【狂おしい秋・学園の狂騒・11】
相手が電話に向かっているのを知って、そうっと隼はその場を後にした。
少しは経験上理解していた。
『世の中、そんなに甘くない。知らない人は危険がいっぱい。逃げるが勝ち。』
「あ!おい!ちょっと待てって!」
「やです~!」
追いかけてきた若い男の声を振り切って、逃げた。
掴まれたイベント用の貸衣装のマジックテープがぺりと剥がれて、男の手に眠り姫の衣装が抜け殻のように残った。
「きゃあ。」
長い髪で身体を隠して、長いフリルの付いた下穿き姿のしどけないお姫さまは、王子を求めて彷徨していた。
「何だ、これ。シンデレラなら、硝子の靴じゃね。」
友人に電話を貰って、飛んできた周二は、受け取った見覚えのあるドレスに憮然としている。
隼が居なくなる前、着ていたものだった。
「あいつ、まさか真っ裸(まっぱ)ってことはないだろうな・・・。」
銀のペンダントを共に作った友人が、ペンダントのデザインを覚えていて電話をくれたものの、そこで捕まえていてくれという願いは叶わなかった。
小動物系は、意外に逃げ足が早かったりするのだ。
周二は持っている野生の感120パーセントで、近くで震える隼の気配を感じ取った。
店の裏口のビールケースの間に、まるで野良の犬猫が暖を取るように小さく丸くなって隼がいた。
「周二くん、周二くん・・・」と呪文のように繰り返しながら怯えていた。
「隼。」
頭を抱えて隠れているつもりかもしれないが、白いフリルの下穿きに包み込まれた、丸い尻が丸見えだった。
桃だな・・・と、隼の内心の不安を他所にふと思った。
やばい、可愛い。
「あ、ここ。」
ふと気が付くと、そこの路地裏は周二と隼の始まりの場所だった。
あの夏の日から、隼と周二の「狂った季節」が始まったのだ。
周二にとってはうんと子供の頃の出会いで始まった、「狂おしい季節」だった。
「迷子の犬じゃないんだから、ほら、隅っこでぷるぷるしてないで、こっち向きなって。」
「う~・・・すぅじぐ・・・ん~・・・。。。(´ノω・`)。。。」←どうやら、泣いてたらしい。
迷子の犬じゃなくて、こりゃ雨の日に捨てられた犬だな~と思いながら、胸にかき付いて次々転がり落ちる涙をそっと吸った。
「何で、ここにいるのか・・・わ、かんないのっ・・・ぼくね。ラブシートで休憩してただけなんだよ。なのに、野生のぞうさんは来るし・・・見えないし。こわかった、周二くんっ。」
秋の風が肌寒くて、隼は小さくくしゃみをした。
金色の髪が、緩く波を打って小さな顔を直、小さく見せた。
「誰かに、ドレス引っ張られちゃったから、着ていた物もなくなったの。」
背後から包み込んで、清らかなお姫さまが胸で交差する腕をそっと下ろした。
「そうしてると、今度は人魚姫みたいだな。そんな風に隠すなよ、隼。」
「つまみ食いは、いけません・・・よ。」
「馬鹿。本気で食うんだよ。」
やっと安心できる場所に戻ってきた少年人魚姫の、豊かな金色の髪が丸い肩に滑り落ちた。
そんなにたくさんの読者様がいらっしゃるわけではないのですけれど、キリ番が近くなったら教えてねっておっしゃってくださったのに・・・・・(´・ω・`)←今頃、気が付いたらしい・・・おそっ!
何か、いつもやらかしててfc2のせいだ~って、言ってるけど、本当はいつも自分のせいです。認めます・・・此花
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
(pioさま鼻血ぷぷっの美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。きゅんきゅんの綺麗お子さまです~。あ~、二人の仲が進まない。
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