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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・2 

身体の不自由な俺の母親を引き取って以来、妻はパートの仕事を止め、一切の介護を買って出た。

長男夫婦から聞かされる、毎日の愚痴にいささか参っていた俺は、まるで渡りに船とばかりに妻の好意に甘え、世話を押し付けてしまった。

年を経て住居を移したにも関わらず、少し痴呆の始まった母親は、幼い子どものように妻になついた。

お袋は言った。

「この家に来て、幸せだねぇ。みんな、優しいねぇ。」

目尻に浮かぶ涙を見たとき、引き取ってよかったと俺も、妻の美千代も心から思った。

息子の愁都もおばあちゃんを大好きだといっていた。

その日の仕事の帰り、俺は同僚に勧められるまま、赤提灯で冷酒をあおっていた。

一杯引っ掛けて、帰りは車で迎えに来てくれと、電話をするつもりだった。

いつもどおりに・・・








だが・・・

その日から俺の「いつも」は、永遠に無くなった。



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2 Comments

此花咲くや  

Re: はじめまして

あみさま。

まあ・・・
なんと言う、ありがたいコメントでしょう。
あまりに嬉しくて、泣きそうです。
気に入って下さってありがとうございます。
魔法のiらんどの方では、どうしても公序良俗に厳しいようなので、性的場面などは控えめに書いてあります。
なので、こちらではもう少し深いところまで加筆するつもりでおります。

過酷な生き方を選ぶ人が、全て幸せになりますように。
登場人物の全てに救いがあるようにと、心がけています。
ご感想、本当にありがとうございました。

2010/07/13 (Tue) 22:38 | REPLY |   

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2010/07/13 (Tue) 21:47 | REPLY |   

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