夢見るアンドロイドAU 4
音羽が眺めたあっくんの動画の中に、ショーの最後のメインドレスを着たあっくんに駆けより抱擁し、舐めまわすように何度も熱いキスをする目障りな男がいた。
笑顔でいなしてはいたが、さすがにちょっとむかついて、これは誰なんだと追求したら、専属のデザイナーだよと事も無げにあっくんは告げた。嫉妬してくれたの……?と音羽の胸にすりすりと鼻を寄せてくる。
だが音羽が思うに、あっくんとキスをした17人の中に、間違いなくこいつは居て、ぱんつを脱いで見せた8人の中にも居たに違いない。その時あっくんは、どんなぱんつを……じゃなく。
がしがしと髪をかきむしる音羽の顔色が変わったのを確かめると、アンドレ……ルシガはしてやったりと口角を上げて、ふふん…と、意地悪く煽った。
「ずっと自分の後をくっついて歩いていると思っていたひよこが、いつの間にか掻っ攫われていなくなってたなんて、泣くに泣けないよな。うまそうな子豚は狼に狙われると、相場は決まってるんだ。気を付けろよ。」
「ルシガ!……あっくんは、子豚じゃないぞ。」
「俺も……二本足で歩く子豚に、出会ったことはないよ。」
「秋月先生、大事な厚志が、どこかの飢えた狼のメインディッシュにならないように気を付けろよ。」
「ちょっと待て!おい、マルセル・ガシアンの事を聞かせろ!」
「次の患者が待っているんだろう?さっきから看護師が睨んでいる。又な~。」
「ルシガーーーーッ!くそう……。」
……ルシガの去ったドアの向こうには次の患者が待っていた。重い病を抱え音羽の診察を受けるためやってきた多くの患者で待合室は溢れかえっていた。
噂を聞き藁をも掴むような必死の思いでやってきた患者達。
診察室から出て、ルシガは腹がよじれそうになるのを堪えていた。
ルシガに一つだけわかっているのは、厚志の思い人の笑いのセンスが壊滅的に酷いという事だけだ。
タクシーの中で、ルシガは心行くまで笑い転げた。
*****
さて。
噂のマルセル・ガシアンは、両手に抱えきれないほどの薔薇を抱えてあっくんを訪ねてきていた。
「退院おめでとう、わたしのヴィーナス……ATUSHI。」
「マルセル、素敵。こんなにたくさんの薔薇をくださるの?……ありがとう……。綺麗ね、この色。ペパーミントグリーン……ぼくがこの色を、すごく好きだって知っていたの?」
「わたしのヴィーナスの勝負パンツの色だからね。メインドレスを着る時は、いつも下着はこの色だ。わたしは、わたしのヴィーナスの事なら、何でも知っているつもりだよ。」
「うふっ……。」
はにかんだあっくんが抱きしめた花束は、真っ白ではない。
薄い緑が花の下部を染めている。花弁の細かなフリルがほのかに紅を刷いたようなグラデーションになって、小さな薔薇の花の上部に差し色が入った新種だった。
「この花束は、もしかすると新しい花?ショーで薔薇はたくさん見るけど、この花は初めて見た。匂い薔薇だね、いい香り……。」
「よくわかったな。この花の名前はSweet honeyATUSHIというんだ。5年かけてやっと成功したんだよ。まだ市場には出回っていない、君のイメージの花だ。わたしのヴィーナスの指を痛くしないように棘もなくさせた。」
「ぼくの為に……?」
「他に誰がいるんだ。」
「マルセル……。」
あっくんはさすがに、ちょっと恥ずかしい名前……と思ったが口にはしなかった。長い時間をかけて自分の為に新しい薔薇を咲かせたマルセルの首に手を掛けて、感謝のキスを送った。
( *`ω´) 音羽:「く、くそ~……キスするな~~~!!」
ψ(=ФωФ)ψマルセル:「ふふん。俺が狙っているのは、こんなキスだけじゃないぞ。」
ヾ(。`Д´。)ノ音羽:「あっくんから、は・な・れ・ろ~~!!」
(*´・ω・)あっくん:「ねぇ。どうして、音羽はあんなに怒ってるの……?」
♪~(・ε・。)ルシガ:「さあ、どうしてだろうねぇ。」
(ノ_・。) あっくん:「音羽~……。」
拍手もポチもありがとうございます。
感想、コメントもお待ちしております。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。 此花咲耶
笑顔でいなしてはいたが、さすがにちょっとむかついて、これは誰なんだと追求したら、専属のデザイナーだよと事も無げにあっくんは告げた。嫉妬してくれたの……?と音羽の胸にすりすりと鼻を寄せてくる。
だが音羽が思うに、あっくんとキスをした17人の中に、間違いなくこいつは居て、ぱんつを脱いで見せた8人の中にも居たに違いない。その時あっくんは、どんなぱんつを……じゃなく。
