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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・23 

「違うよ。」

「そうじゃなくてさ、ちゃんとしたフルネームだよ。」

「愁都は、松原愁都ですって、ちゃんとお利口に言えたけどなぁ。」

「言えないの?」

「同じ年なんだろ?愁都と。」

「しゅうと?」

子供達は、顔を見合わせたが嘘はつかなかった。

「周二叔父さんの、火事で亡くなった子どもだよ。」

「知らないの?愁都のこと。」

問われて頷いたみぃくんに、知らない話は次々と出てきたらしい。
そして、三人から質問攻めにあった。

「みぃくんは、愁都の代わりに、どこからか貰われて来たの?」

「前の苗字はなんていうの?」

「どこの学校に行くの?」

「お母さんは、いないの?」

子どもらしい好奇心だったのだろうが、たくさんの「何故」にみぃの頭はいっぱいになってしまったらしい。
決してそんなつもりはなかったのだが、顔も知らない愁都の身代わりという話はショックだったと思う。
子どもなりに何かを悟ってしまった、と言う事だろう。
そして、泣いてしまったのだ。
しょんぼりとうつむいてしまった、みぃくんにそっと声をかける。

「みぃくん、大丈夫?」

「もう涙は、止まったかな?」

「パパ・・・」

泣くのを我慢しているのか、お兄ちゃん達がいるからなのか、だっこをせがむのを我慢しているらしいみぃくんの目もとがじんわりと赤い。

「もう、おうちに帰ろうか。」

「おいで。」

抱き上げると、やっといつもどおり首にかき付いて来た。
静かに、涙がこぼれていた。
まだ、ここにつれてくるのは早かったかな、とごちた。
人に馴れていないのか、みぃくんは緊張しっぱなしだった。
義姉がせっかくお夕飯出来たのにと、残念そうだったが、箸の使い方がおぼつかないみぃくんを思って、貰って帰ることにした。

「叔母さんの、ハンバーグおいしいのよ、お兄ちゃん達も大好きなの。」

「みぃくんが、食べてくれたら叔母さん、うれしいな。」

俺の首にかき付いたまま、みぃは義姉に泣きぬれた顔だけを向けた。

「はんばーぐ?」

「ええ、チーズの入ったハンバーグ。みぃくんは、好き?」

「みぃくん。はんばーぐ・・・好き。」

泣き笑いのみぃくんが可愛いといって、義姉はずいぶんと嬉しそうだった。
その場に下ろすと、覗いていた翔が寄ってきた。

「みぃくん。さっきは、泣かせちゃってごめんね。」

「あのね、今度来た時は、一緒にゲームしようね。」

年下のみぃを泣かせてしまったのが、気にかかっていたらしかった。




みぃくんが可愛いので、困ってしまいます。
色々大変なことが起こって、すこしずつ大人になってゆきます。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
煮込みハンバーグが好きです。(うわ~、どうでもいい情報だった・・・) 此花
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