アンドロイドSⅤは挑発する 12
残念ながら音羽は、相変わらずあっくんの一途な恋心に、ものすご~く疎い朴念仁なので、今一つ悲しみを理解できていない。
あっくんの心は、今や嵐の海に浮かぶ木の葉の船のように、港を見失って危うく揺れ続けていた。
「雨に濡れた子犬を温めるようにしたのかもしれないけれど、音羽はどれほどぼくが……音羽を大事に思っているか考えていない。ぼくたちのベッドに、アンドロイドが寝ているなんてあんまりだよ……許せない……」
「あっくん……傍に居ただけだよ。僕はただ、雨に打たれたこの子が哀れで放っておけなかっただけだ。君の考えるようなことは何もないよ」
音矢は、そっとあっくんの横に腰を下ろすと肩を抱いた。
「あっくんはどうしたいの?怒らないから言ってごらん?」
「ぼくは……音羽と二人だけの暮らしに戻りたい……お手伝いロボットなんて、欲しくない……何も要らない。二人がいい……音矢に返して……」
「あっくん」
濃い翠の瞳が思い詰めて、しとどに濡れていた。
元々、あっくんを楽にさせるために、お手伝いロボットのモニターを引き受けただけだった。
こんな風に、傷付けるつもりなどなかった。
音羽は傷付いた恋人を、懐に深く抱きしめた。
両手を頬に当て、顔を覗き込んだ。
「もう少し良く考えてから決めればよかったね。君をこんな風に傷つけるつもりなどなかったのに。大丈夫。世界の終わりに、僕の隣にいるのはあっくんだけだ。泣かないで」
長いまつげにそっと唇を寄せて、王子は蜂蜜色の豊かな髪を持つ王女に、誓いのキスをした。
「音矢に電話をするよ。モニターの件は白紙にしてくれって言おう」
「本当……?」
「勿論。君がこんなに思い詰めているなんて思わなかったんだ。いつも、気が付かなくてごめんね。誰よりもあっくんが一番好きだよ。愛している……」
「音羽……くすん……」
あっくんの白いコートが床に滑り落ち、衣擦れの音をさせて、忙しなく二人が愛を確かめあおうとした時、ぶ~んという微かな機械音をさせて、アンドロイドが起動した。
「おはようございます。ご主人様。よく眠れましたか?」
「……最悪」
黒髪のお手伝いロボットは、するりとバスローブを脱ぎ捨てて、音羽とあっくんの傍に近づいてきた。
股間に揺れるまだ幼いセクスが、ふるりと勃ちあがっていて、思わず二人は顔を見合わせた。
「どうして、そこがそんな風になっているの?」
「わたしは健全な14歳の少年を基本に設計されています。ですから、これは俗に言う朝立ちだと思います」
アンドロイドのショーくんは、頬を染めた。
「兄貴の奴、これ以上、余計な機能を付けるなって言わないとな」
「ショーくん、あの……昨日は優しくできなくて、ごめんなさい」
「ご主人様……いいえ。わたしが悪いのです。ご主人様を悲しませてしまいました。これから、朝食の準備をいたします」
「あの……ショーくん。服を着て?」
アンドロイドは、毅然と答えた。
「わたしは、いつもご主人様の望み通りにします」
「ぼくの望み?」
「ご主人様は、家の中に泥棒が入らないように、表で番犬として働く様にとおっしゃいました。首輪をつけて」
「首輪?あっくん……?そんなことを言ったの?」
「こ、言葉のあやだよ。本気でそんなことを言うわけないじゃない。わからないの?」
「言葉の……あや?」
「冗談ってこと!」
慌てて否定したが、確かに夕べあっくんはそう口にしていた。
アンドロイドが来て以来、落ち着かない毎日を過ごしていたあっくんは、どうしようもなくなって仕事に逃避した。
「あ~……そうそう、忘れてた。今日は、撮影が朝早くからだったんだ。時間がないから、もう行かなきゃ……」
「ご主人様。朝食を召し上がってください。スケジュールが変更になったとは聞いておりません」
「さっき決まったの!じゃあ、急ぐから。行ってきます~」
何も身につけようとしないショーくんが責めているような気がして、あっくんは音羽とキスもしないでその場から逃避した。
本日もお読みいただきありがとうございます。
(つд・`。)・゚←あっくん、逃亡~