がしがしと髪をかきむしる音羽の顔色が変わったのを確かめると、アンドレ……ルシガはしてやったりと口角を上げて、ふふん…と、意地悪く煽った。
「ずっと自分の後をくっついて歩いていると思っていたひよこが、いつの間にか掻っ攫われていなくなってたなんて、泣くに泣けないよな。うまそうな子豚は狼に狙われると、相場は決まってるんだ。気を付けろよ。」
「ルシガ!……あっくんは、子豚じゃないぞ。」
「俺も……二本足で歩く子豚に、出会ったことはないよ。」
「秋月先生、大事な厚志が、どこかの飢えた狼のメインディッシュにならないように気を付けろよ。」
「ちょっと待て!おい、マルセル・ガシアンの事を聞かせろ!」
「次の患者が待っているんだろう?さっきから看護師が睨んでいる。又な~。」
「ルシガーーーーッ!くそう……。」
……ルシガの去ったドアの向こうには次の患者が待っていた。重い病を抱え音羽の診察を受けるためやってきた多くの患者で待合室は溢れかえっていた。
噂を聞き藁をも掴むような必死の思いでやってきた患者達。
診察室から出て、ルシガは腹がよじれそうになるのを堪えていた。
ルシガに一つだけわかっているのは、厚志の思い人の笑いのセンスが壊滅的に酷いという事だけだ。
タクシーの中で、ルシガは心行くまで笑い転げた。
*****
さて。
噂のマルセル・ガシアンは、両手に抱えきれないほどの薔薇を抱えてあっくんを訪ねてきていた。
「退院おめでとう、わたしのヴィーナス……ATUSHI。」
「マルセル、素敵。こんなにたくさんの薔薇をくださるの?……ありがとう……。綺麗ね、この色。ペパーミントグリーン……ぼくがこの色を、すごく好きだって知っていたの?」
「わたしのヴィーナスの勝負パンツの色だからね。メインドレスを着る時は、いつも下着はこの色だ。わたしは、わたしのヴィーナスの事なら、何でも知っているつもりだよ。」
「うふっ……。」
はにかんだあっくんが抱きしめた花束は、真っ白ではない。
薄い緑が花の下部を染めている。花弁の細かなフリルがほのかに紅を刷いたようなグラデーションになって、小さな薔薇の花の上部に差し色が入った新種だった。
「この花束は、もしかすると新しい花?ショーで薔薇はたくさん見るけど、この花は初めて見た。匂い薔薇だね、いい香り……。」
「よくわかったな。この花の名前はSweet honeyATUSHIというんだ。5年かけてやっと成功したんだよ。まだ市場には出回っていない、君のイメージの花だ。わたしのヴィーナスの指を痛くしないように棘もなくさせた。」
「ぼくの為に……?」
「他に誰がいるんだ。」
「マルセル……。」
あっくんはさすがに、ちょっと恥ずかしい名前……と思ったが口にはしなかった。長い時間をかけて自分の為に新しい薔薇を咲かせたマルセルの首に手を掛けて、感謝のキスを送った。
( *`ω´) 音羽:「く、くそ~……キスするな~~~!!」
ψ(=ФωФ)ψマルセル:「ふふん。俺が狙っているのは、こんなキスだけじゃないぞ。」
ヾ(。`Д´。)ノ音羽:「あっくんから、は・な・れ・ろ~~!!」
(*´・ω・)あっくん:「ねぇ。どうして、音羽はあんなに怒ってるの……?」
♪~(・ε・。)ルシガ:「さあ、どうしてだろうねぇ。」
(ノ_・。) あっくん:「音羽~……。」
拍手もポチもありがとうございます。
感想、コメントもお待ちしております。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。 此花咲耶
- 関連記事
-
- 番外編 夢見るアンドロイドAUの日常 と「あとがき」 (2011/10/25)
- 夢見るアンドロイドAU 14 【最終話】 (2011/10/24)
- 夢見るアンドロイドAU 13 (2011/10/23)
- 夢見るアンドロイドAU 12 (2011/10/22)
- 夢見るアンドロイドAU 11 (2011/10/21)
- 夢見るアンドロイドAU 10 (2011/10/20)
- 夢見るアンドロイドAU 9 (2011/10/19)
- 夢見るアンドロイドAU 8 (2011/10/18)
- 夢見るアンドロイドAU 7 (2011/10/17)
- 夢見るアンドロイドAU 6 (2011/10/16)
- 夢見るアンドロイドAU 5 (2011/10/15)
- 夢見るアンドロイドAU 4 (2011/10/14)
- 夢見るアンドロイドAU 3 (2011/10/13)
- 夢見るアンドロイドAU 2 (2011/10/12)
- 夢見るアンドロイドAU 1 (2011/10/11)