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Caféアヴェク・トワ 君と共に13 

今朝とは別人のような態度の松本の背中を、力いっぱいがんと荒木が叩いた。

「いてっ」
「悩めるオーナー、そのまま、しけこむかと思ったぜ」
「まさか。こう見えても常識人だぞ?俺はいつだって仕事を優先してるだろ?」
「へ~。まぁ、悩み事が解決したんなら、俺には何の不服もないけどさ」
「本当はさぼる気だったんだが、表通りからお前が仁王立ちしているところが見えたんで諦めた。お前を怒らせると、後が怖いからな」
「直の傷の具合が心配でな。もし、大きな手術にでもなるんだったら、救急車が来るだろうって由美が言うから見ていたんだ」
「心配かけて悪かったよ」
「まあ、怪我が大したことなくてよかった。肉や魚を捌いてて、勢い余って筋切っちまうやつとか、これまでにも見ているからな。正直、血の気が引いたよ。仕事はしばらく休ませるんだろ?」

直は申し訳なさそうに肩をすくめた。

「心配かけてすみません。二、三日で復帰します。痛みさえ引けば仕事はしてもいいとのことなので、ご迷惑かけますがよろしくお願いします」
「そうか。よし、分かった。前橋と俺で当分は何とかするから気にするな。来週末のケーキは当てにしていいんだな?」
「大丈夫です」
「ホテルは木本さんにお願いして、連絡してもらったからな。当分向こうは休んでいいそうだ。こっちも来週のケーキさえ間に合わせてくれれば問題なしだ。」
「はい」
「ずっと休みなしだったんだ。ご褒美だと思って、ゆっくりするといい」
「じゃあ、気になるお店がいくつかあるので、早速回ってきます」
「そうだな。あ、忘れずに店長も連れて行けよ。邪魔だからな」
「会計士さんは?」
「一週間先にしてもらったよ。どうせ直がいなければ、役に立たないだろうと思ってな」
「手回し良すぎです、荒木さん」
「腐れ縁だからな。あの面倒くさい男は、昔から分かりやすい駄々っ子と同じなんだ。だが、根は悪いやつじゃないから、我慢して付き合ってやってくれ」
「店長が誰よりも優しい人だって、わかってます。おれ、荒木さんたちには、いつも心配かけてばかりで……」
「苦労するなぁ、直。いじらしくて、おじさんは涙が出そうになるぞ。頑張れよ」

荒木にくしゃくしゃと髪をかき混ぜられた直は、蒼白の顔で病院に向かった時と、別人のようなはにかんだ笑顔を見せた。

「じゃあ、みんなに顔を見せたら、店長と一緒にCafé巡りしてきます」
「ゆっくりしてこいよ。行きたいところはあるのか?」
「はい。何か所かリストにまとめてあります」

気になるCaféは、雑誌やネット情報から精査され、きちんとファイルにまとめられていた。
不自由な指でぱらぱらとめくって、予定を口にする直に、まるでデートのようだなと荒木は揶揄した。

「お土産買ってきますね、荒木さん」
「気にするな。楽しんで来い」




本日もお読みいただきありがとうございます。(`・ω・´)
怪我が治るまでお休みをもらった直くん。
二人でケーキ屋さん巡りのあとは、らぶらぶになるのかな。(*´▽`*)←だいじょぶか?



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