新しいパパができました・32(最終話)・・・と、あとがき
意外にも母ちゃんの人形を待っている人は多く、これまでその人たちとの交流も欠かさなかった母ちゃんは、ホームページを立ち上げることにした。
めんどくさいことは、みんな詩鶴が引き受けあまりの万能さに、俺は見守るくらいしか出来なかった。
詩鶴の趣味が、パソコンいじりだなんて初めて知った。
母ちゃんのホームページのトップには、美しい平安絵巻が広がり美しい主従がその空間の中でだけ、安穏と暮らしていた。
桜の花弁の舞い散る中、寄り添って仲睦まじく佇む二人だった。
「学費と生活費だけは、父ちゃんの残してくれたものと、これまでの蓄えで何とかなるわ。あとは、自分で何とかしてね~。」
と、母ちゃんは手をふって機上の人になった。
小さくなった飛行機に背を向けると、俺たちはあの家に今日から二人きりだ。
「俺ら、新婚みたいだな。」
ん~?と、詩鶴がちょっと考え込んだ。
「ぼく達、家族になるんだよね。ぼく、養子縁組すると、亜由美さんの子どもになるのかなぁ・・・そうしたら、柾くんのお兄ちゃん?」
却下。
どう見たって、中学生にしか見えないちびの詩鶴が俺の兄貴だなんて、冗談にもならない。
大体、そこから勘違いが始まったのだ。
出会ってからしばらくは、俺は詩鶴にすごく冷たかった。
「じゃあ、柾くんがぼくの戸籍に入る?知ってる?日本じゃね、男同士って結婚が赦されていないから代わりに養子縁組するんだよ。」
知らないけど、知っている振りをして頷いた。
「年上の人の戸籍に入るのが、養子縁組なの。そうなると柾くん、やっぱりパパの子どもになるんだね。」
パパって言うな。
正確には、まだちゃんと恋人にもなれていないような気がする、俺と詩鶴。
先の事は分からないけど、今は二人でやってゆく。
*********************************
毎朝、詩鶴が俺を起こしに来る。
目の前に、桃が転がっている懐かしい風景だ。
何故だか男はみんな、裸エプロンが好きだと思い込んでる詩鶴は、俺が喜ぶと思っているらしい。
まあ・・・確かに詩鶴のこの格好は・・・すげぇ、可愛いけど。
・・・正直、大喜びだけど。
そっと指でなぞった淡い奥の窪みには、俺がつけた傷が盛り上がって痕になっていた。
とんでもない格好の癖に、恥らって頬を染めるのに笑ってしまう。
この傷が癒えるまで、俺は恐くて触れることも出来なかった。
見るたびに、胸の奥がつきんと痛むのは、ひどいことをしてしまった自覚が有るからだ。
肌の暖かさを確かめるようにして、くっつきたがる詩鶴は実は相当の寂しがりやだった。
「自分は自由登校だからって・・・もう、毎朝こんな格好でうろうろして。」
うふふ・・と、詩鶴が誘う目をする。
「朝食に、この桃喰っちまう。」
「きゃあ。」
弁当箱には腕を上げた、詩鶴の手料理が並ぶ。
もちろん、オオアリクイ・・・ぺんぎんのハンバーグも、時々入る。
詩鶴は父親のような医者になるのを諦めたわけではなかった。
きっと詩鶴は、布団でちゃんと寝る事もしないで、ひたすら勉強していた。
詩鶴の手を取らないで済むように、一応俺も殆どの家事をできるようになっていた。
そして、春。
元々頭の良かった詩鶴は、進学校を離れても見事に医学部に現役合格を果たした。
準備が遅かったから、普通だったら浪人覚悟だと思う。
家から通える大学は、かなりの難関だったらしく遅れた勉強を懸命に取り返した詩鶴に、教師も驚いていた。
本人は、「まぐれです~」と言っていたけど、そんな甘いものじゃないことくらい、俺だって知っている。
互いの肌を恋しいと思いながら、受験が終わるまで、まるで願をかけるように俺たちは一つにならなかった。
合格が決まるまでは、邪魔はしない。
そんな修行僧の苦行みたいな、一人寝の暴れん棒の我慢も、やっと終わる。
*********************************
静かに、季節はめぐってゆく。
冷たかった空気に若い息吹が少しずつ混じり、やがて爛漫の春が来た。
「柾くん、行くよ。」
満開の桜の花の頃、約束どおり詩鶴の祖母と両親と俺の父ちゃんの眠る公園墓地に赴いた。
詩鶴はお医者さまになりますと、ちょっぴり涙ぐんで決心をつげた。
「頑張りますから、どうぞ見守っていてください。」
俺も手を合わせた。
「俺が詩鶴を精一杯守りますから、安心してください。」
ほんの少し背は伸びたけど、相変わらずの睫毛のけぶるビスクドールのような悩ましい顔で、詩鶴は俺に向かって微笑む。
