鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 11 【最終話】
大学を卒業後、陽太は表向き総合病院の嘱託外科医の仕事に就いた。その気になれば借金はすぐに返済できたが、あえてそうしなかった。
組とも縁を切らず、けが人が出た時は直ぐに駆け付ける便利な存在になった。
その代り、白い肌の少年を報酬として貰った。
「陽太さ~ん。」
「おお。今日は、特別可愛いな、充弥。」
「ありがと。お誕生日だから、がんばっちゃった。」
陽太の腕に縋りつくのは、めかし込んだ充弥だ。
小さな顔に薄く白粉をはたき、紅を引いた姿に誰も男だなどとは思わない。明るい長い髪の色は、華奢な充弥に良く似合う。
車に乗り込む前に、腕を腰に回して甘い褒美のように、恋人同士は優しく口を合わせた。
「さあ。今日は何をしようか。」
「優しくしてね。陽太……。綺麗にしてきたから、今日はずっと女の子のようにデートしてね。」
「驚いたよ、充弥。女の子にしか見えない。明るい色の口紅も似合ってる。どこの誰よりも綺麗だ。うんと、大切にする。ずっとだ。」
「うれしい。」
「みんなに見せびらかして歩きたいよ。ヒールは疲れない?」
「大丈夫。陽太さんの腕につかまって歩くもの。」
見目良い恋人たちは腕を絡め、陽太は充弥を連れて、ロマンチックな映画を見て、予約を入れておいたおしゃれなレストランで食事をした。
充弥を連れていると、行き交う人がその美貌に驚いて、必ず振り返るのが心地よい。行きつけの雑貨屋で揃いの指輪を買い、夏物の薄い洋服を買うのに付き合った。腕に縋って歩く華奢な少年を、陽太は心から愛していた。
時計の針が夜の10時を過ぎると、充弥の時間は終わり鏡弥の時間が始まる。
小さくアラームが鳴って、交代の時刻を告げた。
「さあ……。」
細い腕を革製の拘束衣に差し込むと、全身で拒み哀訴に涙ぐむ充弥の口に、球形の猿轡を押し込めてゆく。まるで別人のように冷酷な陽太に、充弥は怯えた。
「いや、いや……やめて。」と泣き叫んで縄目を嫌がる充弥の耳元で、普段と違う言葉を陽太は口にする。
「痛いの好きだよなあ……、鏡弥。お兄さんたちに、いっぱい可愛がってもらおうな。」
「いや、いや……陽太さん。ぼくは、まだ鏡弥じゃない。痛いのはいやあっ!」
Ⅴ字型に跳ね上げた足の間に、選ばれた男たちが楔を打ちこんでゆくのを、二人を愛する陽太は目を逸らさず見守った。吊るされた細い肢体が、ゆらゆらとぶらさげられた枝肉のように回る。
女の子のように優しく笑う充弥。いつか小さな乳房を作ってやろうかと囁けば、陽太さんがそうしたいなら……と恥らった。
一つの身体に、余りに違う精神が共生していた。
痛いのが好きな鏡弥は、激しい加虐に、喜悦の表情を浮かべる。
二人とも陽太を愛していた。
陽太の腕の中で泣きながら、充弥の中心にある薔薇色の茎は露を抱いて屹立(きつりつ)してゆく。
開ききった紅の蜜壷の襞に、そっと触れた時、充弥は高い悲鳴を上げて気を失った。感じた証拠に、とろりと太腿に粘り気のある白い精が流れた。
鏡弥は、充弥が蹂躙された後の痛みを引き受けて、恍惚とする根っからのマゾヒストだった。身体を傷めつけられる充弥に現れた別人格は、何もできずに泣いているばかりの充弥に苛立った本心のようなものかもしれない。
手荒に抱く男たちに怒りの目を向け、充弥にあまり酷くするなと「鏡弥」は怒鳴った。
陽太には、どちらも愛おしかった。充弥と鏡弥、どちらも失いたくなかったと言うのが、本音かもしれない。年を取らない鏡弥の為に、いつかは統合させなければならないだろうが、しばらくはこのままで居たいと思っていた。
*****
陽太の身体の下で、喘いでいるのはどっちだろう。情事にはまだ早い、夕刻だった。
階下を通る小学生が、声高に塾の宿題の話をしながら行き過ぎる。
遮光カーテンに遮られた室内は夕暮れ並みの暗さで、寝台の上で搖らぐ白い足は空を掻く度、淡く発光しているように見える。
