小説・初恋・12(誘い)
扉を開けたら、胸のところで祈るように両手を組んだ、如月奏の小姓が思いつめた顔で立っていた。
白菊と名乗った。
「どうした?」
「あの・・・あの・・・奏さまが。」
関わらないと決めたばかりの颯は、くるりと背中を向けた。
「行ってやれ、清輝。」
清輝がため息混じりに、ドアに向かおうとしたとき小姓が言った。
「湖上さまをお呼びなのです・・・」
「ぼくは、これから授業の下調べをするんだ。」
「大体、用があるなら人を介さず、自分で来るべきだろう。」
一目でわかるほど、がっくりと落胆して、使いの役に立たなかった奏の小姓は肩を落とした・・・
「・・・失礼いたしました。」
「ふ~ん・・・」
「可哀想にねぇ。
これからあの子が、如月の鞭を浴びるのか。」
「鞭・・・」
はっとして、颯は小姓を追った。
「わかった。同道する。」
しおれまくっていた露草に、その一言が水をかけたようだ。
「奏さま。来てくださいましたよ。」
「奏さま?」
どうやら、奥の部屋で着替えの最中だったらしい。
昨夜打たれて傷ついた小姓が、ふらふらと手伝いをしようとしたものの、打ち身の熱で身体がままならない風だった。
奏は部屋の中央で素肌にシャツを引っ掛けて、椅子に浅くかけ、倒れた小姓を不遜に見下ろしていた。
「白雪。急がないと時間が無い。」
「はい・・・はい・・・、今すぐ。」
白雪と呼ばれた小姓は、どうやら奏に靴下をはかせようとしているようだった。
白菊と名乗った。
「どうした?」
「あの・・・あの・・・奏さまが。」
関わらないと決めたばかりの颯は、くるりと背中を向けた。
「行ってやれ、清輝。」
清輝がため息混じりに、ドアに向かおうとしたとき小姓が言った。
「湖上さまをお呼びなのです・・・」
「ぼくは、これから授業の下調べをするんだ。」
「大体、用があるなら人を介さず、自分で来るべきだろう。」
一目でわかるほど、がっくりと落胆して、使いの役に立たなかった奏の小姓は肩を落とした・・・
「・・・失礼いたしました。」
「ふ~ん・・・」
「可哀想にねぇ。
これからあの子が、如月の鞭を浴びるのか。」
「鞭・・・」
はっとして、颯は小姓を追った。
「わかった。同道する。」
しおれまくっていた露草に、その一言が水をかけたようだ。
「奏さま。来てくださいましたよ。」
「奏さま?」
どうやら、奥の部屋で着替えの最中だったらしい。
昨夜打たれて傷ついた小姓が、ふらふらと手伝いをしようとしたものの、打ち身の熱で身体がままならない風だった。
奏は部屋の中央で素肌にシャツを引っ掛けて、椅子に浅くかけ、倒れた小姓を不遜に見下ろしていた。
「白雪。急がないと時間が無い。」
「はい・・・はい・・・、今すぐ。」
白雪と呼ばれた小姓は、どうやら奏に靴下をはかせようとしているようだった。
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