青になれ・3
BL観潮楼秋企画【青になれ・3】
校庭練習を早めに切り上げ、いつものように砂浜を走っていた。
どうすれば速く走ることができるかを知るには、浜辺を走るのはもってこいの練習方法だ。
速く、速く、速く・・・空の青さに溶けるまで・・・
「あ、来た。」
淳也の砂浜練習はいつも一人なのだが、その日も向こうから走っている人影に気がついた。
いつも手にバンデージを巻いて、減量のためなのか、サウナスーツでずっと長い浜を走ってくる。
以前見たジャージが、同じ学校のものだったから、たぶん同じ高校なのだと思うが、校内であったことはなかった。
通り過ぎるとき、お互いが起こす風でかすかにシトラスの匂いがする。
いつの頃からか、毎日すれ違うたびいつしか手だけ上げて、挨拶するようになっていた。
目が合うと、なぜか鼓動がとくんと跳ねたが、その理由は淳也にはわからなかった。
浜に来る時間が早かったりすると、腰を低くして、たまにシャドーボクシングをしていた。
ボクシング部に、アマチュアボクシングで国体優勝候補がいるといっていたから、もしかすると彼なのかもしれない。
眺めていると視線が絡み、しなやかな動きに思わず見とれている自分に気がついて慌てて目をそらした。
まじまじと眺めたボクシング部の人は、どこか野生の黒豹を思わせる精悍なイメージだった。
言葉も交わさないが、向こうも休憩するときには砂浜に座って、淳也が淡々と走る練習風景をずっとみていた。
400メートルのリレーメンバーに選ばれたんだといったら、もしかすると喜んでくれたりするだろうか。
「まさか・・ね。」
「話したこともないのに・・・。」
顧問の指導方法の評価は、部内でも意見が割れていた。
先輩の中には一年生がメンバーに選ばれたことで、推薦入試がだめになるかも知れないと言って、頭を抱えたものも入るらしい。
直接顧問に考え直すように、頼みに行ったものもいたらしい。
確かに大きな大会に、出場している、していないの差は大きい。
有名大学への進学で人生が変わるといっても過言ではないから、その必死さにも理解はできる。
だが、気持ちはわかるが意地でも辞退はしない。
そんなことでだめになるような実力なら、例え推薦で入っても大学の厳しい陸上部で上手くいくわけがない・・・と思う。
淳也はそんな風にいつも潔癖で、融通が利かないのが常なのだ。
「いいよなぁ。かわいい顔をしているやつは、えこひいきされてさ。」
「どんな手を使ったんだか。」
顧問にリレーメンバーに入れてくれと頼みに行ったと噂の、先輩が砂浜にやってきて淳也をとんと、小突いた。
「たまたま、予選会で一度タイムが良かっただけで、そのまま選手に選ばれるなんて何かあるとしか思えないな。」
「普通は、トータルで見るだろうが。」
向けられた視線に、敵意が含まれているのを感じた。
これまでは、軽くからかっている程度だったのに何か、あったのだろうかと思ってしまう。
「ここで一人、特別な練習してるってのはどういうつもり?この後、どなたかと待ち合わせですか、お嬢ちゃん。」
「お嬢ちゃんには、何か、違うお願いの仕方でもあるのかな~。」
「どうやって、顧問を落としたのか俺にも教えろよ。」
ぐいと、練習着の胸元を引っ張られた。
「・・・ぼく。先生に何も頼んだりしていません!」
腕を振り払い、とうとう口を開いてしまった。
流してやりすごすつもりだったのに・・・。
顧問は経験は少ないが、スポーツで有名な高校に来て必死でメニューを組み立て、自分のプライベートな時間を削って懸命に部活動に力を入れていた。
顧問の練習メニューを、何も分かっていない素人の付け焼刃だと馬鹿にして、彼らは真面目に練習をしていない。
伸び盛りの後輩が、寝食を忘れて放課後暗くなるまでダッシュを繰り返していたころ、学外のハンバーガーショップにたむろしていたのだ。
自分たちのことは棚に上げて、何で絡むんだと腹が立った。
「先輩こそ、おかしいです。陸上ってタイムがすべてじゃないんですか?」
「なっ・・・」
「スポーツ推薦枠で有名大学に入れると思っているのは、創設者の孫という肩書きがあるからじゃないんですか?」
相手の顔色が変わった。
沢木淳也は、自分が地雷を踏んでしまったことにやっと気がついた。
沢木淳也くん、先輩に囲まれてピンチですっ!(^▽^)ノ←なぜに、笑顔・・・?
