青になれ・4
BL観潮楼秋企画【青になれ・4】
仙道直人(せんどうなおと)
ざっと数人が、周囲を取り囲んだ。
誰かを挑発すれば、こうなるとは薄々分かっていたのに、頭に血が上った短気をわれながら反省した。
「すみません・・・言い過ぎました。」
「言い過ぎた~?で済むのかよ。ちゃんと詫びろよ。」
多勢に無勢で、詰め寄られた淳也はどっと砂浜に押し倒された。
夕暮れ時分は、犬の散歩をする人にもたまに出くわすが、そんな時間はとうに過ぎていた。
密室ではないが、辺りに誰もいないのが不安だった。
「あっ・・・!」
「頭、下げろよ。」
「ほら、悪いと思ってるなら、きちんと下げろ。」
足を払われ、砂にじゃりと顔を押し付けられた。
ショートパンツから伸びた薄い筋肉の乗った足が、もがくように跳ねた。
足に押しつけられた、金属のひんやりとした感覚が、背筋をぞっとさせた。
「・・・練習中の事故なら、仕方ないよな~。アキレスにするか?」
「じょ・・・冗談・・・っ、やめろっ・・・」
「前から気に食わなかったんだ。すかした面しやがって。」
「一回挫折してみろよ、そうしたら、俺らの傷ついた気持ちも分かるんじゃね~?」
「片方だけにしてやるから、ありがたく思え。ちゃんと押さえてろ!」
「うっわ~、こいつの足、つるっつるっで女みてぇ。」
「やっ、やめろっ、放せよっ!」
「いやだーーーっ!あーーーっ・・・」
と、叫んだ声は脱がされ突っ込まれた練習着が、吸った。
振りかぶったバットが、足に振り下ろされる絶対絶命・・・のその時、たったっ・・・と小気味よい足音が聞こえた。
淳也は、その足音の持ち主を知っていた。
「おいっ、何やってんだ?・・・一年だろ、そいつ。」
薄暗くなった砂浜で、理不尽に数人がかりで襲われて、淳也はほとんど半裸といってもいいような格好で転がっていた。
練習着を口に突っ込まれ、ショートパンツは半分脱げかけ、スパイクもとられてひどい有様だった。
拘束された真っ白な肢体が、夜目に光っているようだ。
馬乗りになって両手を押さえたやつが、低い声で告げた。
「行けよ。ボクシング部の仙道には関係ない。陸上部内のちょっとした揉め事でね。」
「可愛いやんちゃな後輩に、少し礼儀を教えてやっているだけだ。」
「行けったら!」
ちらと視線を落としたその人は、ずいと先輩の間に割って入った。
「なあ・・・礼儀ってのはこうやって何人もが押さえつけて、金属バットで教えるものなのか?」
「俺には、強姦寸前に見えるけどな。」
「うるさいな、さっさと失せろよ。おまえには関係ないだろっ!」
「毎日挨拶を交わすお友達っていうのは、助ける理由にならないか?」
「は・・・ん。お前も、こいつに色目使われたのか?やるなぁ、この淫乱。」
「ぼく、顧問だけじゃがまんできませ~ん。」
げらげらと笑いながら、むき出しの尻を叩かれ、そんな罵声を浴びた。
何も知らない彼に、そんな話を聞いて欲しくはなかった。
反論しようにも、口がふさがれていて言葉が出なかった。
こんなやつらが、同じ陸上部だと思うとたまらなかった。
心の中の綺麗なものが、ずかずかと土足で踏みにじられている気がした。
拘束されたまま、悔し涙だけが滂沱と頬を伝った。
何の理由もないままに、ただ八つ当たりのように理不尽に襲われて、可哀想に沢木淳也くんは泣いてしまいました。
襲われている所に助けに来るのは、ある意味王道のような気がします。白馬の王子様~徒歩~・・・
いつもお読みいただきありがとうございます。拍手もポチも励みになってます。
読んでるよ~と、言っていただけるようで嬉しいです。 此花
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
(pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。本当に綺麗お子さまです~、きゅんきゅん。
沢木淳也(さわき じゅんや)
