鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 3
息を吐く。
息を吸う。
初めて本気で愛した青年とのセクスはどこか歪な気がして、陽太は最初戸惑った。
「こうすれば、一番陽太を感じるんだ。だから、ね……。ぼくは、きっとローマの皇帝だったんだよ。」
鏡弥は陽太の分身が自分の中に埋められると、首を絞めてくれとねだった。
牢の中に薔薇の花を降らせ窒息させた、ローマ皇帝の名を鏡弥は口にした。そんな所さえ、陽太の好きな所だ。
「ぼくはヘリオガバルスになって、陽太を愛するんだ。いつか、誰かに惨殺されるまで……。」
女性器を欲しがった狂気の美しい皇帝のように、鏡弥は高く足を上げて陽太を受け入れた。経験の浅い性急な陽太の不器用な愛撫に耐え、苦悶の表情を浮かべながら、やがてその苦しみに嬌声が混じる。
「好き……、好き。陽太だけだ、陽太だけが、ぼくを本気で愛してくれる。」
互いに欠けた物を埋めあうような危ういセクスに、陽太は夢中になった。講義の合間、倒れ込むようにラブホへ駆け込んだ。もっと時間の無い時は、校舎から一番遠い便所に駆け込み忙しなくぐらつく便器の上で愛し合った。ぬらぬらと陽太の唾液で、鏡弥の胸が光る。なめくじが這った後のようだと、鏡弥は笑う。
「きっと、俺たちは一つの身体が二つに分かれて生まれたんだ。だから、こんなにも引き合うんだ。」
「陽太……ああ、陽太。ずっとこうしていたい。」
*****
ある日、講義の合間に鏡弥から着信があった。
「陽太?あのね……。ぼく、今……西山病院にいるんだけど。」
「病院!?どうしたんだ?」
「うん。ぼうっとしてたら、車にはねられてしまったんだ。足と、手を骨折したから動けなくて……、お医者さんがしばらく入院してろって。」
「そうか、すぐに行くから。」
「うん……。待ってる。」
「鏡弥、とりあえず電話ができる位には大丈夫なんだな?」
「うん。……でも、病院代……どうしたらいい?お金、ない…………どうしよう。」
「陽太ぁ……え~ん……。」と、陽太の名を呼んで電話口で泣きはじめた鏡弥に、直ぐ行くから待ってろと、もう一度同じ言葉を告げ、構内を後にした。
途中で同じゼミを受けている同期生に代返を頼み、必死で西山病院へと向かう。必要なものは、病院の売店ででも買えるだろう。
鏡弥の元へ急ぐ陽太は、紛れもなく悲劇の王女アンドロメダの元へ救出に向かうペルセウスの気分だった。
鏡弥が自分を頼ってきたことが、嬉しく誇らしかった。
*******
ごった返す病院の玄関ロビーに佇む鏡弥は、包帯だらけの姿で車椅子に乗ってぼんやりと所在なさ気にしていた。
「鏡弥!大丈夫か?可哀想に……。」
陽太の顔を見るなり生気を取り戻し、どっとこぼれた涙は、あっさりと勇敢なペルセウスを有頂天にする。
胸が締め付けられるような思いで、陽太は駆けよると人気(ひとけ)を避けて、階段わきで話を聞いた。車椅子の鏡弥は青ざめた頬で、俺の手をぎゅっと握りしめると胸に抱いた。
「陽太。来て……くれたんだ。」
「当たり前だろう。大丈夫なのか?痛くないか?」
「うん……うん。」
警察には連絡したのかと、矢継ぎ早に質問を浴びせかける陽太に、鏡弥は辛そうに話を始めた。
「ぼくが悪かったのだけど、相手の車ね……黒塗りだったの。だから警察は呼べなかったの。特注の外車だから修理にお金がかかるって……あっ……!」
小さく悲鳴を上げた鏡弥が、青ざめて視線を送る向こうに、一目で堅気ではない数人の姿が見えた。
良い感じだった二人に、思わぬ事件が起こりました。(`・ω・´)
ぴ~んち!(´;ω;`) 「ど、どうしよう~……」
