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禎克君の恋人 10 

その頃、禎克の携帯も鳴っていた。
上谷に、姉からです、すみませんと律義に断って、携帯を開いた。

「なんだろ……今頃、メールって。」

『坂の上のホテルに劇団醍醐が来ています。幼稚園の時に仲良しだった大二郎くんとお父さんが、さっき家にご挨拶に見えたの。
明日の合宿終わりに、挨拶に行ってね。湊もお芝居を見に行くつもりです。』

「やっぱり、そうだったんだ。」

「なんだ?急用か?」

「ぼくの幼馴染が、この上のホテルに興行に来てるって、姉が連絡をくれました。上谷先輩、ご存じないですか?柏木醍醐って言うのが父親で、テレビにも時々出てるみたいなんですけど。」

「あ~、もしかして、金剛のお守りの写真の子か?」

「覚えてました?あれが、その柏木醍醐の息子で、ぼくとはタメなんです。」

普段はまるで無表情な禎克が、どこか浮き立った表情を浮かべているのが、何故か上谷には気に入らなかった。上谷の知らない禎克の過去が気になる。

「金剛でもそんな顔するんだな。」

「え……?」

「いや、会いに行くのか?」

「明日の合宿終わりにでも行ってみます。しばらくは興行するらしいし……あ。さっきのスーパーにあったんで、一枚もらって来たんですけどこれ……。上谷先輩は、こういう舞台って、見たことあります?」

思わず手に取った、スーパーに置いてあったチラシを見せた。

「へえ……華やかだな。見たことはないけど、歌舞伎みたいなものか?」

「ん~、ちょっと違いますね。芸術的というより、やっぱり大衆演劇というくらいだから、客席と近いです。客と、普通に掛け合いとかあったりして。昔、一度だけ見に行ったことが有るんですけど、ミラーボールとか回ってすごく綺麗だったの覚えてます。」

「俺の知らない金剛だな。」

「え?」

「そんな顔するの初めて見たよ。そんな風に話すのも、何か、ちょっと意外だな。」

「そうですか?ただの幼馴染の話ですよ……。でも、何も言わずに次の場所に行ってしまったのが、すごいショックで、忘れられなくなったのかもしれません。熱とか出して大変だったみたいだったから。小さすぎて別れってのが理解できなかったみたいです。」

「へぇ。ちびの頃の金剛ってどんなだったの?可愛かったんだろうな。」

「え~と……。まあ。普通です。」

まるで女の子みたいだったんですとは言えなかった。ピンクのスモックの可愛いさあちゃんが、恥ずかしそうに禎克の脳裏でもじもじとしていた。

「あ?上谷先輩。今のサイレン……五時じゃないっすか?」

「うわっ、やばい!金剛、急げ!夕飯に遅れたら食うもの無くなるぞ。それで迎えに来たんだった。」

「先輩のせいで、話し込んじゃったじゃないですか。」

「ははっ、すまん。」




(*⌒▽⌒*)♪何とかご飯食べれました~!
合宿中の一年生は、忙しいのでっす。
すぐそこにいる大二郎くん。早く会いたいね。

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