風に哭く花 23
「うさぎちゃん?」
「せんせい……こわい……こわい……あぁんっ……」
このまま何か違うものになってしまう気がすると言って、翔月は泣いていた。
「早熟な子はとうにセクスなど済ませている、こんなの何でもないことだよ。」
「いつかは、誰でも経験するのだからね。」
普通の生活が出来なくなるようなことはない、何も変わらないと、柏木は翔月を励ましたが、焦燥しきった翔月は柏木に縋ったままずっと泣きじゃくっていた。
好きでもない男に身体を明け渡し、大好きな青児を裏切ってしまったと自分を責めていた。
翔月の透明な心は、柏木が考えたよりも未熟で幼かった。
「うさぎちゃん……ほら、口を開けて。」
「あ……や……だ……」
「仕方ないか……」
コーラで割った薄いウイスキーを、口移しに呑ませてやると、汗に浮いた翔月はそのまま酒の力を借りて眠りに落ちた。冷たい舌が、柏木に応える事はない。
泣き寝入りした翔月の青白い頬を、柏木は愛おしそうに撫ぜた。涙の痕を指でなぞる恋人を、複雑な顔で眺めていた俊哉は、傍に寄ると柏木の頭を抱いた。
「直樹。分かっていると思うけど……この子は、代わりにはならないよ。」
「俊哉も見たでしょう?感じてたよね?大丈夫。うさぎちゃんは、ちゃんと感じて達ったんだよ。」
じっと俊哉を見つめる柏木の方が泣きそうだった。
「そうだね。見たよ。この子は達く時いつも、大好きな人の名前を呼ぶ。好きな人は青ちゃんっていうんだね……直樹の名前じゃない。」
それにね……と、俊哉は言葉を継いだ。
「この子が直樹の言うように、もしも被虐でしか感じられないのだとしても、その覚醒に手を貸すことなど無いんだ。いつか自分で気が付けばいいだけなんだよ。君に俺がいるように、この子にもいつか本当の相手が現れる。案外、もういるのかもしれないし、彼の相手はまるでままごとのようで、話にならないと君は言うけど、俺達だって最初は似たようなものだったろう?甘えん坊のうさぎは、飼い主に返してやればいい。」
「いやだ。」
「直樹。この子は君の弟じゃない。」
「うるさい。俊哉のバカ。」
柏木直樹は眠りに落ちた翔月を、再び縛め始めた。
「濡らしておいたから、今はすんなりと入る。」
柏木の指が敏感な場所に触れると、目を閉じたまま手足をばたつかせて翔月は抗った。
「やめて……触らないで。何もしないで。」
「うさぎちゃん。もう一度縛られたいの?先生はいい子が好きだよ。」
呪文のように繰り返される言葉に、翔月は身じろいだ。
その次にされる行為を翔月はもう分かっていた。
「ああ……っ」
侵入される指の壮絶な異物感に、翔月は震えた。快感と悪寒がないまぜになった小さな疼きが闇となって、翔月を飲み込もうと頭をもたげた。
横抱きにされた翔月の最奥に、ゆっくりと抜き差しされる柏木の指に、震えながら慄きながら意識が向かう。
薄いアルコールを与えられたせいか、翔月は敏感に反応した。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
何だか試練の真っ最中の翔月です。(´・ω・`) 可哀想に……←誰のせいだ?
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