仙道直人(せんどうなおと)
ざっと数人が、周囲を取り囲んだ。
誰かを挑発すれば、こうなるとは薄々分かっていたのに、頭に血が上った短気をわれながら反省した。
「すみません・・・言い過ぎました。」
「言い過ぎた~?で済むのかよ。ちゃんと詫びろよ。」
多勢に無勢で、詰め寄られた淳也はどっと砂浜に押し倒された。
夕暮れ時分は、犬の散歩をする人にもたまに出くわすが、そんな時間はとうに過ぎていた。
密室ではないが、辺りに誰もいないのが不安だった。
「あっ・・・!」
「頭、下げろよ。」
「ほら、悪いと思ってるなら、きちんと下げろ。」
足を払われ、砂にじゃりと顔を押し付けられた。
ショートパンツから伸びた薄い筋肉の乗った足が、もがくように跳ねた。
足に押しつけられた、金属のひんやりとした感覚が、背筋をぞっとさせた。
「・・・練習中の事故なら、仕方ないよな~。アキレスにするか?」
「じょ・・・冗談・・・っ、やめろっ・・・」
「前から気に食わなかったんだ。すかした面しやがって。」
「一回挫折してみろよ、そうしたら、俺らの傷ついた気持ちも分かるんじゃね~?」
「片方だけにしてやるから、ありがたく思え。ちゃんと押さえてろ!」
「うっわ~、こいつの足、つるっつるっで女みてぇ。」
「やっ、やめろっ、放せよっ!」
「いやだーーーっ!あーーーっ・・・」
と、叫んだ声は脱がされ突っ込まれた練習着が、吸った。
振りかぶったバットが、足に振り下ろされる絶対絶命・・・のその時、たったっ・・・と小気味よい足音が聞こえた。
淳也は、その足音の持ち主を知っていた。
「おいっ、何やってんだ?・・・一年だろ、そいつ。」
薄暗くなった砂浜で、理不尽に数人がかりで襲われて、淳也はほとんど半裸といってもいいような格好で転がっていた。
練習着を口に突っ込まれ、ショートパンツは半分脱げかけ、スパイクもとられてひどい有様だった。
拘束された真っ白な肢体が、夜目に光っているようだ。
馬乗りになって両手を押さえたやつが、低い声で告げた。
「行けよ。ボクシング部の仙道には関係ない。陸上部内のちょっとした揉め事でね。」
「可愛いやんちゃな後輩に、少し礼儀を教えてやっているだけだ。」
「行けったら!」
ちらと視線を落としたその人は、ずいと先輩の間に割って入った。
「なあ・・・礼儀ってのはこうやって何人もが押さえつけて、金属バットで教えるものなのか?」
「俺には、強姦寸前に見えるけどな。」
「うるさいな、さっさと失せろよ。おまえには関係ないだろっ!」
「毎日挨拶を交わすお友達っていうのは、助ける理由にならないか?」
「は・・・ん。お前も、こいつに色目使われたのか?やるなぁ、この淫乱。」
「ぼく、顧問だけじゃがまんできませ~ん。」
げらげらと笑いながら、むき出しの尻を叩かれ、そんな罵声を浴びた。
何も知らない彼に、そんな話を聞いて欲しくはなかった。
反論しようにも、口がふさがれていて言葉が出なかった。
こんなやつらが、同じ陸上部だと思うとたまらなかった。
心の中の綺麗なものが、ずかずかと土足で踏みにじられている気がした。
拘束されたまま、悔し涙だけが滂沱と頬を伝った。
何の理由もないままに、ただ八つ当たりのように理不尽に襲われて、可哀想に沢木淳也くんは泣いてしまいました。
襲われている所に助けに来るのは、ある意味王道のような気がします。白馬の王子様~徒歩~・・・
いつもお読みいただきありがとうございます。拍手もポチも励みになってます。
読んでるよ~と、言っていただけるようで嬉しいです。 此花
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(pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。本当に綺麗お子さまです~、きゅんきゅん。
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