新しいパパができました・24
「う・・・っ・・・」
「柾くん?」
「柾?」
不意に俺は、そこで笑っている詩鶴がどうしようもなく愛おしくなってしまった。
誰にでも愛される風貌を持ちながら、どうして詩鶴はこんなに愛情に恵まれていないんだろう。
「泣いちゃだめ・・・だよ。」
思わず手を伸ばして抱えた小さな詩鶴が、俺の腕の中で泣いた。
もし、ここに母ちゃんが居なかったら、俺は抱きしめる以上のことをしそうなくらい詩鶴が愛おしかった。
「柾くん。ぼくね、おばあさまのお墓で亜由美さんに出会えて、本当によかった。ずっと自分のことが嫌いだったけど、亜由美さんの役に立てたし、柾くんに会えた。」
「亜由美さんが、一緒に暮らそうって言ってくれたとき、そんなことできないって思ったけど、ぼくがいろいろな
ことを出来るようになったみたいに、何でも諦めちゃいけなかったんだよね。短い間に、僕は学校で学ぶ以上のことを教わった気がするよ。」
きらきら光る目で、俺を見上げた詩鶴はその時、母ちゃんが詩鶴にかけた言葉を口にした。
「亜由美さんが、家族になろうって言ってくれたんだ。」
「家族?」
「うん。だから、ぼく。その時、決心して柾くんの、良いパパになろうって思ったんだ。」
・・・ちょっと、待て。
何か、色々違ってるぞ、詩鶴。
樹木葬にした父ちゃんの眠る桜の木のそばで、カッターを片手に思いつめている詩鶴の話を聞いてやった母ちゃんは、詩鶴の「ぼくには、誰も居ない」と言う切ない言葉に思わず、「家族になろう。」と言ったのだそうだ。
「うちには、高1の息子が一人居るだけなの。馬鹿だけど元気いっぱいで、気のいいやつよ。誰も居ないのなら一緒に暮らさない?家族になろう、詩鶴くん。」
その言葉に詩鶴はあっさりと頷いたのだ。
「はい。亜由美さん。」
頬を染めてはにかんだ詩鶴が打ち明けたが、それプロポーズじゃないぞ、詩鶴。
「うそぉ。」
脱力。
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