小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・25
「ぼくがその荷物持つからさ、叔父さん、みぃくんを抱くかおんぶする?」
自転車を転がす洸を、みぃくんはじっと見つめていた。
「それか、みぃくん。お兄ちゃんがおんぶしてやろうか?」
みぃの目が輝き、俺を伺うように見る。
年上の優しいお兄ちゃんに、みぃは興味深々だった。
「よぉし。みぃ、お兄ちゃんにおんぶして貰え。」
背中を向けた洸の上に、みぃをぽんと乗せるとうれしそうに声を立てて、みぃは笑った。
「きゃあっ・・・」
「走っちゃうぞ~~!お兄ちゃんは、新幹線より早いぞ~~!」
「それ~~!」
「きゃあ、パパ・・・」
みぃを背に乗せて走る洸の後を、はるかに遅れてゆっくりと自転車で追った。
在来線の改札口で、離れがたそうな背中の海広を受け取る。
「みぃくん。ほら、洸兄ちゃんに、何て言うのかな?」
「あ、ありがとぉ・・・」
消え入りそうな声だったが、洸はみぃくんの目線に降りて来て、笑顔でちゃんと応えてくれた。
お兄ちゃんらしく、みぃの頭にぽんぽんと優しく手を載せた。
「みぃくん、バイバイ。」
「またね。お兄ちゃん家に、いつでもおいでね。」
「朱里も、翔も待ってるから、いっぱい遊ぼうね。」
みぃくんはにっこり笑うと、洸に向かってひらひらと手を振り、片方の靴だけを履いて電車に乗った。
みぃにとって洸は、きっと格好のいい年上のお兄ちゃんとして目に映ったのだろう。
精一杯の笑顔を向けて、いつまでも嬉しそうに手を振っていた。
新幹線に乗り換えて帰宅した時、時間はもう10時半を回っていた。
貰ってきたハンバーグを半分眠りながらも沢山食べて、みぃはご機嫌だった。
おすそ分けをしようと隣の部屋を覗いたが、成瀬はいない。
編集作業は違うオフィスでするらしいので、おそらく今頃は夜通しの編集作業なのだろう。
そういえば、成瀬に聞いておきたいことが多くある。
みぃくんに関して、必要な情報を貰っていなかったのに、今更ながらに気がついた。
入院中の母親の事、生きているのか死んでいるのか気配すら見えない、血のつながった父親の事。
親権の話がどうなるのか、養子の話は誰と進めるべきなのかややこしい話は山積みだった。
市役所に行き、これから通う学校の話もしなければならない。
戸籍の確認も、必要だ。
だがその夜遅くに、事態は急展開を迎える。
成瀬から切羽詰った勢いで、電話があったのだ。
医師と看護師が慌しく出入りしていた。
みぃくんの運命の歯車が動き始めます。
大好きなパパと、一緒に暮らし始めたのも束の間、哀しい別れがみぃくんを襲います。
いつもお読みいただきありがとうございます。此花
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自転車を転がす洸を、みぃくんはじっと見つめていた。
「それか、みぃくん。お兄ちゃんがおんぶしてやろうか?」
みぃの目が輝き、俺を伺うように見る。
年上の優しいお兄ちゃんに、みぃは興味深々だった。
「よぉし。みぃ、お兄ちゃんにおんぶして貰え。」
背中を向けた洸の上に、みぃをぽんと乗せるとうれしそうに声を立てて、みぃは笑った。
「きゃあっ・・・」
「走っちゃうぞ~~!お兄ちゃんは、新幹線より早いぞ~~!」
「それ~~!」
「きゃあ、パパ・・・」
みぃを背に乗せて走る洸の後を、はるかに遅れてゆっくりと自転車で追った。
在来線の改札口で、離れがたそうな背中の海広を受け取る。
「みぃくん。ほら、洸兄ちゃんに、何て言うのかな?」
「あ、ありがとぉ・・・」
消え入りそうな声だったが、洸はみぃくんの目線に降りて来て、笑顔でちゃんと応えてくれた。
お兄ちゃんらしく、みぃの頭にぽんぽんと優しく手を載せた。
「みぃくん、バイバイ。」
「またね。お兄ちゃん家に、いつでもおいでね。」
「朱里も、翔も待ってるから、いっぱい遊ぼうね。」
みぃくんはにっこり笑うと、洸に向かってひらひらと手を振り、片方の靴だけを履いて電車に乗った。
みぃにとって洸は、きっと格好のいい年上のお兄ちゃんとして目に映ったのだろう。
精一杯の笑顔を向けて、いつまでも嬉しそうに手を振っていた。
新幹線に乗り換えて帰宅した時、時間はもう10時半を回っていた。
貰ってきたハンバーグを半分眠りながらも沢山食べて、みぃはご機嫌だった。
おすそ分けをしようと隣の部屋を覗いたが、成瀬はいない。
編集作業は違うオフィスでするらしいので、おそらく今頃は夜通しの編集作業なのだろう。
そういえば、成瀬に聞いておきたいことが多くある。
みぃくんに関して、必要な情報を貰っていなかったのに、今更ながらに気がついた。
入院中の母親の事、生きているのか死んでいるのか気配すら見えない、血のつながった父親の事。
親権の話がどうなるのか、養子の話は誰と進めるべきなのかややこしい話は山積みだった。
市役所に行き、これから通う学校の話もしなければならない。
戸籍の確認も、必要だ。
だがその夜遅くに、事態は急展開を迎える。
成瀬から切羽詰った勢いで、電話があったのだ。
医師と看護師が慌しく出入りしていた。
みぃくんの運命の歯車が動き始めます。
大好きなパパと、一緒に暮らし始めたのも束の間、哀しい別れがみぃくんを襲います。
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