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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・14 

腕を伸ばした、小さな温かい生き物をきゅと抱いて、俺はいつしか静かに泣いていた。
ぼろぼろと、いい年をしていつまでも涙が止まらなかった。
熱い涙が、ぱたぱたとみいくんのうなじを転がって行った 。
もう二度と手に入れることなど叶わないと思っていた、愛おしい温かい存在・・・

懐の中の小さな顔が、不思議そうに俺を見上げた。

「みぃくんの、パパ?」

「・・・うん、そうだよ。」

「毎日、一緒にご飯食べような。」

パパになれるだろうか。

「うん。」

細い腕が背中に回る。

「みぃくんの、パパ・・・」



『パパ!』

遠くで俺の愁都が、手を振った。
お袋と美千代と一緒に、笑っていた。

愁都・・・

愁都・・・

俺の大切な、愁都。

ごめんよ。

おまえを、決して忘れたわけじゃないから。

パパはね、独りで生きられるほど、強くなかったみたいなんだ。

強がりばかり言ってみたけど、本当は一人で心にあいた風穴に耐えられない意気地なしだったんだ。

俺は、手に入れた温かい生き物が、逃げ出さないようにそっと抱いた腕に力を込めた。

二度と、もう二度と愛するものを、誰にも奪われたりしない。

「みぃ・・・」




その日からみぃくんは、俺の息子「松原 海広」になった。



これから、波乱万丈です。
拍手、ご訪問、ありがとうございます。此花

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2 Comments

此花咲耶  

Re: え~ん・・・・・・・

小春さま

「凍える月」色々、悩んだ末に書くことを決めた作品です。

2010/12/30 (Thu) 00:59 | REPLY |   

小春  

え~ん・・・・・・・

此花さ~ん、

小春思いっきり泣いています。

2010/12/29 (Wed) 21:30 | EDIT | REPLY |   

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