沢木淳也・最後の日 28
鹿島の構えた拳銃の銃口は、静かに荻野慶介に向けられていた。
「お終いだ。けいちゃん。」
「な……なんで~?雄ちゃんがこいつを撃てばいいじゃないか。そしたら、僕はこいつの顔を変えて、またどこかへ捨てに行くよ。雄ちゃん……。ねぇ、雄ちゃんは僕を裏切るの?嫌いになったの?」
「違うよ。けいちゃんが好きだから、こうするんだよ。」
「やだよ、雄ちゃん~、あっ!やめろー!」
沢木は静かに手錠を受け取ると、カチャと硬質な金属音を響かせて荻野の手に掛けた。片方を寝台の足につなぐ。
「それでいいんだ、鹿島。お前は刑事なんだからな。」
沢木はうなだれた鹿島に、初めて優しい声を掛けた。
「いいな。すべての利害は無視して、常に刑事としてすべきことを考えろ。」
「沢木さん……僕も罪を償います。けいちゃんをここまで追い込んだのは、僕です。結局僕は何もできなかったばかりか、けいちゃんに罪を重ねさせてしまった。けいちゃんがこうなったのは、全部僕のせいです。」
呆けたように荻野慶介は、自分の手に掛けられた冷たい手錠を見やり、次いで鹿島の顔を見つめた。
「雄ちゃん。もう泣いていないの?」
「うん。もう泣かないんだ。大好きなけいちゃん……少しの間、離れ離れになるけど僕はずっとけいちゃんの傍に居るからね。沢木さん……けいちゃんをお願いします。僕は先に逝ってけいちゃんを待って……」
「鹿島っ!」
一歩下がってこめかみに銃口を当て、引き金を引こうとした鹿島に沢木の旋回した足が届いた。一瞬沢木は、ぽっと肩のあたりの一点が熱くなったのを感じた。
何が起こったか沢木には分かっていた。
鹿島の撃った弾丸が沢木が蹴りを見舞ったことで狙いが外れ、肩を貫通したのだ。刺された時と同じように、撃たれた瞬間は熱を感じるだけで痛みを感じない。
だが、瞬時に耐えきれないほどの骨の砕けた痛みが沢木を襲う。意識が飛びそうになり、平衡感覚を失って天井がぐるりと回ったと思った。
立っていられなくなった沢木はその場に、がくりと膝を付いた。
「ばか……野郎……鹿島。よく考えろ。これが刑事のすることか?」
この場で気を失う訳にはいかなかった。
*****
既に、荻野形成外科の周囲に張り込んでいた刑事たちは、銃声を聞き一斉に飛び込んだ。踏み込んだ刑事たちは、肩口からの出血に染まった沢木が傷口を抑えたまま、床で呻いているのを見た。
撃たれた沢木が、取り上げた銃を持ち、キャリアの鹿島刑事が重要参考人、荻野慶介を抱きしめている状態にどこか違和感を覚えながら、刑事たちは速やかに救急車両の手配をする。
「実行犯……荻野慶介、殺人ほう助、鹿島雄一。鹿島警視監に連絡を頼む……」
肩の骨が砕けた沢木淳也は、それだけを言うと気を失った。
鹿島の教育係だった沢木淳也は、鹿島を守りました。
本日もお読みいただきありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪
あと、もう少しでっす。 (`・ω・´) 此花咲耶
「お終いだ。けいちゃん。」
「な……なんで~?雄ちゃんがこいつを撃てばいいじゃないか。そしたら、僕はこいつの顔を変えて、またどこかへ捨てに行くよ。雄ちゃん……。ねぇ、雄ちゃんは僕を裏切るの?嫌いになったの?」
「違うよ。けいちゃんが好きだから、こうするんだよ。」
「やだよ、雄ちゃん~、あっ!やめろー!」
沢木は静かに手錠を受け取ると、カチャと硬質な金属音を響かせて荻野の手に掛けた。片方を寝台の足につなぐ。
「それでいいんだ、鹿島。お前は刑事なんだからな。」
沢木はうなだれた鹿島に、初めて優しい声を掛けた。
「いいな。すべての利害は無視して、常に刑事としてすべきことを考えろ。」
「沢木さん……僕も罪を償います。けいちゃんをここまで追い込んだのは、僕です。結局僕は何もできなかったばかりか、けいちゃんに罪を重ねさせてしまった。けいちゃんがこうなったのは、全部僕のせいです。」
呆けたように荻野慶介は、自分の手に掛けられた冷たい手錠を見やり、次いで鹿島の顔を見つめた。
「雄ちゃん。もう泣いていないの?」
「うん。もう泣かないんだ。大好きなけいちゃん……少しの間、離れ離れになるけど僕はずっとけいちゃんの傍に居るからね。沢木さん……けいちゃんをお願いします。僕は先に逝ってけいちゃんを待って……」
「鹿島っ!」
一歩下がってこめかみに銃口を当て、引き金を引こうとした鹿島に沢木の旋回した足が届いた。一瞬沢木は、ぽっと肩のあたりの一点が熱くなったのを感じた。
何が起こったか沢木には分かっていた。
鹿島の撃った弾丸が沢木が蹴りを見舞ったことで狙いが外れ、肩を貫通したのだ。刺された時と同じように、撃たれた瞬間は熱を感じるだけで痛みを感じない。
だが、瞬時に耐えきれないほどの骨の砕けた痛みが沢木を襲う。意識が飛びそうになり、平衡感覚を失って天井がぐるりと回ったと思った。
立っていられなくなった沢木はその場に、がくりと膝を付いた。
「ばか……野郎……鹿島。よく考えろ。これが刑事のすることか?」
この場で気を失う訳にはいかなかった。
*****
既に、荻野形成外科の周囲に張り込んでいた刑事たちは、銃声を聞き一斉に飛び込んだ。踏み込んだ刑事たちは、肩口からの出血に染まった沢木が傷口を抑えたまま、床で呻いているのを見た。
撃たれた沢木が、取り上げた銃を持ち、キャリアの鹿島刑事が重要参考人、荻野慶介を抱きしめている状態にどこか違和感を覚えながら、刑事たちは速やかに救急車両の手配をする。
「実行犯……荻野慶介、殺人ほう助、鹿島雄一。鹿島警視監に連絡を頼む……」
肩の骨が砕けた沢木淳也は、それだけを言うと気を失った。
鹿島の教育係だった沢木淳也は、鹿島を守りました。
本日もお読みいただきありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪
あと、もう少しでっす。 (`・ω・´) 此花咲耶
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