新しいパパができました・29(★)
1度、ぷつりと突き入れてしまえば、温みを持って巻き込むように俺を迎える。
無音の詩鶴に、何度も何度も腰を打ち付けえぐるように穿った。
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纏わりつく熱いぬるみに抜き差しする度、背筋を肌が泡立つほどの凄まじい快感が走り抜ける。
初めてのセクスと、詩鶴の後ろの感触に俺は夢中になり溺れていた。
その時、俺はまだ男同士のセクスの意味が今ひとつ分からず、詩鶴が感じれば後孔が自然と潤み、俺を受け入れる状態になると信じて疑わなかった。
いくら詩鶴が周囲の女の子よりはるかに綺麗でも、そんな都合よく性別をも凌駕するような身体になるわけがない。
なのに、俺の脳内では、おっぱいの零れそうなおねえさんと詩鶴が入れ替わり、大きく足を広げて俺を嬉々と迎え入れ腰を振っていた。
「詩鶴の中、すげぇ感じる。も一回・・・出そうなんだけど・・・中に出してもいい?」
耳元で囁いても力なく布団カバーを握った詩鶴は、ずっと同じ方を向いたきり、身じろぎもしなかった。
まるで雨の日の路上で車に轢かれたカエルのように。
「し、詩鶴、何か言えよ?いいのか、出すぞ。」
「詩鶴・・・?」
不安に駈られて、目一杯手を伸ばし、ベッドサイドのランプを点ける。
俺は音を立てて、自分の血が下がるのを体感した。
「うわっ!詩鶴――!」
下半身を薄い朱色に染めた詩鶴が、放り投げられた人形のように意識を失っていた。
自分から流れた血と俺の放った白い液体が混じって、へそから下は酷いありさまだった。
無知な俺は、余りに事を急くあまり、十分な準備をする暇を与えず詩鶴を酷い目に遭わせていたのだ。
「どうしよう・・・詩鶴!詩鶴・・っ!」
軽く頬を張ったが、身じろぎもしない。
慌てふためいた俺は、少ない脳みそを総動員した。
とにかくっ!
俺の暴れん棒を引き抜いて、身体を綺麗にして、出血場所を確認しなければ。
素っ裸で階下に走り、必死にミネラルウォーターと濡れタオルをもって、忠実な番犬のように傍らに駆け戻ってきた。
半勃ちの分身を、なだめる暇もなく。
「ごめん、詩鶴。俺、何も知らないくせに、自分だけ気持ち良くなって、酷い事した・・・。」
一気に萎えた自分の分身をタオルで拭くと、詩鶴の血と精液がべっとりと付いた。
俺は愕然と、血に染まったタオルを見つめた。
「バカだ、俺。詩鶴は、何度も待ってって言ったのに。ごめん・・・」
汚れた身体を拭ってやろうと、身体に温かい濡れタオルを当てたら、詩鶴はふっと気がついて、血の気のない真白い顔を向けて何とか笑顔を作った。
きっとすごく辛かったのだろうに、詩鶴は俺に笑ってくれて、その泣き笑いに俺は泣けた。
「柾くん・・・、真っ青だ。」
「ごめん。・・・痛む?」
「大丈夫。ちょっと切れただけだと思うから。後で、お薬塗っておくね。そのお水、くれる?」
水を欲しがる詩鶴に、口移しで何度も少しずつ飲ませた。
元気そうにはしていたが、半身を起こすのに時間がかかり、すごくだるそうだった。
開いたまま動かさない下肢に、ふと気がつく。
動かさない・・・んじゃなくて、動かせないのか?
強引に俺がこじ開けてしまったから、まさか股関節脱臼とかしてしまった・・・?
「詩鶴、あの・・・病院にいく?」
病院で何ていうんだ。
俺が乱暴して傷を負わせました・・・とは、言えないよなぁ・・・
心配でたまらず、横抱きにしてそこを覗き込もうとしたら、詩鶴は見ないでと、俺の肩を押して見せないようにした。
「平気、だよ。こんなこと、初めてじゃないし。少し休んでゆっくり動けば、大丈夫。」
蓮っ葉な美貌の遮那王が、恐ろしい事を平気で言う・・・。
遮那王も、寺小姓として入った蔵馬の山で、こんな目にあっただろうか。
天下の平家に刃向かった武将の遺児、遮那王。
清浄な美童が、荒くれ法師の腕の中で引き裂かれ、慟哭しているのが見える気がした。
事も無げに何でもない風に、さらりという詩鶴はもうすっかりあきらめて運命を受け入れたと言う事なのか・・・
「初めてじゃないって・・・。こんな目に前にも遭ったことがあるのか?」
「それって、母ちゃんが詩鶴を見つけた、心が壊れそうだった時のこと?」
詩鶴は思いつめた顔で、ためらいもなく頷いた。
「ん。すごく・・・。ずっと、辛かった。愛されていたなら我慢も出来たかもしれないけど。死んでしまった誰かの代わりにされてるって、哀しいよ。」
「柾くん。親族に存在を否定される辛さってね、今ある命の全否定なんだ。そこにいるのに見てもらえない・・・無関心って、すごく・・・こたえるんだよ。」
あんな大きな病院の跡継ぎで、勉強も出来て何でも持っているのに、詩鶴は本当は何も持ってはいなかった。
雪の野原で、星の降らせる金貨を待っている可哀想な少年がそこにいた。
大きな目に、溢れそうになるほど涙を浮かべて、両手を広げて空を仰いでいた。
神さま。
着る服も、飾る宝石も、何もいりません。
・・・愛してください。
「生まれてこなきゃ良かったのにって、ずっと思ってた・・・。柾くんと亜由美さんだけが、「詩鶴」って名のぼくを認めてくれたんだよ。」
ぱたぱたと滂沱となって溢れる涙を、詩鶴は拭わなかった。
俺は今度こそ、そうっと生まれたての卵を扱うように柔らかく詩鶴を抱きしめた。
初めて会ったときから泣き虫の詩鶴は、今度こそ俺の胸で溶けるように泣いた。
泣け、詩鶴。
これからは、俺が傍にいるから。
絶対、独りにしないと誓うから。
腕の中で泣きじゃくる詩鶴が、大切な存在だった。
俺は、生まれて初めて、人を愛おしいと思った。
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昨夜は、下書きをうっかりあげてしまった上に、加筆した物をもう1度あげてしまいました。
ブログ村に同じタイトルの作品が2本上がってしまって、此花どうしよう~と思いました。(´;д;`)あう~
削除したら消してくれてもいいと思うっ!!ヾ(。`Д´。)ノ ←どう考えても、自分が悪いです・・・
そして普段は反映されなくて、どういうこと?となるのに、もの凄く速やかに反映されていて言葉もありませんでした。
詩鶴くんの傷って、大丈夫なのかなぁ・・・|ω・`)コソーリ・・・
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