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夏の秘めごと 16 

「……。」

「さあちゃん……?怒ってる?」

「ベ、ツ、ニ。」

「怒ってるじゃないか~~~!」

黙々と食器をトレイに戻す禎克は、わざと意識して冷たい目線を向けた。

「ぼくの知らないところで、大二郎くんに何かあってもどうしようもないと思ってるよ。お互い、離れて時を重ねてきたわけだし……大二郎くんが、初めてじゃないことくらいぼくにだってわかるよ。だって、負担掛けないように気を使ってくれてたし。すごく上手で……気持ち良かったし。」

「さあちゃん。おれは、心はいつもさあちゃん一筋だよ。でもね、確かにおれは、さあちゃん以外の人と何度か……(何十回?)愛し合ったこともあるの。その人は、もうこの世にいないけど……気になる?」

「どういうこと?この世にいないって……。」

「病気だったんだ。」

「え……っ。」

「お金……が無くて、病院に行ったときはもう手遅れだった。すごく、辛かった……。」

大二郎の顔は強張っていて、禎克にはそれ以上何も聞けなかった。
自分は両親の庇護の元、恵まれた環境でバスケをして、何不自由のない生活を送っている。
だが、一見華やかに見える大二郎の生活がそれほど楽ではないことは、禎克にもわかる。

「もう、いいよ。心は一筋なんでしょ?」

「柏木大二郎は、いつでもさあちゃんにまっしぐらでっす!(`・ω・´)」

「大二郎くん、ねこじゃなくて、いたちなのに?」

「さあちゃん……いたちじゃなくて、タチだって。」

思わず笑ってしまう。
禎克も勇気を出して、思い切って上谷の事を打ち明けた。

*****

「……でね、バスの中で、声も出せなかったんだ。他の部員に……というか、上谷先輩の恋人が、前の方に座っていたし、絶対知られちゃいけないと思ったから、耐えるしかなかった。」

「それで、ぱんつの中に?」

「なんで……あの……?」

わかるの?と禎克が目を瞠った。

「さあちゃん。初めから様子が変だったよ?言わないから聞かないでおこうと思ったけど、泣きそうな顔してたし、何かあったなってすぐに分かったよ。脱いだぱんつ、大急ぎでバッグに押し込んだの見ちゃったんだ。」

「そうか、見られてたのか……。」

「でも、そのあとすぐに、おれに逢いたいって思ってくれたんでしょ?おれにはそっちの方がすごくうれしかったよ。さあちゃんが、おれのことを好きでいてくれるなら、他の事なんてどうだっていい。おれの目の前にいるさあちゃんが、誰かに何かされて、ぼろぞうきんみたくなっても離さない。ずっと傍にいる。」

「ぼろぞうきんって……。」

「例えだよ。」

それにね……と大二郎は続けた。

「何となくだけど、おれ、その先輩の気持ち、わからないでもないんだ。さあちゃんと話してて分かったことなんだけど。」

「なに?」

「うん。さあちゃんはね、背が高くて綺麗な顔しててかっこいいんだけど、すごくまっすぐでね、小さな子供みたいに無垢な所があるの。」

「幼稚って意味?」

「違うよ、違う。純粋培養で大きくなって、すれてない気がするって言った方が良いのかな。ほら、雪が降った次の日って、一面真っ白で足跡付けるのすごく楽しみじゃない?泥で汚しちゃうのはもったいないんだけど、つい足跡付けたくなって、そこらじゅう走りたくなっちゃう。」

「高校生にもなって、そんな清らかな男はいません。結構、中身せこくてどろどろだぞ。湊なんていつも、さあちゃんは背は高いけど、けつの穴がちっさい男だって……あ、そっちじゃなく?」

「あはは……さあちゃん。おかし~!真面目な話してたのに。おれ、さあちゃんのことほんと好きだ。」

二人は自然に手を伸ばし、互いに抱きしめ合った。禎克は大二郎を抱きしめ、肩に顔をうずめた。

「一人で大変だったら電話しろよ?何もできないけど、話くらいなら聞けるから。一人で抱え込んで泣くなよ……?大二郎くんは強がってばかりだけど、本当は泣き虫だから心配だ。」

「うん。……うん、さあちゃん……。そんなこと言ってくれたら、おれ、泣きそう。」

「どんとこい。」

「さあちゃ~ん。え~ん……。」

寂しがり屋の子猫が、腕の中でにゃあと鳴いた。





(´・ω・`) 大二郎 「……にゃあ。」

「よしよし」(o・_・)ノ”(´・ω・`)

大二郎くんには、いろいろな過去がありそうです。
二人のお話はもうすぐ終わります。
最後までお付き合いいただけるとうれしいです。(〃ー〃)

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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 背が高く男っぽく変わった様に見えるさあちゃん
> でも 姉の湊に 青のスモックを取られてた 幼稚園の頃と 中身は変わってないのかな♪

(*⌒▽⌒*)♪わ~、ずいぶん前の事なのに覚えてくださってありがとうございます。
余り中身は変わっていないみたいです。部活三昧でバスケット以外の事には疎いのです。
>
> 看板女形役者として 座長代理として 色々と大変だけど、大好きなさあちゃんを心の支えに 頑張ってね、大二郎くん♪

(。・ω・。)ノぁぃ♪大二郎 「がんばりまっす!」

> それから さあちゃんと言う恋人が出きたんだから もう誰かと 大人の経験を積まないでね~(oゝ艸・)b
>
(〃゚∇゚〃) 心はさあちゃん一筋なので、大丈夫です。←あやし~
さあちゃんが、もっと大人になるといいなぁ……

> さあちゃんもバスケを頑張ってね~♪

(`・ω・´)ノはい。ウインターカップに出れるように、がんばります!

> 応援してるよッ(笑ゝ∀・)ノ(*・∀・)/ガンバレッ...byebye☆

ありがとうございます。もうすぐ、このお話も終わりです。
きれいにまとまるかな~。

コメントありがとうございました、うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪ 

2012/09/12 (Wed) 00:25 | REPLY |   

けいったん  

背が高く男っぽく変わった様に見えるさあちゃん
でも 姉の湊に 青のスモックを取られてた 幼稚園の頃と 中身は変わってないのかな♪

看板女形役者として 座長代理として 色々と大変だけど、大好きなさあちゃんを心の支えに 頑張ってね、大二郎くん♪
それから さあちゃんと言う恋人が出きたんだから もう誰かと 大人の経験を積まないでね~(oゝ艸・)b

さあちゃんもバスケを頑張ってね~♪
応援してるよッ(笑ゝ∀・)ノ(*・∀・)/ガンバレッ...byebye☆
 

2012/09/11 (Tue) 23:48 | REPLY |   

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