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アンドロイドSⅤは挑発する 10 

「ご主人様なんて、呼ばないで。たまたま運よく起動しただけで、きちんとショーくんのご主人様になった覚えはないんだから。ぼくの気に障る事ばかりしているのに、どうしてそんな風に嬉し気に呼ぶの?」
「……わたしはご主人様に喜んでいただきたいです。どうすればいいですか……?どうすれば、ご主人様に許してもらえるでしょう?」
「どうしてもぼくの役に立ちたいのなら、泥棒が入らないように、表で番犬のように首輪でも着けて立っていれば?」

あっくんは視線も上げず、冷ややかに言い放った。
アンドロイドの顔を見たくはなかった。

「ご主人様、そうすれば許してくださるのですか?それがお望みでしたら、今夜からわたしは庭で休みます……」
「好きにして」
「あの……それでは、お休み前にわたしのシャットダウンをしてください……休まないと、今後、正常に起動できなくなってしまいます」

あっくんは、何度も音羽に抱きしめられて、シャットダウンさせてもらったことを思い出した。
音羽は、あっくんを抱きしめて耳元で囁く。
幸せな幸せな思い出……

「愛している……」

それが音羽の兄、音矢の作った全てのアンドロイドのシャットダウンの方法だった。
音矢はすべてのアンドロイドが、持ち主の腕の中で幸せになるようにと、願いを込めてそんな方法を思いつたらしい。
だけど、自分がしてもらったように、アンドロイドを優しく抱きしめて眠らせてやることが、今夜のあっくんには、どうしてもできなまかった。

「いや。ショーくんのシャットダウンなんて、知らない」
「お待ちください、ご主人様……!」

立ち尽くすアンドロイドSⅤの目の前で、あっくんは冷たくドアを閉め鍵を掛けた。
夜半から降り続いた雨は、明け方まで降り続いた。
陶器のような滑らかな肌に、みぞれ交じりの雨が流れてゆく。
まるであっくんと心が通わないのを嘆く、哀れなアンドロイドの涙のようだった。

機械のアンドロイドの心が傷ついたかどうかは分からないが、何をする気も起きず、あっくんはそのままダウンケットにくるまって、ソファに転がった。
何度も寝返りを打ち、浅い眠りしか得られなかったあっくんが、物音に目覚め、寝室の扉を開けた時、そこには信じられない光景が待っていた。

「音羽……帰っていたの……?」

キングサイズの二人のベッドに、仕事から帰った音羽が白衣のまま倒れるようにして眠り込んでいるのは、いつもの事だった。
そして、その傍らにあっくんの白いバスローブを着て横たわるアンドロイドの姿があった。

「……嘘……」




本日もお読みいただきありがとうございます。
あっくんを襲う嵐の予感……(´・ω・`)


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