続 星月夜の少年人形 10
「ほら、成瀬さんって、みぃって子がいたころ、ずっと海外向けのロリータ系の写真撮っていたじゃん。天使を凌辱しているような、どきっとするようなやつ。ああいう綺麗なのって、下の毛生えちゃったらもう無理かな。・・・実を言うと、いくら花村さんの所のでも、アダルトで絡むのってちょっと怖いから。」
「ごめん、花村さん。おれ、虫が良すぎるかな・・・?」そういう桃李の身体は小さく、中学生くらいにしか見えない。これまで、何もねだったことの無い桃李の初めての願いを花村は叶えてやろうと思った。
「桃李は俺には、今でも十分天使だよ。だけどね、簡単に金を稼ぐって言うけど、人前で肌を晒すっていう事を桃李が判っているとは思えないな。ただ、服を脱いで座っているのとはわけが違うんだよ。」
花村は明かりを暗くすると、頷いた桃李には分からないようにカメラのスイッチを入れ、静かに「脱いで、桃李。」と口にした。
「桃李が自分を商品にする気があるのなら、ここで本気を見せてもらおうじゃないか。しがない映像会社の社長としては、ものになるかどうか見極める必要がある。おれが見て、使えそうだと思ったら成瀬に紹介してやるよ。もし出るなら「初めて」を売りに何本かは撮れるから、まとまった金にはなるはずだ。」
「どうする?」と、いわれた桃李の全身がぶるっと怖気たように震えたのを、花村は見逃さなかった。幼い頃から見守ってきた桃李が金を貸してくれと言えば、花村には断る理由はなかったのだが、桃李には幼い時から自尊心が備わっていた。見返りを求めない相手に、金を無心することはどうしてもできなかったし、付け入るようなこともしなかった。
言葉もなく、しゅっと衣擦れの音をさせて、桃李がくたびれたTシャツを脱ぐ。露わになった薄い上半身には誰の手にも染まってない薄い色の陰りがある。ソファの上に立ち上がって上半身を晒した桃李は、屈託なく「下も脱ぐ?」と悪びれずに聞いてくる。
花村は、そのまま続けてと、頷いた。
芸能人でもないのに、どこにいても目立ち、やたらスカウトされる桃李の美貌はこの町の誰もが憎んだハイエナのものだ。毒を含んだ男の血に、桃李の母も海広の母も惹かれた。
決して踏み込んではならないと本能が止めても、美貌の悪魔の誘いを断れずどれだけの女性が泣いただろう。
桃李の母は、今も生きているのか死んでいるのか行方さえしれなかった。
悪魔の血が流れる天使は、花村を見つめたまま微動だにしなかった。落とした照明の中に浮かんだ白い小さな顔の桃李の唇が、ほんの少し開き艷めかしい赤い舌が覗く。瞳だけが燃えて花村を熱く捉えていた。女性しか愛したことの無い花村の喉が、思わず上下する。
幼い頃に抱き上げた、小さなみすぼらしい子供は、手を伸ばしても決して自分のものにならない男に全身で語っていた。見つめる花村の視線に愛撫されたように、ふるり・・・と、桃李の青い茎が勃ちあがりかけた。
「桃李・・・」
桃李の片頬に、つっと煌めく滴が転がった。
( ゚д゚ ) 花村:「本気なのか、桃李くん。」
(ノд-。) 桃李:「本気だもん・・・」
拍手もポチもありがとうございます。
励みになりますので、応援よろしくお願いします。
コメント、感想等もお待ちしております。 此花咲耶
← 見れば見るほどきゅんきゅん~♪です。
- 関連記事
-
- 続 星月夜の少年人形 17 【最終話】 (2011/07/03)
- 続 星月夜の少年人形 16 (2011/07/02)
- 続 星月夜の少年人形 15 (2011/07/01)
- 続 星月夜の少年人形 14 (2011/06/30)
- 続 星月夜の少年人形 13 (2011/06/29)
- 続 星月夜の少年人形 12 (2011/06/28)
- 続 星月夜の少年人形 11 (2011/06/27)
- 続 星月夜の少年人形 10 (2011/06/26)
- 続 星月夜の少年人形 9 (2011/06/25)
- 続 星月夜の少年人形 8 (2011/06/24)
- 続 星月夜の少年人形 7 (2011/06/23)
- 続 星月夜の少年人形 6 (2011/06/22)
- 続 星月夜の少年人形 5 (2011/06/21)
- 続 星月夜の少年人形 4 (2011/06/20)
- 続 星月夜の少年人形 3 (2011/06/19)