「陽太さんっ……やめて、お願い、酷くしないで。あぁーーっ!」
充弥を背後から抱いた陽太は、尚更わざと固い肉筒に育ちきった物を押し付け、細い悲鳴を上げさせた。
自分の猛った芯が熱を持つ。何かが包むように温くまといつくのは、きっと充弥の最奥が切れて、血が滲んでいるに違いない。
怯えた瞳を覗き込み、陽太は恋人の名を呼んだ。
「鏡弥……俺がわかるか……?出て来い、鏡弥。上がって来い。」
柔らかな腹に手を乗せると、充弥がはっと去り際に哀しげな視線を送り、息を詰めるのを感じる。
破瓜されたばかりの少女のように、充弥は涙を浮かべむせんでいた。
濃い色のシーツの上にしどけなくひらかれた下肢を押さえつけ、陽太は、強く吸引し辺りに赤い痣を落として行く。陽太は、嫌がる情人を押さえつけ、白い肌に花が散るように鮮やかな吸痕を所構わず付けて、ことさら手酷く人形のように扱った。
背後から縛めて抗えないようにし、深く雄芯を飲み込ませ両手で頭を揺すった。
女の潤みに埋め込まれた時のような、緩い締め付けが陽太を追い詰めてゆく。
二人とも手に入れた陽太が、紅い小柱のような突起を吸い上げて鮮やかな印に変えた。二つの身体が合わさって生まれたヘルマプロデュートスの神話を思い出す。
決して引き離さないでと叫んだニンフの願いを神々は聞き入れた。
意識を失くした人形に、これから昇ってきて宿る魂を待つ。
まどろみのヘルマプロデュートスは、柔らかにまろんだ身を晒し午睡の中にいた。
反応の無い痛ましい身体に深く口づけながら、陽太はささやいた。
「ゆっくりおやすみ……、充弥。」
「おいで、鏡弥。愛してるよ。」
鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス ―完―
一応完結しましたが、統合の話を入れた「鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 続編」を短編で書きたいと思っています。
又、新しいお話でお会いします。(`・ω・´)
組とも縁を切らず、けが人が出た時は直ぐに駆け付ける便利な存在になった。
その代り、白い肌の少年を報酬として貰った。
「陽太さ~ん。」
「おお。今日は、特別可愛いな、充弥。」
「ありがと。お誕生日だから、がんばっちゃった。」
陽太の腕に縋りつくのは、めかし込んだ充弥だ。
小さな顔に薄く白粉をはたき、紅を引いた姿に誰も男だなどとは思わない。明るい長い髪の色は、華奢な充弥に良く似合う。
車に乗り込む前に、腕を腰に回して甘い褒美のように、恋人同士は優しく口を合わせた。
「さあ。今日は何をしようか。」
「優しくしてね。陽太……。綺麗にしてきたから、今日はずっと女の子のようにデートしてね。」
「驚いたよ、充弥。女の子にしか見えない。明るい色の口紅も似合ってる。どこの誰よりも綺麗だ。うんと、大切にする。ずっとだ。」
「うれしい。」
「みんなに見せびらかして歩きたいよ。ヒールは疲れない?」
「大丈夫。陽太さんの腕につかまって歩くもの。」
見目良い恋人たちは腕を絡め、陽太は充弥を連れて、ロマンチックな映画を見て、予約を入れておいたおしゃれなレストランで食事をした。
充弥を連れていると、行き交う人がその美貌に驚いて、必ず振り返るのが心地よい。行きつけの雑貨屋で揃いの指輪を買い、夏物の薄い洋服を買うのに付き合った。腕に縋って歩く華奢な少年を、陽太は心から愛していた。
時計の針が夜の10時を過ぎると、充弥の時間は終わり鏡弥の時間が始まる。
小さくアラームが鳴って、交代の時刻を告げた。
「さあ……。」
細い腕を革製の拘束衣に差し込むと、全身で拒み哀訴に涙ぐむ充弥の口に、球形の猿轡を押し込めてゆく。まるで別人のように冷酷な陽太に、充弥は怯えた。
「いや、いや……やめて。」と泣き叫んで縄目を嫌がる充弥の耳元で、普段と違う言葉を陽太は口にする。
「痛いの好きだよなあ……、鏡弥。お兄さんたちに、いっぱい可愛がってもらおうな。」
