続 星月夜の少年人形 15
紘一郎は苛立ちを抱えたまま、花村のマンションを訪ねた。
「今時分、誰だ・・・?」ドアフォンの画像に、紘一郎が頭を下げる。
「一人で来るのは珍しいな。ま、入れよ。」
笑顔で招き入れた。
「花村さん、あの・・・桃李は来てませんか?」
硬い表情に、何かあったのだろうと想像がつく。
「桃李が、どうかしたのか?」
椅子をすすめ,飲み物を取りに行った花村は、仕事中だったのだろうか。パソコンの画像が動いていた。
花村は、成瀬とともに映像会社を起業し、小さいながらもヒットを飛ばしていた。
『花村さん・・・おれ、ね・・・ずっとね・・・』
『うん、桃李。わかってるよ。』
花村は、隠し撮りした桃李のカメラテストの映像を、もう一度眺めていた。
聞き覚えのある声に、紘一郎は跳ね上がって画面に飛びついた。薄暗い画面に桃李の全裸の白い身体が浮かぶ。
間が悪く、花村がちょうど桃李を抱きしめて、そっと震える肩口に顔を埋めた場面を、紘一郎は見た。
「桃李に何をさせたんだよっ!」
紘一郎は、グラスを持って来た花村に飛び掛かった。
「うわっ!」
SP上がりの花村だったが、不意を付かれてグラスは宙を舞い、派手な音を立てる。次いで、頬を火の付いたような衝撃が走った。
紘一郎がのしかかり、そのまま怒りに任せて顔面を殴りつけた。
「何でっ!何で、花村さんが・・・っ。桃李はあんたのこと、おやじみたいに思ってて、ずっとガキの頃から大好きで・・・こんな、ちくしょうっ!」
「ちょっ…ちょっと、待て、落ち着けって!紘一郎、話を聞けっ!」
「桃李を犯るなんて・・・俺だって、桃李のことずっと大事にしてたんだ・・・。ばかだけど可愛かったんだ。・・・大学だって、ちゃんと勉強して桃李を支えてやるために・・・桃李っ・・・。」
支離滅裂になって頭を抱えた紘一郎の下から、何とか這い出した花村が、ぽんぽんとあやすように背中を叩いた。
「俺は、桃李の親父だろ?息子みたいな桃李に、俺がそんな真似するかよ。」
「すみません、花村さん。」と、蚊の泣くような小さな声で、我に返った紘一郎が頭を下げた。冷静になって考えれば、花村や成瀬が桃李を食い物にするようなことをするはずもなかったのに、激高した自分が恥ずかしくなった。
「あのな。桃李は、自分に出来る仕事がないか相談に来たんだよ。紘一郎が苦労してるみたいだから、なんとかしてやりたいってさ。生半可なことじゃ仕事はできないって教えるために、可哀想だけどテストをした。ちっぽけな映像会社だけどね、金を生むってのは結構大変なんだよ。」
はっとしたように紘一郎は、花村を見つめた。思いっきり殴られた目元が、すでに赤く腫れてきていた。
「すみません!おれ、すごい勘違いをしてしまった・・・。」
「馬鹿野郎・・・いたたっ、油断した。お前、プロレスラーにでもなれ・・・つっ!」
わざと大げさに声をあげたら、紘一郎は神妙に濡れタオルを作って来て、花村に渡した。殴った紘一郎の方が、殴られた花村よりも、辛そうな顔をしてしょげ返っていた。
「俺は、いつだってお前らの親父だっただろ?これからだって、ずっとそうだ。」
「あいつが、アルバイトしたって大金持ってきたんで・・・てっきり、やばいことに手を出したかと思って。ついこの間、妙な芸能関係の男に声掛けられたところだから、早く止めさせなきゃって必死で・・・おれ、桃李のこと昔っから、可愛くて仕方がなかったから、すっげぇ腹立って。」
「しようの無い兄ちゃんだなぁ・・・。ちゃんと向き合ってやれよ。今頃。泣いてんぞ。」
「はい。」
紘一郎は、やっと笑顔を向けた。
( *`ω´) 花村:「この馬鹿力が~、痛いわ~、ばかちんっ!」
(´・ω・`) 紘一郎:「すみません・・・おれ、てっきり。」
