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青になれ・5 

BL観潮楼秋企画【青になれ・5】

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沢木淳也(さわき じゅんや)


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                                   仙道直人(せんどうなおと)
薄闇の中、必死に逃れようとあがいた。

「うーーーっ!!」

淳也は、無茶苦茶に暴れて、やっと自分を押さえつけていた先輩を振り切った。

枷が取れて、加勢しなければと思ったら、ぱたりと横合いに泡を吹いた先輩が倒れこんできた。

「これは、こいつの名誉毀損の分だ。で、俺の分は誰がもらってくれる?」

「な・・・っ!こっちのほうが、多いんだ。やっちまえっ!」

誰かが出した陳腐な号令に、卑怯なやつらはいっせいに飛び掛った。

だが、驚くほど俊敏に仙道と呼ばれた彼は、すべての繰り出された腕をことごとくかいくぐり、的確に一発ずつで相手を沈めてゆく。

小気味のいい、さすがの動体視力。
ボクシング部は伊達じゃない。

「すごい・・・。」

淳也は目を見張っていた。

「大人気ないまねは、やめようぜ。みっともない。」
「お前らも、こいつの努力認めて応援してやれよ。一応先輩なんだろ?」

息も切らさず瞬く間に仕留めて、彼は初めて微笑んだ。
安堵した瞬間、ふいに喉元に熱いものがこみ上げた。

「・・・うっ・・・うっ・・・」

「おい、大丈夫か?」
「どこか、やられた?」

人前で泣くのは、物心ついてから初めてのような気がする。
淳也の濡れた顔を覗き込んで、心配そうに彼が聞いた。

「だ・・・だいじょ・・・ぶ・・・です。ちょっと、気が抜けただけ、です。」

囚われのお姫さまみたいに、助けられて悔しかった。
精一杯我を張って、涙がこぼれないように上を向いた。

「おまえの走りさ、伸びた足が綺麗だよなあ。俺、いつも感心して眺めてたんだ、ほら。アフリカの草食動物だっけ?・・・ガゼルとかインパラとかみたいに、走る姿勢がすっげぇ綺麗なんだよな。」

「・・・あ。肉食獣に食われそうになるところまで、そっくりだったな。」

「助けていただいて、あ・・・りがとうございました。」

やっと止まりかけた涙に、そっと指が伸びて滴を払った。
這いつくばった先輩が、よろよろと立ち上がる。

「ただじゃすまさねぇ・・・。覚えてろよ、てめぇら、絶対吠え面かかせてやる。」

「自分たちのやったことを、胸に手を当てて考えてみろ。俺には恥ずべきことはないね。」

だが・・・

信じられないことに、数日後、処分を受けたのは助けてくれた「仙道直人」の方だった。
何で、そういうことになるんだ。

「うそだ。」

掲示板の前で、淳也は呆然としていた。






沢木くんは、これからどうするのでしょう。
世の中には理不尽なことがいっぱいです。
ノンケだから話が進みません・・・←人のせいにしています。(汗)

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観潮楼さま秋企画
こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。本当に綺麗お子さまです~、きゅんきゅん。
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