優しい封印 27
乾いた音に驚いた六郎が、居間に飛び込んだ時、間島準一郎はどっと倒れ込むところだった。
至近距離から撃たれた間島は、ほぼ即死状態だった。
「六郎っ……無事か!?」
階下に到着した月虹が銃声に気付き、駆けあがったのは全て終わった後だった。
呆然と六郎が間島の傍に立ちつくしていた。
「……今、片付いたところです。」
*****
「鴨嶋組さん。うちの間島が、ご迷惑をおかけしました。」
月虹と六郎に向かって、向坂組の組員(ヒットマン)は頭を下げた。
「間島はヤクでイかれて、自殺しました。ヒネ(警察)にも届けを出しておきます。鴨嶋さんはこの件には何も関係ないんで、直ぐにもお引き取り下さい。怪我人は、ここに運びますから御身内の方にお知らせくださって結構です。」
「この場所は……?」
「うちの息のかかった総合病院です。万事任せてください。院長に話は通しておきます。今後一切、この人に向坂組が関わることはありません。入院費用もこちらで持たせていただきます。」
自分で手を下しておきながら、顔色も変えず病院の場所を書いた紙きれを手に、相手はそう口にした。背を向けると、倒れた間島の手に銃を持たせ、ご丁寧に手を添えてもう一度心臓に一発入れたのは、鑑識が入った時の自殺の証拠を作る為だ。
静かにあっさりと、間島は始末された。
「向坂の親父さんには、くれぐれもよろしくお伝えください。」
「間島の兄貴は、幹部に昇格したばかりですが、おそらく組葬になるかと思いますんで……。」
「はい。そう伝えます。」
「鴨嶋組さん。今、連絡が有りました。数分後には警察(ヒネ)が来るそうです。」
頭を下げた月虹と六郎は、そのままマンションを後にし、離れたところで様子を伺った。
話通り向坂組が呼んだ警察が入り、すぐに救急車が手配されたらしい。
運び出された求が、付添いの組員と共に病院へと向かうのを確認後、二人は帰宅した。
*****
すべて終わりましたと伝えられた鴨嶋劉二郎は、一言「そうか」とだけ口にした。
劉二郎は知っていた。
極道は一度請け負ったことには、命をかけて責任を持つ。それは組の信用と、次のシノギ(仕事)につながるからだ。
求を助けてくれと頼んだ鴨嶋組には、向坂組に対して大きな借りが出来た。
組葬になるからには、劉二郎はその義理場で、香典という形で、向坂組に礼を尽くさなくてはならない。
正しいかどうかは置いておいて、それは極道なりの仁義の形だった。
本日もお読みいただきありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪
向坂組はこういう形で、決着をつけました。
間島のやったことは、命をかけて償うべきものだったのかもしれません。……大変ねぇ……(´・ω・`) ←どんどんBL小説から外れてゆく気が……
※作中に出てくる集団は、あくまでも、創作上の想像物です。
もう少し、お付き合いください。此花咲耶
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