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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・12 

俺は半信半疑で話を聞いた。

「あいつの泣き顔は、ぞくぞくするほど可愛いだろう?」

「写真を撮っていると、加虐性が疼くっていうか、もっと泣かせてやりたくなるから困るんだよなぁ。」

「でも、俺は他のやつにも写真を撮るだけしかさせてないから、安心して。」

安心・・・?
小学校も上がっていないような子どもに、あんなことをさせて何を安心するんだ。
たぶん、向けた俺の視線は険しかったはずだ。
金髪は言い訳をした。

「中には、自分の子供にもっと酷いことをさせても平気って親も多いんだぜ。」

「ネットの世界にとち狂った主婦のネトゲ廃人って、知ってる?俺が知ってる話は、半端なく酷いもんさ。」

「親が小遣い銭ほしさに、自分の子どもを売るんだ。

俺のところみたいなちっぽけな会社にも、ばんばん自分のガキの裸の写真を売りに来る。

ひどいんだぜ。小金欲しさに、スカも平気でやらせようってやつもいる。」

目の前で次々変えられるみぃくんのしどけない姿に、俺は言葉をなくし、じっと見つめていた。
口紅と型で作られた身体の無数の吸痕が、まるで舞い落ちた桃の花弁のようだ。
みいくんは、カメラマンに耳元で言われるままに、乳房の無い胸を両手できゅとかき抱き、扇情的な言葉を口にする。
・・・拙く、そして甘く誘う。

「お願い・・・来て・・・パパ。」

「パパ、ぼくにキスして。」

俺に向けられた潤んだ目から溢れた涙が、一筋頬を伝った・・・

「・・・愛・・して・・・パパ・・・」

「パパ・・・」

ああ・・・

思わず体が前のめりにぐらついて、俺の鼓動が跳ねた。
俺の横をすり抜けた金髪が、そっと側に行きみぃくんを抱き寄せると、大人の深いキスをした。
唇を軽いついばむ様な口付けじゃない、逃げる舌を追いかけて絡めた舌が銀糸を引く長いディープな大人のキス。

滴が零れて、胸にしたたった。
頬をぬらし金髪の胸に化粧した顔を寄せたみぃくんが、こちらに向かって半開きの上唇を小さな舌で舐めた。
熱が昇り、傷がじんじんと痛んだ。

駄目だ、この子にこんなことをさせては駄目だ。
俺は、金髪の腕を掴んだ。

「この子を買うとしたら、いくらだ?言ってくれ。」

「おっさん。話、聞いてなかったのか、俺はみぃに売りはさせないんだよ。」

撮影の邪魔をされた怒気をはらんで、金髪が切れそうになった。
それでも、俺は食い下がった。

「違うんだ!」

「違うよ。親になりたいんだ。ちゃんと教育を受けさせて、育ててやりたいと言う話をしているんだ。」

「母親の病院代も払ってやる。今、撮影しているネガも言い値で買ってやる。」

金髪は驚いて、「まじかよ。」と、息をついた。
撮影をしていたカメラマンになにやら伝え、ビデオが止められた。

「おい、おっさん。冗談抜きの話しなのか?」

俺は、本気で言ってるんだと真剣に頷いた。

「へぇ・・・、物好きだな。まあ本気なら、このくらいは出して欲しいね。みぃの母親の病院代は別として。」

「保護者として、俺は結構面倒を見たほうだと思うぜ。」

金髪は、指を三本立てた。
いつしか、曖昧な笑みが消えていた。

「これで、どう?」





どう・・・? って
どうしましょう・・・
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