優しい封印 29
劉二郎は、涼介に間島は自殺したと伝えた。
だから、もう何も心配はいらないからなと、劉二郎は頭を撫でた。
「良かったなぁ。涼介。」
「うっ……うっ……じいちゃん……ありがとう。あいつが極道って聞いただけで怖いし、月虹の兄貴も六郎の兄貴も、おれのことひよこだっていうけど、おれ、いつかきっと、じいちゃんみたいなかっこいい男になる……っ。」
「そうか。」
「おれね……893にはなれないけど、じいちゃん達と一緒に居たい。日本中の男の中で、じいちゃんは一番かっこいいよ。おれ、まじ尊敬する……。駄目かな、じいちゃん。」
駄目かと聞かれた鴨嶋劉二郎は、困ったような照れくさそうな顔を向けた。
「わかった、わかった。涼介は好きなだけ、ここにいればいい。どの道、お袋さんもしばらくは、病院に付いてなきゃいけないしな。それよりも、お父さんの具合はどうだ?」
「う……ん。おれが行った時は、まだ鎮静剤が効いて白い顔で眠ってた。おれも本当は気が付くまで傍に居たいけど、目が覚めたとき、お母さんだけがいた方がいいかなって思って。おれの顔見たら、恐ろしいことを思い出すかもしれないでしょ?」
「そうだな。惚れた女に良いところ見せたくて、男ってのはがんばるからな。とにかく親父さんが助かってよかったな、涼介。」
涼介はその場にぺたりと坐ると、畳に頭を擦り付けた。
「本当に、ありがとうございました。おれ、お父さんの事諦めないって、お母さんには言ったけど、本当は絶対だめだと思ってた。だって……あいつは本当に怖くて、でかくて、お父さんに酷いことしてる時、おれ……何もできなかったんだ。叩きのめされただけだった……」
「何もできないことは恥ずかしいことじゃないぞ、涼介。男が一番恥ずかしいのは、土壇場でケツをまくることだ。諦めちまったら、そこでお終いだからな。……って、安西先生ってお人も言ってるらしいじゃねぇか。」
「あはは……、じいちゃん。漫画の話だよ、それ。」
涼介は、笑いながら泣き、泣きながら笑っていた。縁あって、鴨嶋組に拾ってもらい、本当に幸運だったと思う。義父は恐ろしい男から解放され、母は最愛の夫と再会できた。
「よし!ウーロン茶、飲むぞ~!」
「涼介、ウーロン茶じゃ酔えねぇぞ。」
「気持ちだよ、六郎の兄貴。形が大事だもん。」
「そうか、だったら注いでやるから大ジョッキで飲め、飲め~。」
「そんなに飲んだら寝小便出るぞ、涼介。こっちにしろ。」
「月虹の兄貴。これ……?」
「ノンアルのビールだ。」
「よっし!」
一気飲みした涼介は一気にむせて吐いた。
「げほっ……苦い……っす。」
「きったねぇ!やっぱひよこだなぁ、涼介。」
鴨嶋劉二郎と、月虹、六郎は、涼介を肴にして散々笑い転げた。
本日もお読みいただきありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪
後、一話か二話で終わります。よろしくお付き合いください。
(´・ω・`) ノンアル……苦くてうまくないっす……
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