小説・蜻蛉の記(貴久の心)・2
ほんの数刻前、母上が冷たい骸になって城から帰ってきたのは確かだった。
初めて聞かされた、心の臓の発作。
わたしは叫んだ。
健やかな母上が、心の臓の病などお持ちのはずがない。
突然、乳母のお福に死因を告げられても、そんなことは到底信じられなかった。
真実を話せと詰め寄っても、お福は何も語らず視線を合わせようともしない。
だから、わたしは母上が最後に対面した義母上に会いに行くつもりで、夕暮れの迫る中、馬を駆った。
大輔が後から懸命に付いてきたはずだ。
そうだ、疾風。
疾風はどうした?
わたしの疾風は、無事だろうか。
「うっ・・・!!」
起き上がろうとしたが、力が入らない。
この体中の針で刺すような痛みは、どういうことなのか・・・
長い時間をかけて、やっと腑に落ち合点した。
わたしは、疾風から落ちたのだ。
夜目の利く疾風に鞭をくれて、薄闇を走らせた自分の愚かさに呆れた。
疾風に済まぬことをしてしまった。
自分がこれほどの落馬をしたなら、おそらく疾風はもうこの世に生きてはいまい。
「すまぬ、疾風」
思わず心の中で、わびた。
初めて聞かされた、心の臓の発作。
わたしは叫んだ。
健やかな母上が、心の臓の病などお持ちのはずがない。
突然、乳母のお福に死因を告げられても、そんなことは到底信じられなかった。
真実を話せと詰め寄っても、お福は何も語らず視線を合わせようともしない。
だから、わたしは母上が最後に対面した義母上に会いに行くつもりで、夕暮れの迫る中、馬を駆った。
大輔が後から懸命に付いてきたはずだ。
そうだ、疾風。
疾風はどうした?
わたしの疾風は、無事だろうか。
「うっ・・・!!」
起き上がろうとしたが、力が入らない。
この体中の針で刺すような痛みは、どういうことなのか・・・
長い時間をかけて、やっと腑に落ち合点した。
わたしは、疾風から落ちたのだ。
夜目の利く疾風に鞭をくれて、薄闇を走らせた自分の愚かさに呆れた。
疾風に済まぬことをしてしまった。
自分がこれほどの落馬をしたなら、おそらく疾風はもうこの世に生きてはいまい。
「すまぬ、疾風」
思わず心の中で、わびた。
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