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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・22 

「みぃく~ん。ほら、これ見てみな、格好いいよ。」

「みぃくんは、こっち。」

「パパは、これ好きだけどな。」

「ん~?」

俺が好きだと言うと、側に寄ってきた。

「パパ、これ好き?」

「うん、好き。だから、みぃくんのはいた所、見たいな。」

みぃは黙って、子供用のブリーフに細い足を通した。
後で聞いたら、当時のみぃは、相当無理して俺の期待に応えようとしていたらしい。

「だってパパが、大好きだったから。」

その時は何も、気付いてやれなかったけれど・・・。
とにかく、何とか格好だけは男の子に見えるように、青い服を着せた。
俄然、男の子らしくなったみぃを連れて、俺は兄夫婦に見せるために連れ出した。

「こんな見た目だけ取り繕ったって、駄目だと思うけどなぁ。」

金髪の成瀬が、みぃくんのポロシャツのボタンをはめた。

「大丈夫だよ。慣れればきっと、こっちの方が良くなると思うよ。」

生まれ持った資質や、性癖があることを、息子を得て有頂天に浮かれていた俺は、頭から失念していた。
失った息子の代用品だと思ったりはしなかったが、普通から外れかけてたみぃを、常識の枠にはめようと必死になっていたかもしれない。
この時感じた小さな違和感が、はっきりとした形になるのはもっとずっと後の事だ。
うんと可哀想な目に、あわせてしまうのだ。

「いらっしゃい。はじめまして。」

義姉が出迎えてくれたのを、みぃは俺の後ろから緊張の面持ちで見つめていた。
きゅと握った手に、力が入ったのが分かる。

「この子が、話していた子どもで、沢口海広って言うんだ。」

「みぃくん、こんにちわして。」

みぃは黙って、そっと頭を下げた。

「あら、ずいぶん可愛らしい子ね。こんにちわ。」

つないだ腕が棒のように、強張っていた。
普段、自然児のように振舞うみぃくんと、今日は明らかに違っていた。
兄貴の子ども達は、小学4年生、6年生、中学1年生の男ばかりだ。
親戚の叔父さんが新しい従兄弟を連れてくるというので、皆、興味深々で待っていた。

「こっちに、おいでよ。」

ドアの向こうから、中学生の洸(こう)が手招きをする。

「お名前、なんていうのかな?」

人懐っこい4年生の翔(しょう)が手を引っ張った。

「お兄ちゃんが、遊んでくれるってさ。行っておいで。」

みぃはお兄ちゃんに手を引かれ、俺の顔を何度も見やりながら、渋々客間を出て行った。
何とか、なりそうだ・・・と、内心ほっとした。
・・・のも束の間、すぐに子ども達が俺を呼ぶ。

「叔父さん、ごめん。あの子、泣かせちゃった。」

俺を呼びにきたのは、真ん中の朱里(しゅり)だった。

「どうしよう、俺たち、名前聞いただけなんだけど、ひどく泣いちゃって・・・・」

海広は、名前を聞かれ小さく「みぃくん」とだけ答えたらしい。





子どもって、意外に残酷だったりします。
全てに嘘がないから。
子供達とみぃくんは、この後いい従兄弟関係を作って行きます。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
拍手も嬉しいです。
よろしくお願いいたします。  此花

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