせいですよ・・・と言うように颯を見た。


「奏さまっ!奏さまっ・・・おやめくださいっ・・」


尋常ではない叫び声に、颯は思わず室内に入った。


小姓の一人はおろおろと震え、もう一人は背中を血に染めて気を失っていた。

「如月・・・?」


「お前、何をやってるんだ・・・」


如月奏は、血走った瞳で颯の姿を認めると、何か言いかけてそのまま床に昏倒し、痙攣した。


「清輝っ!」


何とか頭だけは、床に打ち付けるのを防いだ・・・
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2 Comments

此花咲耶  

小春さま

小春さま

> うう~ん!
>
> 大興奮v-42

読みにくくて、ごめんね~。

2011/01/23 (Sun) 02:33 | REPLY |   

小春  

奏さま~大荒れ

うう~ん!

大興奮v-42

2011/01/22 (Sat) 23:25 | EDIT | REPLY |   

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