禎克君の恋人 14
下から伸びた大二郎の手が、ぐいと禎克を捉えた。
押し付けられた唇が熱を持って、禎克を煽る。
「んっ……!?」
大二郎はぐいと頭を引き寄せると、禎克の唇を割って深く舌を捉えた。
もう離したくない……そんな気持ちの込められた、手慣れた大人のキスに禎克は喘いだ。
「んんーーーーっ……。」
その場に倒れ込んで、やっと離れて息を吐いたら、大二郎が覆い被さってきた。
「さあちゃん……離れないで。おれにもう一度、キスして……さあちゃん。」
「ちょ……ちょっと!」
慌てふためいた禎克が、肩を押しやりやっと離れたが、大二郎は不満げな顔を向ける。
「やっとキスできたのに……さあちゃんったら冷たい。逃げるなよ~。」
「だって、大二郎くんたら、歯の裏っかわまで舐めまわすんだもの。歯磨きとかしてないし。あの、びっくりしてっ……。」
ホテルの中庭で、誰の視線があるかもわからない。大二郎の突飛な行動に、禎克は驚いていた。
芝の上に押し倒されて、確かに形勢は逆転していた。
「さあちゃん……。まさかの……ファーストキス?高校生にもなって……童貞とかないよね?」
「どっ……!!」
禎克は完熟トマトになって、固まった。
「くすっ……(〃▽〃)」
「うるさいっ!笑うな!」
「怒らないでよ。聞いただけじゃん。笑ってないよ。」
「初めてで悪かったなっ!」
「さあちゃんってば、そんなびっくりするようなビジュアルのくせに、これまで何もなかったのか?信じられない。良く、これまで無事だったね~。」
大二郎はその場で、とうとう笑い転げてしまった。きっと禎克は、周囲の必死の接近にも気付かずに、これまで飄々と受け流してやりすごして来たのに違いないと、内心思う。ほんの少し、顔も知らない誰かに同情した。
「仕方ないだろう、ずっと部活で忙しかったんだから。言っておくけど、もてなかったわけじゃないぞ。バレンタインとか、すごかったんだから。」
禎克はむくれていた。まるでキス一つ満足させてやれなかった自分が、幼稚だと言われたような気がする。
「さあちゃん……。わかってるよ。おれ、さあちゃんに貰ったキスがすごくうれしかったんだ。馬鹿にしたんじゃないよ、信じて?」
「大二郎くんのキス、なんか……手慣れてた気がする。絶対、初めてじゃないよね。これまでに何人ぐらいとしたの?」
「え……と。さ、さあちゃん、世の中には聞かない方が、良いこともあるんだよ。芸の肥やしって言葉、知ってる?ほら、役者って、役を追及するのにそういう面もあるんだよ。」
「ふ~ん……。」
「普段からアンテナを広げていないと、人間観察もできないし。役作りの一環としての、必要な経験?……とかあってさ。」
「……煙に巻こうとしてるだろ。」
「そんなことない。おれの本気はいつだってさあちゃんだけだったんだから。本当だよ。夢の中でもおれのキスの相手は、いつもさあちゃんだった。」
*****
そんな子供じみた嘘を信じるはずもなかったが、必死に言い訳する大二郎を、禎克は笑って見つめていた。
見えなかった過去や、これまでのことなんて、どうでもいい。
この至近距離が全てだった。
互いに離れがたいと思っていた。
Σ( ̄口 ̄*) 禎克 「大二郎くんって何気に経験豊富?」
(`・ω・´) 大二郎「幼稚園の時から、さあちゃん一筋でっす!」
( *`ω´) 禎克 「あやしいぞ~。」
♪~(・ε・。) 大二郎 「うふふ。」
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