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「花村さん、あの・・・桃李は来てませんか?」
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「桃李が、どうかしたのか?」
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花村は、成瀬とともに映像会社を起業し、小さいながらもヒットを飛ばしていた。
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『うん、桃李。わかってるよ。』
花村は、隠し撮りした桃李のカメラテストの映像を、もう一度眺めていた。
聞き覚えのある声に、紘一郎は跳ね上がって画面に飛びついた。薄暗い画面に桃李の全裸の白い身体が浮かぶ。
間が悪く、花村がちょうど桃李を抱きしめて、そっと震える肩口に顔を埋めた場面を、紘一郎は見た。
「桃李に何をさせたんだよっ!」
紘一郎は、グラスを持って来た花村に飛び掛かった。
「うわっ!」
SP上がりの花村だったが、不意を付かれてグラスは宙を舞い、派手な音を立てる。次いで、頬を火の付いたような衝撃が走った。
紘一郎がのしかかり、そのまま怒りに任せて顔面を殴りつけた。
「何でっ!何で、花村さんが・・・っ。桃李はあんたのこと、おやじみたいに思ってて、ずっとガキの頃から大好きで・・・こんな、ちくしょうっ!」
「ちょっ…ちょっと、待て、落ち着けって!紘一郎、話を聞けっ!」
「桃李を犯るなんて・・・俺だって、桃李のことずっと大事にしてたんだ・・・。ばかだけど可愛かったんだ。・・・大学だって、ちゃんと勉強して桃李を支えてやるために・・・桃李っ・・・。」
支離滅裂になって頭を抱えた紘一郎の下から、何とか這い出した花村が、ぽんぽんとあやすように背中を叩いた。
「俺は、桃李の親父だろ?息子みたいな桃李に、俺がそんな真似するかよ。」
「すみません、花村さん。」と、蚊の泣くような小さな声で、我に返った紘一郎が頭を下げた。冷静になって考えれば、花村や成瀬が桃李を食い物にするようなことをするはずもなかったのに、激高した自分が恥ずかしくなった。
「あのな。桃李は、自分に出来る仕事がないか相談に来たんだよ。紘一郎が苦労してるみたいだから、なんとかしてやりたいってさ。生半可なことじゃ仕事はできないって教えるために、可哀想だけどテストをした。ちっぽけな映像会社だけどね、金を生むってのは結構大変なんだよ。」
はっとしたように紘一郎は、花村を見つめた。思いっきり殴られた目元が、すでに赤く腫れてきていた。
「すみません!おれ、すごい勘違いをしてしまった・・・。」
「馬鹿野郎・・・いたたっ、油断した。お前、プロレスラーにでもなれ・・・つっ!」
わざと大げさに声をあげたら、紘一郎は神妙に濡れタオルを作って来て、花村に渡した。殴った紘一郎の方が、殴られた花村よりも、辛そうな顔をしてしょげ返っていた。
「俺は、いつだってお前らの親父だっただろ?これからだって、ずっとそうだ。」
「あいつが、アルバイトしたって大金持ってきたんで・・・てっきり、やばいことに手を出したかと思って。ついこの間、妙な芸能関係の男に声掛けられたところだから、早く止めさせなきゃって必死で・・・おれ、桃李のこと昔っから、可愛くて仕方がなかったから、すっげぇ腹立って。」
「しようの無い兄ちゃんだなぁ・・・。ちゃんと向き合ってやれよ。今頃。泣いてんぞ。」
「はい。」
紘一郎は、やっと笑顔を向けた。
( *`ω´) 花村:「この馬鹿力が~、痛いわ~、ばかちんっ!」
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