「お父さんのお酒、持ってきた?」
「ああ。」
一片の花弁が首筋に落ちる。
花弁ごと、詩鶴に印をつけた。
ここから全てが始まった。
一陣の風が起こす花吹雪。
俺と詩鶴を、全世界が祝福した。
完
*********************************
【あとがき】
長らくお読みいただきありがとうございました。
一応の完結となります。
今回は「エチ場面を書く」と言う前提で設定したのですが、中々そこに到達できませんでした。
伯父と天音に陵辱される場面は、作者が意気地なしなので、かわいそうでとうとう書けなくなってしまいました。
かわいそうじゃないか~~!やめろよ~!と、ヘたれな主人公にも言われたような気がします。
結局、場面は没になりました。
主人公も作者と同じテク無しで暴走してしまい、結局虐めてしまったのは、男性同士の関係に知識の無いノーマルと考えたからです。それでもリアルでしたとおっしゃっていただいて、何とか胸をなでおろしました。
望外の喜びでした。(〃∇〃) ←ひとつ、乗り越えた感・・・
「詩鶴くん、苛めてごめんね~。」(´・ω・`)
【おまけ劇場】
天音:「詩鶴、あいつに物足りなかったらいつでも帰って来い。親父と二人で、可愛がってやるから。」
詩鶴:「|ω・`) ・・・やです~。」
伯父:「そういえば、おまえが詩鶴に酷く当たってたのって、俺がおまえの母親を省みなかったせいなのか?」
天音:「当たり前だろ。結婚して、子供もいるのに実の弟の許婚に懸想するなんて、最低だぞ。子供まで、作って恥知らず。」
伯父:「だって、どっちも欲しかったんだも~ん。本能の暴れん棒がさ、詩津のところへイキたいっていうんだも~ん。」
天音:「・・・も~んって・・・この、淫乱親父。」
伯父:「自分だって、詩鶴のこと散々虐めてたじゃないか。叩いたり縛ったり、楽しそうに。」
天音:「覗いてたのか。仕方ないだろう、可愛いんだから。愛せないなら虐めるしかないじゃないか。愛の裏腹だよ。」
柾:「・・・あんたらって、まじ最悪の親子だな。」
伯父:「28話と29話読ませてもらった。詩鶴にたいそうな真似をしておいて言うじゃないか。」
天音:「ちゃんと愛してやれないやつが、偉そうに大人に意見するんじゃない。」
伯父:「言っておくが、あれほどの傷をつけたことは無いぞ。」
天音:「まったくだ。縫合せずに済ませたらしいじゃないか。」
詩鶴:「柾くんっ!(*⌒―⌒*) にこっ♪ 」
柾:「詩鶴~~~、あいつらが~(´;ω;`) 」
詩鶴:「ぼくは大丈夫だよ、柾くん。人は成長するんだよ。がんばろうね。」
天音・伯父:「やっぱり、そのレベルなのか。その分だと詩鶴をドライで達かせたこともないな。テクなしめ。
(*´・ω・)(・ω・`*)ネー」
柾:「くそぉ~!ドライって何だよっ!ヾ(。`Д´。)ノ彡☆言ってる意味すらわかんないぞ~~!!作者~~!」
此花:「(´;ω;`)あう~・・・これから、勉強します~」
詩鶴:「あ、ドライって言うのはね~・・・はっ! (〃∇〃)・・・ぼくも、わかんな~い。」
伯父、天音、柾、此花:「・・・・ん?」
詩鶴:「(ΦωΦ)・・・うふっ♪」
拍手もポチもありがとうございます。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。
- 関連記事
-
- ブログパーツ・木花咲耶 (2010/12/30)
- 新しいパパができました・32(最終話)・・・と、あとがき (2010/12/18)
- 新しいパパができました・31 (2010/12/17)
- 詩鶴と柾 (2010/12/16)
- 新しいパパができました・30 (2010/12/16)
- 新しいパパができました・29(★) (2010/12/15)
- 新しいパパができました・28(★) (2010/12/14)
- 新しいパパができました・27 (2010/12/13)
- 新しいパパができました・26 (2010/12/12)
- 新しいパパができました・25 (2010/12/11)
- 新しいパパができました・24 (2010/12/10)
- 新しいパパができました・23 (2010/12/09)
- 新しいパパができました・22 (2010/12/08)
- 新しいパパができました・21 (2010/12/07)
- 新しいパパができました・20 (2010/12/06)