「いや、いや……陽太さん。ぼくは、まだ鏡弥じゃない。痛いのはいやあっ!」
Ⅴ字型に跳ね上げた足の間に、選ばれた男たちが楔を打ちこんでゆくのを、二人を愛する陽太は目を逸らさず見守った。吊るされた細い肢体が、ゆらゆらとぶらさげられた枝肉のように回る。
女の子のように優しく笑う充弥。いつか小さな乳房を作ってやろうかと囁けば、陽太さんがそうしたいなら……と恥らった。
一つの身体に、余りに違う精神が共生していた。
痛いのが好きな鏡弥は、激しい加虐に、喜悦の表情を浮かべる。
二人とも陽太を愛していた。
陽太の腕の中で泣きながら、充弥の中心にある薔薇色の茎は露を抱いて屹立(きつりつ)してゆく。
開ききった紅の蜜壷の襞に、そっと触れた時、充弥は高い悲鳴を上げて気を失った。感じた証拠に、とろりと太腿に粘り気のある白い精が流れた。
鏡弥は、充弥が蹂躙された後の痛みを引き受けて、恍惚とする根っからのマゾヒストだった。身体を傷めつけられる充弥に現れた別人格は、何もできずに泣いているばかりの充弥に苛立った本心のようなものかもしれない。
手荒に抱く男たちに怒りの目を向け、充弥にあまり酷くするなと「鏡弥」は怒鳴った。
陽太には、どちらも愛おしかった。充弥と鏡弥、どちらも失いたくなかったと言うのが、本音かもしれない。年を取らない鏡弥の為に、いつかは統合させなければならないだろうが、しばらくはこのままで居たいと思っていた。
*****
陽太の身体の下で、喘いでいるのはどっちだろう。情事にはまだ早い、夕刻だった。
階下を通る小学生が、声高に塾の宿題の話をしながら行き過ぎる。
遮光カーテンに遮られた室内は夕暮れ並みの暗さで、寝台の上で搖らぐ白い足は空を掻く度、淡く発光しているように見える。
「陽太さんっ……やめて、お願い、酷くしないで。あぁーーっ!」
充弥を背後から抱いた陽太は、尚更わざと固い肉筒に育ちきった物を押し付け、細い悲鳴を上げさせた。
自分の猛った芯が熱を持つ。何かが包むように温くまといつくのは、きっと充弥の最奥が切れて、血が滲んでいるに違いない。
怯えた瞳を覗き込み、陽太は恋人の名を呼んだ。
「鏡弥……俺がわかるか……?出て来い、鏡弥。上がって来い。」
柔らかな腹に手を乗せると、充弥がはっと去り際に哀しげな視線を送り、息を詰めるのを感じる。
破瓜されたばかりの少女のように、充弥は涙を浮かべむせんでいた。
濃い色のシーツの上にしどけなくひらかれた下肢を押さえつけ、陽太は、強く吸引し辺りに赤い痣を落として行く。陽太は、嫌がる情人を押さえつけ、白い肌に花が散るように鮮やかな吸痕を所構わず付けて、ことさら手酷く人形のように扱った。
背後から縛めて抗えないようにし、深く雄芯を飲み込ませ両手で頭を揺すった。
女の潤みに埋め込まれた時のような、緩い締め付けが陽太を追い詰めてゆく。
二人とも手に入れた陽太が、紅い小柱のような突起を吸い上げて鮮やかな印に変えた。二つの身体が合わさって生まれたヘルマプロデュートスの神話を思い出す。
決して引き離さないでと叫んだニンフの願いを神々は聞き入れた。
意識を失くした人形に、これから昇ってきて宿る魂を待つ。
まどろみのヘルマプロデュートスは、柔らかにまろんだ身を晒し午睡の中にいた。
反応の無い痛ましい身体に深く口づけながら、陽太はささやいた。
「ゆっくりおやすみ……、充弥。」
「おいで、鏡弥。愛してるよ。」
鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス ―完―
一応完結しましたが、統合の話を入れた「鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 続編」を短編で書きたいと思っています。
又、新しいお話でお会いします。(`・ω・´)
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