さだかつくんの恋人 ９
「だ、大二郎くん。きのう……、お仕事があったんじゃないの？」
「ん？さあちゃんは、舞台の事知ってるの？」
「うん。大二郎くんのお父さんに、聞いたもん……。」
大二郎はにこにこと笑った。
「昨日は舞台をお休みすることになって、お師匠さんに思い切り怒られちゃった。役者が自分の不手際で勝手に舞台に穴をあける位なら、死んでしまえだって。仕事にはすごく厳しいんだ、お師匠さん。」
「お師匠さん……って何？」
「三代目、柏木醍醐だよ。おれのお父さんのこと。芸の上のお師匠さん……先生だから、そう呼んでるんだ。役者が顏に怪我するなんざ、もってのほかだって思いっきりお尻ぶたれたよ。」
「そうなんだ。」
「最初はね、役者の顔に傷をこしらえたって、さあちゃんにも文句を言うつもりだったんだけど、おれの方が悪いんだって話をしたら分かってくれたんだ。お師匠さん、男の一物を衆人に晒そうなんてお前の了見が悪い、これは親が出張って頭を下げるしかないって言い出したんだ。だから芝居がはねた後、さあちゃんのおうちに、謝りに行ったはずなんだけど……？」
「男のお荷物をしゅうじんにさらし……？でば……？は、羽……？ん～？」
禎克の頭の中で、幼稚園で飼っている白うさぎがぴょんと跳ねた。大二郎の話も、醍醐と同じように禎克には難解だった。
「さあちゃん。昨日は、ぱんつ下ろしてごめんね。さあちゃんが、あんまり可愛いから、本当に男の子かどうか、知りたくなったの。でも、関係なかったね。」
ちらりと傍で見た大二郎の顔は、笑顔だったがすごく痛々しかった。
普通の子、禎克は自分のせいで、大二郎の仕事が駄目になったことにすっかり責任を感じてしまった。しかも昨日来た綺麗なお兄さ……お父さんに、ぶたれた上に散々に怒られたらしい。本当なら、もう一度自分からごめんねと言うつもりだったのだが、先に謝られてしまった禎克は、きまりが悪くてくるりと背を向けてしまった。
「……ぼく、悪くないもん。」
「さあちゃん？」
「さあちゃんじゃないもん。お名前、禎克くんだもん。」
「さあちゃん……。やっぱり、怒ってるんだ。」
大二郎は哀しそうに声音を落とした。
「……。」
その場に大二郎を残して、禎克はレゴブロックの場所に行くと、黙々と組み立て始めた。背後に物言いたげな視線を感じたが、無視した。
見るからに痛々しい痣が、どこか自分を責めているようで、禎克はそれ以上大二郎と話が出来なかった。本当は朝一番に、仲良くブロックで遊ぼうよと声を掛けるつもりだったのに。
あくる日も、あくる日も、大二郎は毎朝駆け寄ってきて、禎克におはようと挨拶をしたが、禎克は黙りこくって返事をしなかった。
禎克には、自分でもどうしてそんな態度を取ってしまうのか、よくわからなかった。
大二郎の痛々しい傷が痕になりませんようにと、禎克は誰にも内緒で、眠る前にてるてるぼうずにお願いしてみたりしたが、大二郎の前では何も言えなかった。
禎克は大二郎を見ると怒ったように口を引き結び、赤い顔をしたまま視線を逸らして、黙りこくっていた。
大二郎の方はというと、自分が口もきいてもらえないほどひどいことをしてしまったのだと、すっかり反省してしょげている。
会話にならないため、近寄ることもできず、幼稚園でもすっかり借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった大二郎は、禎克を遠くから見ていた。二人の間には、湊でもどうしようもできないよそよそしさが横たわっていた。
わずか一か月だけ幼稚園に通う大二郎との別れの時は、すぐそこに近づいていたというのに。
これでいいのか？金剛禎克くん……。
「いいわけないじゃん。」
姉の湊が、様子をうかがって胸を痛めていた。。
(´・ω・｀) 大二郎「さあちゃん……」
( *｀ω´) 禎克 「ぷん。」
中々素直に慣れないさあちゃんです。困ったね～。
どれが誰かわかりますか～？(*⌒▽⌒*)♪
いただきものです。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
