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Caféアヴェク・トワ 君と共に8 

一方、Caféの方に出勤してきた直には、松本の不機嫌の理由が皆目わからなかった。
眉間に皺を刻んだ松本の傍に、おずおずと近づいてみたが、ぎこちない会話しか交わしてくれないので途方にくれていた。

「あの……店長?」
「ああ?」
「おはようございます……」
「ああ」
「フレンチトーストに蜂蜜かけますか?」
「ああ」
「コーヒーはブラックでいいんですよね?」
「ああ」
「おれ……席を外した方がいいですか?仕事の邪魔ですか?」
「……」

空気が凍り付いていた。

「おれ、夕べの事は、酔っぱらって……記憶がありません……知らない間に、店長の気に障るようなことを、したんでしょうか……だとしたら……あの……」

扉の向こうで、様子をうかがっていた荒木が見ていられず、部屋に入った。
どう見ても松本の様子は変だ。視線を絡ませようともしないので、直が泣きそうになっている。
思わず、大人げねぇと舌打ちした。

「直!話し中悪いが、ケーキの予約の件なんだが、いいか?」
「あ、はい」
「ケーキの注文が来週末、三軒入っている。誕生日と結婚記念日と、金婚式のお祝いだそうだ。オークジホテルの方の都合はどうだ?」
「こっちを優先してもらえることになっているので、大丈夫です。向こうを上がってから、土台を焼きます」
「そうか。あと、店長と話があるから、厨房に入っていてくれ。段取りはわかるな?」
「はい」

直がいなくなったのを確かめて、荒木は腕組みしたまま松本をにらみつけた。
いたたまれない空気に我慢できず、松本が音を上げた。

「……言いたいことがあるなら言えよ」
「おまえに聞かせる話なんぞない」
「俺が何を言いたいかわからないのか?何があったか知らねぇが、いい年こいて八つ当たりするなよ。情けねぇ」

ばんと音を立てて、収支表を閉じた松本は荒木の胸ぐらをつかんだ。

「わかった風な口聞くんじゃねぇっ!」
「図星をさされたからって、ガキみたいにいきり立つなよ。少なくとも今のあんたよりは直の気持ちも分かるつもりだ。なんだよ、今の態度は。あんたはこれまで誰にでも優しかっただろ?直の何が気に入らねぇんだ。可哀想に引きつってたじゃねぇか」
「別に直を気に入らねぇってんじゃねぇ。自分でもわかっているんだ、ほおっておいてくれ」
「松本さん?あんたらしくもない……一体、何があったんだ?」

問われて思わず、松本が逡巡する。

「……言いたくない」
「言えよ」

食い下がる荒木の語気の強さに、松本はいらいらと煙草に火をつけた。

「……直が酔っぱらったときに、俺の知らない奴の名を呼んだ」
「……へっ?」
「笑えよ。会ったこともないそいつに嫉妬して、こちとら悶々としてんだよっ!悪かったな!」
「あらま~……可愛らしい理由」
「笑うな!」
「笑えと言ったり、笑うなと言ったり、せわしない男だな」
「うるせぇっ、ほっといてくれ」




本日もお読みいただきありがとうございます。
悶々とする松本に近寄れない直です。(´・ω・`)

|д゚) 「なんだよ、あの態度」←荒木
(-。-)y-゜゜゜「うるせぇ、ほっとけ」
(´;ω;`)ウゥゥ「店長……」

(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「心配すんな。ちゃんと話してやるから」「はい……」


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