息を吸う。
初めて本気で愛した青年とのセクスはどこか歪な気がして、陽太は最初戸惑った。
「こうすれば、一番陽太を感じるんだ。だから、ね……。ぼくは、きっとローマの皇帝だったんだよ。」
鏡弥は陽太の分身が自分の中に埋められると、首を絞めてくれとねだった。
牢の中に薔薇の花を降らせ窒息させた、ローマ皇帝の名を鏡弥は口にした。そんな所さえ、陽太の好きな所だ。
「ぼくはヘリオガバルスになって、陽太を愛するんだ。いつか、誰かに惨殺されるまで……。」
女性器を欲しがった狂気の美しい皇帝のように、鏡弥は高く足を上げて陽太を受け入れた。経験の浅い性急な陽太の不器用な愛撫に耐え、苦悶の表情を浮かべながら、やがてその苦しみに嬌声が混じる。
「好き……、好き。陽太だけだ、陽太だけが、ぼくを本気で愛してくれる。」
互いに欠けた物を埋めあうような危ういセクスに、陽太は夢中になった。講義の合間、倒れ込むようにラブホへ駆け込んだ。もっと時間の無い時は、校舎から一番遠い便所に駆け込み忙しなくぐらつく便器の上で愛し合った。ぬらぬらと陽太の唾液で、鏡弥の胸が光る。なめくじが這った後のようだと、鏡弥は笑う。
「きっと、俺たちは一つの身体が二つに分かれて生まれたんだ。だから、こんなにも引き合うんだ。」
「陽太……ああ、陽太。ずっとこうしていたい。」
*****
ある日、講義の合間に鏡弥から着信があった。
「陽太?あのね……。ぼく、今……西山病院にいるんだけど。」
「病院!?どうしたんだ?」
「うん。ぼうっとしてたら、車にはねられてしまったんだ。足と、手を骨折したから動けなくて……、お医者さんがしばらく入院してろって。」
「そうか、すぐに行くから。」
「うん……。待ってる。」
「鏡弥、とりあえず電話ができる位には大丈夫なんだな?」
「うん。……でも、病院代……どうしたらいい?お金、ない…………どうしよう。」
「陽太ぁ……え~ん……。」と、陽太の名を呼んで電話口で泣きはじめた鏡弥に、直ぐ行くから待ってろと、もう一度同じ言葉を告げ、構内を後にした。
途中で同じゼミを受けている同期生に代返を頼み、必死で西山病院へと向かう。必要なものは、病院の売店ででも買えるだろう。
鏡弥の元へ急ぐ陽太は、紛れもなく悲劇の王女アンドロメダの元へ救出に向かうペルセウスの気分だった。
鏡弥が自分を頼ってきたことが、嬉しく誇らしかった。
*******
ごった返す病院の玄関ロビーに佇む鏡弥は、包帯だらけの姿で車椅子に乗ってぼんやりと所在なさ気にしていた。
「鏡弥!大丈夫か?可哀想に……。」
陽太の顔を見るなり生気を取り戻し、どっとこぼれた涙は、あっさりと勇敢なペルセウスを有頂天にする。
胸が締め付けられるような思いで、陽太は駆けよると人気(ひとけ)を避けて、階段わきで話を聞いた。車椅子の鏡弥は青ざめた頬で、俺の手をぎゅっと握りしめると胸に抱いた。
「陽太。来て……くれたんだ。」
「当たり前だろう。大丈夫なのか?痛くないか?」
「うん……うん。」
警察には連絡したのかと、矢継ぎ早に質問を浴びせかける陽太に、鏡弥は辛そうに話を始めた。
「ぼくが悪かったのだけど、相手の車ね……黒塗りだったの。だから警察は呼べなかったの。特注の外車だから修理にお金がかかるって……あっ……!」
小さく悲鳴を上げた鏡弥が、青ざめて視線を送る向こうに、一目で堅気ではない数人の姿が見えた。
良い感じだった二人に、思わぬ事件が起こりました。(`・ω・´)
ぴ~んち!(´;ω;`) 「ど、どうしよう~……」
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