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さだかつくんの恋人 8 

思いがけず長居をしてしまいましたと言って、柏木醍醐は腰を上げた。

「もしよろしかったら、これから一ヶ月公演しますので、ご家族様でいつでもホテルの劇場へお運びください。お席を準備しておきます。」

「ありがとうございます。是非、お伺いします。」

「これに懲りないで、お二人とも大二郎と遊んでやって下さいね。しばらくは、こまどり幼稚園に御厄介になりますから。」

「はい。」

「楽しいお時間を頂戴しました。では、これにて皆様、お暇致します。」

慇懃に、しかも芝居のように優雅に腰を曲げて、柏木醍醐は招待券を置くと、金剛家を後にした。
何の連絡もしていないのに、手を上げると角から現れた黒い大型のリムジンが、静かに玄関前に滑りこむ。今更ながらに顔を見合わせ、住む世界が違うと思う金剛家の面々だった。

*****

ベッドに入った禎克と湊は、今日幼稚園に入ってきた大二郎が既に働いていることに驚いていた。

「ねぇ、さあちゃん。あの子、お仕事してるんだね。」

「うん。」

大二郎くんのお顔、大丈夫だったかなぁ……。禎克は、心の中で今もちょっぴり心配していた。

次の日。

誰よりも早く起きた禎克は、湊より先に青いスモックを着て、幼稚園に行く支度をすませた。早く大二郎に逢いたかった。
何やら不満げに、湊はぶつくさ言っていたが仕方なくピンクのスモックに手を通すしかない。

送迎バスの川俣先生が、「あら、今日はどうしたの~?」と笑顔になる。

「禎克くん、今日は湊ちゃんより早起きしてがんばったのね。」

「うん。がんばった~。」

禎克は昨日粘土板で思い切り殴った大二郎のことが気になって仕方がなくて、早く目が覚めたのだけど、いつものように静かに定位置に座った。
禎克は大二郎に一番にごめんなさいを言って、今日はいっぱい遊ぶつもりだった。

*****

「さあちゃん。おはようっす。」

ひよこ組に入るなり、走り寄って来た大二郎の顔を見て、禎克は目を丸くした。

「あっ……!」

(大二郎くんのお顔……ひどくなってる。)

大二郎の父親は、仕事の後、眠ってしまったんだと言ったが、きっとそれは心配させないようについた方便に違いなかった。痣になった目の上はひどく腫れて目が半分の大きさになっている。これで、仕事など出来ようはずはない。
禎克は泣きそうになった。





(〃゚∇Х〃) 大二郎 「さあちゃん。おはよう~。」

(´・ω・`) さあちゃん 「どうしよう……ひどくなってる……」


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