夢見るアンドロイドＡＵ ７
そこにいる八角眼鏡のいけ好かないデザイナーは、音羽の目の前であっくんの腰に手を回しでかい蝉のように背後に張り付いてしがみついていた。あっくんの何もない胸に、長い指が乗っていた。音羽のどこかで理性の糸が、ぷつぷつと切れてゆく。
「音羽……。あの、インラン……って？どういう……意味？あっくんのことなの…？」
あっくんは残念ながら理系脳しか持っていない。日本語は堪能だが、そういった単語までカバーしていなかった。デザイナーがささやいた。
「誰彼かまわず、性行為にふける奴の事を淫乱というんだ。わたしのヴィーナス。彼は君のことを、色欲をほしいままにしてみだらな行いを繰り返す色魔（インキュバス)だと言っている。」
そこまで言ったわけではないが、おおむね単語の意味は合っている。
「お……とわ……。あっくんは、ひよこの時からずっと音羽だけが好きだったって言ったのに、インラン……って、そういういけない意味なの？音羽は、あっくんが許せなかったの……？」
「あっくん。日本では、二世を誓った相手以外にあちこち触らせるのは、不貞と言って責められる。それは、許されない行為なんだ。恋人以外にむやみに身体を触らせるのはいけないことなんだ。」
「つまり……、こいつはわたしのヴィーナス、ＡＴＵＳＨＩの事を、自堕落でふしだらで、不品行で放埓で、どうしようもない色情狂だと言ってるんだ。」
「う……っ…。」
「違う、そんなことは言っていない。あっくん、おれは……」
「あぁ～～～んっ……」
あっくんは、その場に崩れ落ち声を上げて泣いた。音羽と出会って以来、こんなひどいことを言われるなんて思ってもみなかった。実際に口にしたのは、マルセル・ガシアンで音羽ではないがあっくんには音羽しか見えていなかった。
「違うんだ、あっくん。ちゃんと説明するから、聞いて。」
「うっ……うえっ……んっ……。」
ルルル…………。
その時、歴史が……ではなく。音羽の病院からの呼び出し音が部屋に響き、重い空気を動かした。
「……はい。秋月。」
「ドクター？7Ｄ病棟のエマニエルさんがＩＣＵで急変です！今すぐにお戻りください。デニス先生とデユーン先生は共に執刀中、ガーディアン博士は学会出張中でイギリスです。」
「様子は？……黄疸は出てる？まず、シド先生に連絡を付けてくれ。」
てきぱきと投薬の指示を送りながら、音羽はあっくんを抱き寄せた。
「俺は、あっくんだけが好きだよ。もっとたくさん話もしたい。だけど、今は患者が待ってるから行かなきゃならない。」
「あっくんは……淫乱で不貞……なの？」
「その話は、この次にしよう。今は、優先事項が病院にある。ただね、あっくんは、俺と一緒に居たいなら、今後人前でぱんつを脱ぐのは禁止。いいね。」
「音羽……。あっくんは…モデルだから…。」
「わたしのヴィーナス、彼は君を信用していないんだ。可哀そうに……。」
そんなことは言っていないと、音羽はきつい目を向けた。
「時間が出来たら連絡するから。あっくん……ごめんね。」
「音羽……行かないで。愛してるって言って。」
「医者は患者に呼ばれたら仕方ないんだよ。そういう責任を負っているんだ。あっくん、なるべく早くきちんと話をしよう、いいね。」
泣きぬれたあっくんの頬に触れ、あふれ落ちそうな涙を吸ってやると、音羽は厚一郎とルシガの家を後にした。
「お、音羽に捨てられる……。あっくんが、インランでフテイだから……？あっくんは、音羽だけが好きなのに…あぁ～～～んっ……音羽が行ってしまう～、あ～ん……っ。音羽ぁ……え～ん。お兄ちゃん～、あっくんは音羽に捨てられる……愛しているっておまじないを言ってくれなかったよぉ……え～ん……。」
えぐえぐと嗚咽の止まらない弟を、兄は優しく抱き寄せた。
「よしよし。厚志は何も悪くないのにねぇ……。音羽が大好きなだけなのにね。兄ちゃんが余計な事をしたルシガを怒っておくからな。マルセル・ガシアンにも、もう次の、契約は更新しないって言おうな。」
「えーっ！？ちょ、ちょっと待ってくれ！」
「えっ……えんっ……音羽ぁ……。」
哀しみに沈むあっくんに誰もかける言葉を持っていなかった。そして厚一郎の言葉に、色を失くし顔を見かわしたルシガとマルセル・ガシアンだった。
厚一郎はルシガを一瞥すると「やりすぎだ、馬鹿。もう、今日は顔も見たくない。」と吐き捨て、あっくんを伴って隣りの部屋に消えた。二人は奇しくも同じ言葉を同時に吐いた。
