青になれ・7
怪我をさせられる寸前、助けてくれただけなのに、罰を受けたのは仙道直人だけだった。
学校創設者の孫と、その取り巻きには、何のお咎めもなしだった。
ボクシングをしているという理由で、暴力行為と決め付けられ、陸上部の先輩たちは卑怯にも医師の診断書を学校に提出した。
彼らには何の処分も下らず、その後、仙道直人は国体出場も辞退をやむなくされる。
淳也は理不尽に身悶えしながら、耐えた。
自分よりも悔しいのは、仙道直人だと思ったから我慢できた。
「行くぞ!」
手を上げて挨拶を交わすだけだったのだが、今は肩を並べて軽やかに走る。
弱冠一年生で抜擢されて淳也は好成績を残し、リレーメンバーの三年生は、高校陸上で活躍したかどで皆有名大学への推薦が決まった。
淳也に執拗に絡んだ彼らは、三流大学へ行くしかない。
正直、少しは溜飲を下げた。
だが、すべてにけりがついたと思っていたが、それで終わりではなかった。
砂浜の上を走る影が長くなるころ、淳也は仙道の大学推薦入試の取り消しを知った。
きっと、誰かが済んだ話を蒸し返したのだ。
自分たちの進学が上手くいかなかった、腹いせに。
「どうして・・・どうして、仙道さんだけが・・・」
「知っちゃったのか。まあ、少しは残念だけど、これがすべてだというわけじゃないし。」
わざと明るく笑って見せた仙道に、沢木淳也の瞳が濡れた。
「な、何で・・・仙道さんは何も悪くないのに、どうして・・・大学推薦まで、取り消しだなんて。」
「何も、沢木が気にすることはないんだ。」
「で、でも・・・大学が・・・せっかく決まったって喜んでたのに・・・っ、いつも、ぼく・・・のせいっ・・・ぼくを助けたからっ・・・」
ふいに、こみ上げた嗚咽はごまかしきれなくて仙道を慌てさせた。
「わ~・・・淳也!俺は大丈夫だから、泣くなって。」
「う~・・・っ、うっ・・・仙道、さん・・・」
困り果てた仙道直人は、しがみ付いて泣く後輩をしばらくそのままに腕の中に置いた。
そっと背中に、大きな手が回るのを感じた。
抱きしめられている・・・
なぜか、不愉快ではなかった。
むしろ、仙道には、あの日からずっとこうして欲しかった気がする。
淳也の鼓動は、300メートルを何度も全力でダッシュしたときよりも、早かった。
もう直ぐ55555htです。
お知らせするの遅くなってすみません。どうぞ、おっしゃってください。
此花、喜びます。(*⌒―⌒*) にこっ♪
何か、安心しきって懐の中にいる構図がとても好きです。
体温を感じるだけで安心するところは、隼ちゃんも一緒です。
いつもお読みいただきありがとうございます。
ほんのりで物足りないけど、これもありと思っていただければ嬉しいです。
拍手もポチもありがとうございます。きゅんきゅん。 此花
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(pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。パパってばここどまりみたいです。
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