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「ん？さあちゃんは、舞台の事知ってるの？」
「うん。大二郎くんのお父さんに、聞いたもん……。」
大二郎はにこにこと笑った。
「昨日は舞台をお休みすることになって、お師匠さんに思い切り怒られちゃった。役者が自分の不手際で勝手に舞台に穴をあける位なら、死んでしまえだって。仕事にはすごく厳しいんだ、お師匠さん。」
「お師匠さん……って何？」
「三代目、柏木醍醐だよ。おれのお父さんのこと。芸の上のお師匠さん……先生だから、そう呼んでるんだ。役者が顏に怪我するなんざ、もってのほかだって思いっきりお尻ぶたれたよ。」
「そうなんだ。」
「最初はね、役者の顔に傷をこしらえたって、さあちゃんにも文句を言うつもりだったんだけど、おれの方が悪いんだって話をしたら分かってくれたんだ。お師匠さん、男の一物を衆人に晒そうなんてお前の了見が悪い、これは親が出張って頭を下げるしかないって言い出したんだ。だから芝居がはねた後、さあちゃんのおうちに、謝りに行ったはずなんだけど……？」
「男のお荷物をしゅうじんにさらし……？でば……？は、羽……？ん～？」
禎克の頭の中で、幼稚園で飼っている白うさぎがぴょんと跳ねた。大二郎の話も、醍醐と同じように禎克には難解だった。
「さあちゃん。昨日は、ぱんつ下ろしてごめんね。さあちゃんが、あんまり可愛いから、本当に男の子かどうか、知りたくなったの。でも、関係なかったね。」
ちらりと傍で見た大二郎の顔は、笑顔だったがすごく痛々しかった。
普通の子、禎克は自分のせいで、大二郎の仕事が駄目になったことにすっかり責任を感じてしまった。しかも昨日来た綺麗なお兄さ……お父さんに、ぶたれた上に散々に怒られたらしい。本当なら、もう一度自分からごめんねと言うつもりだったのだが、先に謝られてしまった禎克は、きまりが悪くてくるりと背を向けてしまった。
「……ぼく、悪くないもん。」
「さあちゃん？」
「さあちゃんじゃないもん。お名前、禎克くんだもん。」
「さあちゃん……。やっぱり、怒ってるんだ。」
大二郎は哀しそうに声音を落とした。
「……。」
その場に大二郎を残して、禎克はレゴブロックの場所に行くと、黙々と組み立て始めた。背後に物言いたげな視線を感じたが、無視した。
見るからに痛々しい痣が、どこか自分を責めているようで、禎克はそれ以上大二郎と話が出来なかった。本当は朝一番に、仲良くブロックで遊ぼうよと声を掛けるつもりだったのに。
あくる日も、あくる日も、大二郎は毎朝駆け寄ってきて、禎克におはようと挨拶をしたが、禎克は黙りこくって返事をしなかった。
禎克には、自分でもどうしてそんな態度を取ってしまうのか、よくわからなかった。
大二郎の痛々しい傷が痕になりませんようにと、禎克は誰にも内緒で、眠る前にてるてるぼうずにお願いしてみたりしたが、大二郎の前では何も言えなかった。
禎克は大二郎を見ると怒ったように口を引き結び、赤い顔をしたまま視線を逸らして、黙りこくっていた。
大二郎の方はというと、自分が口もきいてもらえないほどひどいことをしてしまったのだと、すっかり反省してしょげている。
会話にならないため、近寄ることもできず、幼稚園でもすっかり借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった大二郎は、禎克を遠くから見ていた。二人の間には、湊でもどうしようもできないよそよそしさが横たわっていた。
わずか一か月だけ幼稚園に通う大二郎との別れの時は、すぐそこに近づいていたというのに。
これでいいのか？金剛禎克くん……。
「いいわけないじゃん。」
姉の湊が、様子をうかがって胸を痛めていた。。
(´・ω・｀) 大二郎「さあちゃん……」
( *｀ω´) 禎克 「ぷん。」
中々素直に慣れないさあちゃんです。困ったね～。
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