アンドロイドSⅤは挑発する 11
気配に気づいた音羽が、薄く目を開けた時、あっくんはアンドロイドSVを力の限り揺さぶっていた。
「出て行って!どうしてぼくのベッドにいるの?ショーくん!起きて!」
「……あっくん。もう朝?どうしたの?」
「音羽……なぜここに、ショーくんがいるの?」
「ああ……朝早くに帰ってきたら、この子の様子がおかしかったんだよ」
「……どういうこと?」
「雨に打たれながら、玄関先に座り込んでいたんだ。シャットダウンができなくて、熱を持ったらしくてね。うつろな目をしていた。それで、とりあえず身体を拭いてこれを着せたんだ。ソファに横になるように言ったんだが、いつの間にここに来たのかな。気付かなかった」
「……そう」
引きつった恋人の横顔に、さすがに音羽も何かを察したらしい。
「まだ、試作品らしいから、不都合なこともたまには起きるんじゃないかな」
あっくんはやっと我に返り、ショーくんが無機質なアンドロイドだったと思いだした。
嫉妬するのは間違っている。何もわからないんだから……そう、心の中で繰り返した。
「音矢に聞いたんだが、持ち主の君がずっとシャットダウンをしないと、正常に起動できなくなるかもしれないそうだよ。とりあえず、僕が代わりにシャットダウンをしたけど、君以外だとスリープ(一時停止)にしかならないらしいんだ。そうすると、内部の精密機器に負荷がかかる……あっくん、どうかした?」
「そんなこと……出来ない……いや……」
アンドロイドを抱きしめて、「愛している」と言わなければならないのはわかっていた。
しかし、じわじわと居場所を侵食されている気がして、あっくんはどうしてもアンドロイドをシャットダウンすることができなかった。
自分に冷たくされたまま、雨に濡れて途方に暮れたショーくんを思うと、可哀想な気もするが、何度も大切なものを捨てられたことは、どうしても納得がいかない。
現に今だって、二人の寝台に入り音羽の隣で眠っていた……
「……ねぇ。音羽の隣は、ぼくだけの場所じゃなかったの?音羽は、ぼくじゃなくても平気だったの?アンドロイドを抱きしめて、ぼくに言うように愛していると言ったの?ぼくの場所で眠ってもいいよと言ったの……?音羽は、ぼくよりもショーくんが大事なの?」
「あっくん……どうしたの?君とアンドロイドは違うだろう?この子は音矢の作った、血の通っていないアンドロイドだ。機械の人形だよ?」
「わかってる……でもね、今は違うけど、ぼくも初めて音羽の前に立った時はアンドロイドだったよ。忘れたの?音羽は、アンドロイドに恋をしたことがあるんだよ?今度だって、そうならないとは限らないんだよ」
「落ち着いて、あっくん。君はアンドロイドじゃないだろう?」
「ショーくんだって、本当は音羽に恋した人間かもしれない……」
「そんなはずはない。シャツを着せるときに、アンドロイドSⅤ001と、首筋にシリアルが刻印されているのを見たんだから」
「そんなもの、どうにだってなるよ!レタリングシートかもしれない……」
「あっくん……?」
涙を浮かべながら、懸命に感情を吐露する恋人を前に、音羽は真意を測りかねていた。
本日もお読みいただきありがとうございます。
あっくん……切れちゃったね~(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚
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「出て行って!どうしてぼくのベッドにいるの?ショーくん!起きて!」
「……あっくん。もう朝?どうしたの?」
「音羽……なぜここに、ショーくんがいるの?」
「ああ……朝早くに帰ってきたら、この子の様子がおかしかったんだよ」
「……どういうこと?」
「雨に打たれながら、玄関先に座り込んでいたんだ。シャットダウンができなくて、熱を持ったらしくてね。うつろな目をしていた。それで、とりあえず身体を拭いてこれを着せたんだ。ソファに横になるように言ったんだが、いつの間にここに来たのかな。気付かなかった」
「……そう」
引きつった恋人の横顔に、さすがに音羽も何かを察したらしい。
「まだ、試作品らしいから、不都合なこともたまには起きるんじゃないかな」
あっくんはやっと我に返り、ショーくんが無機質なアンドロイドだったと思いだした。
嫉妬するのは間違っている。何もわからないんだから……そう、心の中で繰り返した。
「音矢に聞いたんだが、持ち主の君がずっとシャットダウンをしないと、正常に起動できなくなるかもしれないそうだよ。とりあえず、僕が代わりにシャットダウンをしたけど、君以外だとスリープ(一時停止)にしかならないらしいんだ。そうすると、内部の精密機器に負荷がかかる……あっくん、どうかした?」
「そんなこと……出来ない……いや……」
アンドロイドを抱きしめて、「愛している」と言わなければならないのはわかっていた。
しかし、じわじわと居場所を侵食されている気がして、あっくんはどうしてもアンドロイドをシャットダウンすることができなかった。
自分に冷たくされたまま、雨に濡れて途方に暮れたショーくんを思うと、可哀想な気もするが、何度も大切なものを捨てられたことは、どうしても納得がいかない。
現に今だって、二人の寝台に入り音羽の隣で眠っていた……
「……ねぇ。音羽の隣は、ぼくだけの場所じゃなかったの?音羽は、ぼくじゃなくても平気だったの?アンドロイドを抱きしめて、ぼくに言うように愛していると言ったの?ぼくの場所で眠ってもいいよと言ったの……?音羽は、ぼくよりもショーくんが大事なの?」
「あっくん……どうしたの?君とアンドロイドは違うだろう?この子は音矢の作った、血の通っていないアンドロイドだ。機械の人形だよ?」
「わかってる……でもね、今は違うけど、ぼくも初めて音羽の前に立った時はアンドロイドだったよ。忘れたの?音羽は、アンドロイドに恋をしたことがあるんだよ?今度だって、そうならないとは限らないんだよ」
「落ち着いて、あっくん。君はアンドロイドじゃないだろう?」
「ショーくんだって、本当は音羽に恋した人間かもしれない……」
「そんなはずはない。シャツを着せるときに、アンドロイドSⅤ001と、首筋にシリアルが刻印されているのを見たんだから」
「そんなもの、どうにだってなるよ!レタリングシートかもしれない……」
「あっくん……?」
涙を浮かべながら、懸命に感情を吐露する恋人を前に、音羽は真意を測りかねていた。
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