杏樹と蘇芳(平安) 15 【R-18】
平安のころの話である。
杏樹は容赦なく奴婢小屋に押し込められた。
内側から、普段使われたことの無いかんぬきがしっかりとかけられるのを、ぼんやりと見つめていた。
頭を押さえつけられた布団は、男たちの汗とカビの臭いがする。
次郎が杏樹の為に気を使って、髪を洗う灰汁を作ってくれたり、ぬか袋で背中を擦(こす)ってくれたりしたことなどが、杏樹を蹂躙する男たちを惑わせていた。
「良い匂いじゃ……」
髪は艶やかで椿油の芳しい香りがし、ぬか袋を使った肌は商売女よりも張りがあって滑らかだった。
まるで匂いで虫を誘う花のように、杏樹は男たちの衆目の中、粗末な下帯一つにむしられて部屋の片隅に追い詰められていた。
「お館様のお許しを戴いたから、遠慮はいらぬよなぁ」
「あっ……」
抱きすくめられて、覚悟の上とは言いながら小さな悲鳴が漏れた。
「可愛がってやるさ。うんとな」
「さあさあ。こちらへ」
杏樹を取り囲む輪が小さくなって、杏樹は闇に墮とされてゆく。
舌を噛まぬように、だが声は出せるようにと、ゆるい枷が入れられた。
思えば、次郎は杏樹をとても優しく抱いた。
最初の頃は、可哀想だからと素股を使い、決して無体なことはしなかった。
まるで壊れ物を扱うように、ゆっくりと最奥に指で掬った菜種油を送り、傷のつかぬように労わってくれた。
菜種油も匂いの少ない、上等の白菜種を使った。
巨大な逸物が育ってしまえば身体に負担になるだろうと、まだ育ちきらないままゆっくりと抽送を繰り返し、狹い杏樹の肉筒を少しずつ慣らしてゆく。
杏樹の肌が色づいて、小さく次郎の名を呼べば、やっと微笑みを浮かべ腰を打ち付けてゆくのだ。
過酷な労働に耐える日々の中で、杏樹は次郎の胸に頬を寄せて、束の間の安らぎを得た。
だが今は、荒々しい怒張は杏樹の容に添うことなく、わりわりと音を立てて楔を打ち込んで来る。
「うぅっ……!」
必死に腕から逃れようともがき、這ってたどり着いた板戸はかんぬきで閉ざされ、力なく叩く手首はすぐに誰かのものを握らされた。
背後から下肢を抱え上げられ、後孔は埋められた。
膝を割られて逃げようもなく、杏樹は少しでも身体を浮かせようと、かすかに身を捩る。
動くなと、ぱんと丸い尻を張られた。
「きついのう、次郎様の一物を咥えこんでいれば、もっと楽に押し挿れるはずだが。行燈の灯り用で構わぬ。もっと馴染ませる油が必要じゃ」
「そら。こちらを向け。口を開けて咥えるのだ。口淫もせねば、時間が長引いて辛いぞ」
「まだ誰も、精を零したものはおらぬ。そら、励めよ」
束ねた髪をぐいと引き上げられ、強引に口を割られた。
天を向くほどの肉を喉の奥まで押し込められて、杏樹は襲う吐き気に息を詰めた。
「おおっ!喉を締めると、こちらが食いちぎられそうじゃ」
身体中を奴婢頭たちの手が這いまわり、曲げた肘の関節さえ縛められて誰のものか怒張が挿し込められた。
固く閉じた目尻から、零れ落ちる涙を吸ってくれるものはない。
どこもかも穢されていた。
杏樹が次郎のものに初めて舌を這わせたとき、次郎は拙(つたな)いのうとくすぐったそうに笑ってくれた。
やっとの思いで口をつけた杏樹の気持ちを押し量り、さっさと下帯をつけて眠った振りをした。
そのような杏樹が可愛くてたまらぬと、次郎は決して無理強いをしなかったのだ。
自分がどれほど大切にされていたか……。
消えゆく意識の中で、杏樹は蘇芳の名でもなく、別れた父母の名でもなく、ただひとり何もないただの孤児を慈しんでくれた男の名を呼んでいた。
「次郎さまぁ……っ」