「お～、まい、がっ……。」
｡･ﾟﾟ '゜(*/□＼*) '゜ﾟﾟ･｡←やっぱり～
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あっくんは残念ながら理系脳しか持っていない。日本語は堪能だが、そういった単語までカバーしていなかった。デザイナーがささやいた。
「誰彼かまわず、性行為にふける奴の事を淫乱というんだ。わたしのヴィーナス。彼は君のことを、色欲をほしいままにしてみだらな行いを繰り返す色魔（インキュバス)だと言っている。」
そこまで言ったわけではないが、おおむね単語の意味は合っている。
「お……とわ……。あっくんは、ひよこの時からずっと音羽だけが好きだったって言ったのに、インラン……って、そういういけない意味なの？音羽は、あっくんが許せなかったの……？」
「あっくん。日本では、二世を誓った相手以外にあちこち触らせるのは、不貞と言って責められる。それは、許されない行為なんだ。恋人以外にむやみに身体を触らせるのはいけないことなんだ。」
「つまり……、こいつはわたしのヴィーナス、ＡＴＵＳＨＩの事を、自堕落でふしだらで、不品行で放埓で、どうしようもない色情狂だと言ってるんだ。」
「う……っ…。」
「違う、そんなことは言っていない。あっくん、おれは……」
「あぁ～～～んっ……」
あっくんは、その場に崩れ落ち声を上げて泣いた。音羽と出会って以来、こんなひどいことを言われるなんて思ってもみなかった。実際に口にしたのは、マルセル・ガシアンで音羽ではないがあっくんには音羽しか見えていなかった。
「違うんだ、あっくん。ちゃんと説明するから、聞いて。」
「うっ……うえっ……んっ……。」
ルルル…………。
その時、歴史が……ではなく。音羽の病院からの呼び出し音が部屋に響き、重い空気を動かした。
「……はい。秋月。」
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「様子は？……黄疸は出てる？まず、シド先生に連絡を付けてくれ。」
てきぱきと投薬の指示を送りながら、音羽はあっくんを抱き寄せた。
「俺は、あっくんだけが好きだよ。もっとたくさん話もしたい。だけど、今は患者が待ってるから行かなきゃならない。」
「あっくんは……淫乱で不貞……なの？」
「その話は、この次にしよう。今は、優先事項が病院にある。ただね、あっくんは、俺と一緒に居たいなら、今後人前でぱんつを脱ぐのは禁止。いいね。」
「音羽……。あっくんは…モデルだから…。」
「わたしのヴィーナス、彼は君を信用していないんだ。可哀そうに……。」
そんなことは言っていないと、音羽はきつい目を向けた。
「時間が出来たら連絡するから。あっくん……ごめんね。」
「音羽……行かないで。愛してるって言って。」
「医者は患者に呼ばれたら仕方ないんだよ。そういう責任を負っているんだ。あっくん、なるべく早くきちんと話をしよう、いいね。」
泣きぬれたあっくんの頬に触れ、あふれ落ちそうな涙を吸ってやると、音羽は厚一郎とルシガの家を後にした。
「お、音羽に捨てられる……。あっくんが、インランでフテイだから……？あっくんは、音羽だけが好きなのに…あぁ～～～んっ……音羽が行ってしまう～、あ～ん……っ。音羽ぁ……え～ん。お兄ちゃん～、あっくんは音羽に捨てられる……愛しているっておまじないを言ってくれなかったよぉ……え～ん……。」
えぐえぐと嗚咽の止まらない弟を、兄は優しく抱き寄せた。
「よしよし。厚志は何も悪くないのにねぇ……。音羽が大好きなだけなのにね。兄ちゃんが余計な事をしたルシガを怒っておくからな。マルセル・ガシアンにも、もう次の、契約は更新しないって言おうな。」
「えーっ！？ちょ、ちょっと待ってくれ！」
「えっ……えんっ……音羽ぁ……。」
哀しみに沈むあっくんに誰もかける言葉を持っていなかった。そして厚一郎の言葉に、色を失くし顔を見かわしたルシガとマルセル・ガシアンだった。
厚一郎はルシガを一瞥すると「やりすぎだ、馬鹿。もう、今日は顔も見たくない。」と吐き捨て、あっくんを伴って隣りの部屋に消えた。二人は奇しくも同じ言葉を同時に吐いた。
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