漂泊の青い玻璃 59
「期待を裏切らない方が良いだろ?俺は琉生には厳しくする担当なんだ。甘やかすのは兄貴が担当だからな。」
「また、そんなこと言う~。」
*****
二人の兄はジョッキを重ね、上機嫌だった。
隼人は手を伸ばすと、くしゃくしゃと琉生の頭を撫でた。
「一人でよく頑張ったな、琉生。ちゃんと自分の道を見つけて、ここまで来たじゃないか。偉い、偉い。」
「ほんとに頑張ったんだよ。尊兄ちゃんは、推薦貰う気なら赤点も取るなって厳しかったけど、そのおかげで何とか推薦貰えたからラッキーだった。ありがと。」
「琉生の数学は、冗談抜きで酷かったからな。基礎が出来てないから、実技重視で推薦に引っかかってくれて本当に良かった。因数分解から教えていたんじゃ、とても受験に間に合わなかった」
「琉生がつまづいたのって、掛け算の九九じゃないのか?」
「ぶ~~。」
「あはは……九九でつまづいたのって、隼人だろう?琉生が数学苦手なのは、隼人のがうつったんだな。」
「うつったんだよ!」
機嫌を直した琉生の前に、尊は好物のチキン南蛮を置いた。
「ともかく、おめでとう琉生。これまでは誰かの手を借りてここまで来たけど、これからはもう自分だけの力で歩いて行けるな。」
「……う……ん。」
どこか寂しそうな表情を浮かべた琉生は、うつむいてしまった。
握り締めた拳にぽとりと、水滴が落ちたのを見て、隼人が慌てた。
「ちょ……っ、兄貴。そんな言い方をしたら、ちび琉生が見捨てられたと誤解するぞ。」
「え?ああ……すまん。琉生。そうじゃないんだ。一人前になるのを待っていたよ……と言いたかったんだ。」
「待ってた……?」
皿のようにぱんと見開かれた瞳が揺れた。
「どうゆうこと?」
「琉生は今も、僕と隼人が好きか?」
「え……っと。尊兄ちゃん、酔ってる?」
「多少はね。でも、大した量じゃない、自分が何を言ってるかは分かっているつもりだよ。いつか聞いただろう?琉生に僕と隼人どっちが好きか。」
「選べないよ……?」
「そう言ったな。だから僕も言ったはずだ。隼人と僕で琉生を半ぶんこするって。」
ごくりと琉生の喉が、上下した。
本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)
(`・ω・´) 「琉生を隼人と半分こする!」
Σ( ̄口 ̄*) 「兄貴。居酒屋でいきなり何を……」
(*つ▽`)っ)))「何って……あはは~……」
(°∇°;) 「わ、笑い上戸かよ?」
[壁]ω・) 「え~と……?」
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