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杏樹は容赦なく奴婢小屋に押し込められた。
内側から、普段使われたことの無いかんぬきがしっかりとかけられるのを、ぼんやりと見つめていた。
頭を押さえつけられた布団は、男たちの汗とカビの臭いがする。
次郎が杏樹の為に気を使って、髪を洗う灰汁を作ってくれたり、ぬか袋で背中を擦(こす)ってくれたりしたことなどが、杏樹を蹂躙する男たちを惑わせていた。
「良い匂いじゃ……」
髪は艶やかで椿油の芳しい香りがし、ぬか袋を使った肌は商売女よりも張りがあって滑らかだった。
まるで匂いで虫を誘う花のように、杏樹は男たちの衆目の中、粗末な下帯一つにむしられて部屋の片隅に追い詰められていた。
「お館様のお許しを戴いたから、遠慮はいらぬよなぁ」
「あっ……」
抱きすくめられて、覚悟の上とは言いながら小さな悲鳴が漏れた。
「可愛がってやるさ。うんとな」
「さあさあ。こちらへ」
杏樹を取り囲む輪が小さくなって、杏樹は闇に墮とされてゆく。
舌を噛まぬように、だが声は出せるようにと、ゆるい枷が入れられた。
思えば、次郎は杏樹をとても優しく抱いた。
最初の頃は、可哀想だからと素股を使い、決して無体なことはしなかった。
まるで壊れ物を扱うように、ゆっくりと最奥に指で掬った菜種油を送り、傷のつかぬように労わってくれた。
菜種油も匂いの少ない、上等の白菜種を使った。
巨大な逸物が育ってしまえば身体に負担になるだろうと、まだ育ちきらないままゆっくりと抽送を繰り返し、狹い杏樹の肉筒を少しずつ慣らしてゆく。
杏樹の肌が色づいて、小さく次郎の名を呼べば、やっと微笑みを浮かべ腰を打ち付けてゆくのだ。
過酷な労働に耐える日々の中で、杏樹は次郎の胸に頬を寄せて、束の間の安らぎを得た。
だが今は、荒々しい怒張は杏樹の容に添うことなく、わりわりと音を立てて楔を打ち込んで来る。
「うぅっ……!」
必死に腕から逃れようともがき、這ってたどり着いた板戸はかんぬきで閉ざされ、力なく叩く手首はすぐに誰かのものを握らされた。
背後から下肢を抱え上げられ、後孔は埋められた。
膝を割られて逃げようもなく、杏樹は少しでも身体を浮かせようと、かすかに身を捩る。
動くなと、ぱんと丸い尻を張られた。
「きついのう、次郎様の一物を咥えこんでいれば、もっと楽に押し挿れるはずだが。行燈の灯り用で構わぬ。もっと馴染ませる油が必要じゃ」
「そら。こちらを向け。口を開けて咥えるのだ。口淫もせねば、時間が長引いて辛いぞ」
「まだ誰も、精を零したものはおらぬ。そら、励めよ」
束ねた髪をぐいと引き上げられ、強引に口を割られた。
天を向くほどの肉を喉の奥まで押し込められて、杏樹は襲う吐き気に息を詰めた。
「おおっ!喉を締めると、こちらが食いちぎられそうじゃ」
身体中を奴婢頭たちの手が這いまわり、曲げた肘の関節さえ縛められて誰のものか怒張が挿し込められた。
固く閉じた目尻から、零れ落ちる涙を吸ってくれるものはない。
どこもかも穢されていた。
杏樹が次郎のものに初めて舌を這わせたとき、次郎は拙(つたな)いのうとくすぐったそうに笑ってくれた。
やっとの思いで口をつけた杏樹の気持ちを押し量り、さっさと下帯をつけて眠った振りをした。
そのような杏樹が可愛くてたまらぬと、次郎は決して無理強いをしなかったのだ。
自分がどれほど大切にされていたか……。
消えゆく意識の中で、杏樹は蘇芳の名でもなく、別れた父母の名でもなく、ただひとり何もないただの孤児を慈しんでくれた男の名を呼んでいた。
「次郎さまぁ……っ」
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