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あっくんの心は、今や嵐の海に浮かぶ木の葉の船のように、港を見失って危うく揺れ続けていた。
「雨に濡れた子犬を温めるようにしたのかもしれないけれど、音羽はどれほどぼくが……音羽を大事に思っているか考えていない。ぼくたちのベッドに、アンドロイドが寝ているなんてあんまりだよ……許せない……」
「あっくん……傍に居ただけだよ。僕はただ、雨に打たれたこの子が哀れで放っておけなかっただけだ。君の考えるようなことは何もないよ」
音矢は、そっとあっくんの横に腰を下ろすと肩を抱いた。
「あっくんはどうしたいの?怒らないから言ってごらん?」
「ぼくは……音羽と二人だけの暮らしに戻りたい……お手伝いロボットなんて、欲しくない……何も要らない。二人がいい……音矢に返して……」
「あっくん」
濃い翠の瞳が思い詰めて、しとどに濡れていた。
元々、あっくんを楽にさせるために、お手伝いロボットのモニターを引き受けただけだった。
こんな風に、傷付けるつもりなどなかった。
音羽は傷付いた恋人を、懐に深く抱きしめた。
両手を頬に当て、顔を覗き込んだ。
「もう少し良く考えてから決めればよかったね。君をこんな風に傷つけるつもりなどなかったのに。大丈夫。世界の終わりに、僕の隣にいるのはあっくんだけだ。泣かないで」
長いまつげにそっと唇を寄せて、王子は蜂蜜色の豊かな髪を持つ王女に、誓いのキスをした。
「音矢に電話をするよ。モニターの件は白紙にしてくれって言おう」
「本当……?」
「勿論。君がこんなに思い詰めているなんて思わなかったんだ。いつも、気が付かなくてごめんね。誰よりもあっくんが一番好きだよ。愛している……」
「音羽……くすん……」
あっくんの白いコートが床に滑り落ち、衣擦れの音をさせて、忙しなく二人が愛を確かめあおうとした時、ぶ~んという微かな機械音をさせて、アンドロイドが起動した。
「おはようございます。ご主人様。よく眠れましたか?」
「……最悪」
黒髪のお手伝いロボットは、するりとバスローブを脱ぎ捨てて、音羽とあっくんの傍に近づいてきた。
股間に揺れるまだ幼いセクスが、ふるりと勃ちあがっていて、思わず二人は顔を見合わせた。
「どうして、そこがそんな風になっているの?」
「わたしは健全な14歳の少年を基本に設計されています。ですから、これは俗に言う朝立ちだと思います」
アンドロイドのショーくんは、頬を染めた。
「兄貴の奴、これ以上、余計な機能を付けるなって言わないとな」
「ショーくん、あの……昨日は優しくできなくて、ごめんなさい」
「ご主人様……いいえ。わたしが悪いのです。ご主人様を悲しませてしまいました。これから、朝食の準備をいたします」
「あの……ショーくん。服を着て?」
アンドロイドは、毅然と答えた。
「わたしは、いつもご主人様の望み通りにします」
「ぼくの望み?」
「ご主人様は、家の中に泥棒が入らないように、表で番犬として働く様にとおっしゃいました。首輪をつけて」
「首輪?あっくん……?そんなことを言ったの?」
「こ、言葉のあやだよ。本気でそんなことを言うわけないじゃない。わからないの?」
「言葉の……あや?」
「冗談ってこと!」
慌てて否定したが、確かに夕べあっくんはそう口にしていた。
アンドロイドが来て以来、落ち着かない毎日を過ごしていたあっくんは、どうしようもなくなって仕事に逃避した。
「あ~……そうそう、忘れてた。今日は、撮影が朝早くからだったんだ。時間がないから、もう行かなきゃ……」
「ご主人様。朝食を召し上がってください。スケジュールが変更になったとは聞いておりません」
「さっき決まったの!じゃあ、急ぐから。行ってきます~」
何も身につけようとしないショーくんが責めているような気がして、あっくんは音羽とキスもしないでその場から逃避した。
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