いつも拍手とポチをありがとうございます。
ぴんくのぞうさんの隼ちゃんのパパの、ほんのり甘い初恋の話です。
パパはノンケなので、はじめに言っておきます。BL的な意味で「ごめんなさい。」 此花
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
(pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。本当に綺麗お子さまです~、きゅんきゅん。
校庭練習を早めに切り上げ、いつものように砂浜を走っていた。
どうすれば速く走ることができるかを知るには、浜辺を走るのはもってこいの練習方法だ。
速く、速く、速く・・・空の青さに溶けるまで・・・
「あ、来た。」
淳也の砂浜練習はいつも一人なのだが、その日も向こうから走っている人影に気がついた。
いつも手にバンデージを巻いて、減量のためなのか、サウナスーツでずっと長い浜を走ってくる。
以前見たジャージが、同じ学校のものだったから、たぶん同じ高校なのだと思うが、校内であったことはなかった。
通り過ぎるとき、お互いが起こす風でかすかにシトラスの匂いがする。
いつの頃からか、毎日すれ違うたびいつしか手だけ上げて、挨拶するようになっていた。
目が合うと、なぜか鼓動がとくんと跳ねたが、その理由は淳也にはわからなかった。
浜に来る時間が早かったりすると、腰を低くして、たまにシャドーボクシングをしていた。
ボクシング部に、アマチュアボクシングで国体優勝候補がいるといっていたから、もしかすると彼なのかもしれない。
眺めていると視線が絡み、しなやかな動きに思わず見とれている自分に気がついて慌てて目をそらした。
まじまじと眺めたボクシング部の人は、どこか野生の黒豹を思わせる精悍なイメージだった。
言葉も交わさないが、向こうも休憩するときには砂浜に座って、淳也が淡々と走る練習風景をずっとみていた。
400メートルのリレーメンバーに選ばれたんだといったら、もしかすると喜んでくれたりするだろうか。
「まさか・・ね。」
「話したこともないのに・・・。」
顧問の指導方法の評価は、部内でも意見が割れていた。
先輩の中には一年生がメンバーに選ばれたことで、推薦入試がだめになるかも知れないと言って、頭を抱えたものも入るらしい。
直接顧問に考え直すように、頼みに行ったものもいたらしい。
確かに大きな大会に、出場している、していないの差は大きい。
有名大学への進学で人生が変わるといっても過言ではないから、その必死さにも理解はできる。
だが、気持ちはわかるが意地でも辞退はしない。
そんなことでだめになるような実力なら、例え推薦で入っても大学の厳しい陸上部で上手くいくわけがない・・・と思う。
淳也はそんな風にいつも潔癖で、融通が利かないのが常なのだ。
「いいよなぁ。かわいい顔をしているやつは、えこひいきされてさ。」
「どんな手を使ったんだか。」
顧問にリレーメンバーに入れてくれと頼みに行ったと噂の、先輩が砂浜にやってきて淳也をとんと、小突いた。
「たまたま、予選会で一度タイムが良かっただけで、そのまま選手に選ばれるなんて何かあるとしか思えないな。」
「普通は、トータルで見るだろうが。」
向けられた視線に、敵意が含まれているのを感じた。
これまでは、軽くからかっている程度だったのに何か、あったのだろうかと思ってしまう。
「ここで一人、特別な練習してるってのはどういうつもり?この後、どなたかと待ち合わせですか、お嬢ちゃん。」
「お嬢ちゃんには、何か、違うお願いの仕方でもあるのかな~。」
「どうやって、顧問を落としたのか俺にも教えろよ。」
ぐいと、練習着の胸元を引っ張られた。
「・・・ぼく。先生に何も頼んだりしていません!」
腕を振り払い、とうとう口を開いてしまった。
流してやりすごすつもりだったのに・・・。
顧問は経験は少ないが、スポーツで有名な高校に来て必死でメニューを組み立て、自分のプライベートな時間を削って懸命に部活動に力を入れていた。
顧問の練習メニューを、何も分かっていない素人の付け焼刃だと馬鹿にして、彼らは真面目に練習をしていない。
伸び盛りの後輩が、寝食を忘れて放課後暗くなるまでダッシュを繰り返していたころ、学外のハンバーガーショップにたむろしていたのだ。
自分たちのことは棚に上げて、何で絡むんだと腹が立った。
「先輩こそ、おかしいです。陸上ってタイムがすべてじゃないんですか?」
「なっ・・・」
「スポーツ推薦枠で有名大学に入れると思っているのは、創設者の孫という肩書きがあるからじゃないんですか?」
相手の顔色が変わった。
沢木淳也は、自分が地雷を踏んでしまったことにやっと気がついた。
沢木淳也くん、先輩に囲まれてピンチですっ!(^▽^)ノ←なぜに、笑顔・・・?
いつも拍手とポチをありがとうございます。
ぴんくのぞうさんの隼ちゃんのパパの、ほんのり甘い初恋の話です。
パパはノンケなので、はじめに言っておきます。BL的な意味で「ごめんなさい。」 此花
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(pioさま超絶美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。本当に綺麗お子さまです~、きゅんきゅん。
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