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風に哭く花 17 

翔月と交わした約束通り、その後の青児の活躍は目覚ましかった。

緒戦敗退必至と言われていた青児の野球部は、驚いた事に甲子園常連有名私立の第二シード校に勝利してしまう。
校歌を歌った後、一目散に応援席に向かって来てぶんぶんと帽子を振った青児に、周囲は狂喜し拍手喝さいを送りどよめいた。翔月は汗を拭くふりをして、何度も目許をぬぐった。
青児の活躍が誇らしかった。

「翔月ーーー!!ほら!」

夕方、やっと解放された青児は、翔月に大切なウイニングボールを渡し、その日は二人の記念日になった。

「駄目だよ。こんな大事なもの、貰えない。それに、勝手に持って来ちゃいけないって。ちゃんとしまっておかないと。ほら、部室とか校長室とかに飾るんじゃないの?」

「良いんだ、これは最初っからおれが貰う約束だったんだ。それに優勝とかじゃないし、たかだか二回戦を突破しただけだ。」

「でも、すごかったよ。今日の試合。最後のバッターに投げた時、ぼくね神さまに初めて祈ったよ。」

「試合に勝てたら、これは絶対翔月にやろうって決めてたんだ。翔月がいたから、おれは本気で頑張れた。勿論、おれだけの力じゃないってわかっているけど、おれにとって翔月はそれだけ大事な存在ってことなんだ。」

「青ちゃん……」

「なぁ。おれ、まだちゃんと翔月におめでとうって言ってもらってないぞ。祝福のキスとかないの?」

そう聞いて、翔月は素早く青児の頬にちゅっと触れた。

「青ちゃん、おめでと。マウンドにいる青ちゃん、すごくかっこよかった……最後、三振取った時なんて嬉しくて、ぼく泣いちゃったよ。隣りの女の子たち、青ちゃんが自分たちの方に向かって手を振ってくれたって、きゃあきゃあ騒いでた。」

「おれには翔月しか見えてなかったぞ。」

「ね……ウイニングボール、もう一個欲しいな。」

「は?」

「これ、ぼくが貰っちゃったら、青ちゃんのがないじゃない?お揃いで持っていたい。」

青児は思わず吹きだした。そして、すぐに真顔になった。

「翔月が言うなら、もう一個獲ってやるよ。何だってできる気がするから、不思議だよな。翔月……」

「青ちゃん。ぼくも青ちゃんがいるから何だってできる。だから……信じてね。ぼくの事。……何が有っても……」

「何が有っても……?」

「……何が有っても、青ちゃんが好きってことだよ。」

「そっか……翔月……」

抱きしめれば折れそうな、華奢な翔月の身体だった。口にはしないが、柏木との事が有ってから、翔月はますます細くなった気がする。
どんな状況に翔月が向かおうとしているのか、青児には知る由もない。
昔から気が付けば傍に居た、まろみも何もない、ただ愛おしいだけの不思議な存在。
青児は冷たい両頬を手のひらで挟むと、上を向かせた。

「翔月……?なぁ、一人で泣くなよ。」

「……うん。青ちゃんは、お日さまの下が似合うね。」

青児は、涙をこらえてぷくりとはれた青いまぶたに、優しいキスを落とした。

*****

翌日の新聞各紙には、大番狂わせの記事が踊った。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

半分忘れかけていましたが、青ちゃんは野球部のエースで生徒会長という輝かしい設定なのでした。
みそっかすの翔月は中学の頃、自分は青ちゃんにはふさわしくないとずっと思ってたみたいです。

ストックが尽きました……(´・ω・`) 精いっぱい頑張ります。
こけたら、ごめんね。  此花咲耶


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