小説・蜻蛉の記(貴久の心)・4
腰から下の感覚が、まるでないことに狼狽していた。
誰かに縋りたかった。
母上・・・
母上はいずこに、おわす・・・?
そうだ、母上はもうこの世にはいらっしゃらないのだ。
自らの浅はかな行動が、我が身に降りかかっただけのことだ。
運命をにらみつける自らの双眸に、涙が盛り上がった。
長い間、はらはらと静かに涙は溢れ、蒲団に吸われていった。
拳でぬぐうこともできず、運命を受け止めきれず幼子のように涙は止まらない・・・
この先の事など考えようもなかった。
もし、傷がいえても身体の感覚が戻らなければ、この身はお家の荷物となるだろう。
母上がいつも語っていた、昔語りを思い出した・・・
「貴久。そなたの身の上は三里藩のためにあるのです。」
「いつかきっと、兄上のお役に立つのですよ。」
母上。
母上・・・。
貴久は、母上のお心に叛きました。
面目次第もございません。
誰かに縋りたかった。
母上・・・
母上はいずこに、おわす・・・?
そうだ、母上はもうこの世にはいらっしゃらないのだ。
自らの浅はかな行動が、我が身に降りかかっただけのことだ。
運命をにらみつける自らの双眸に、涙が盛り上がった。
長い間、はらはらと静かに涙は溢れ、蒲団に吸われていった。
拳でぬぐうこともできず、運命を受け止めきれず幼子のように涙は止まらない・・・
この先の事など考えようもなかった。
もし、傷がいえても身体の感覚が戻らなければ、この身はお家の荷物となるだろう。
母上がいつも語っていた、昔語りを思い出した・・・
「貴久。そなたの身の上は三里藩のためにあるのです。」
「いつかきっと、兄上のお役に立つのですよ。」
母上。
母上・・・。
貴久は、母上のお心に叛きました。
面目次第もございません。
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