夏の秘めごと 11
大二郎は、それから思いもよらない話を打ち明け始めた。
「お師匠さんとおれは顔は似てても、やっぱりまるでオーラが違うってことなんじゃないかなぁ?この間なんて、満員電車に乗ったら痴漢されちゃって。」
「え……大二郎くん、痴漢されたの?」
「うん。何かさ、手を前に回して来て、後ろからもぞもぞしてたやつが、おれのちんこに触って驚いたみたい。女の子だと思って一生懸命触ってたのに、柏木大二郎には顔に似合わぬ立派なものが付いてましたって感じ。」
うふふ~と、何でもなかったかのように笑う。
「平気だったの……?」
半分冗談めかして話したのに、強張った顔を向けた禎克に何か違和感を感じて、大二郎はいぶかしげにじっと見つめた。
禎克は、思わず視線を逸らした。
「平気じゃないと言うか、腹は立ったよ。振り向けば普通のおっさんだったんで、取りあえず足を思い切り踏んづけて、電車から引きずりおろして「ふざけんじゃないぞ、こら。」って、優しく凄んでおいたけどね……。ねぇ、さあちゃん……何があった?」
「え……?何かって……。」
「会った時から、様子がおかしいって思ってたよ。話せない事?」
「何でもない。考えすぎだよ。」
顔を背けた禎克の目元が赤くなっているのを、大二郎は見逃さなかった。それでもそれ以上は、無理に聞き出そうとは思わなかった。
床に力なく腰を下ろした、禎克の髪をくしゃと撫でて引き寄せた。そっと髪に口づけする。
「さあちゃん……。これだけは覚えておいて。おれさ、何が有ってもさあちゃんが好きだよ。本当だよ。さあちゃんは、痴漢に遭ったおれのことは嫌いになる?汚いって思う?」
禎克はぶんぶんと首を振った。
「そんなこと何も思わない。大二郎くんに何が有っても、何かが変わったりしない。そうじゃないんだ。ぼくがショックを受けたのは、信頼してた先輩が……好きな人が居るくせに、相手の近くで信じられないようなことをしたから……哀しかっただけ。」
「そっか。」
ばしゃばしゃと湯の溢れる音に、大二郎は気付いた。
「さあちゃん。お風呂いこ。気分転換はお風呂が一番。」
大二郎は、どうやら禎克が本当に奥手なのに気が付いたようだ。
禎克をこれほど落ち込ませた「先輩」相手に、内心で「ぼけ~、かす~、さあちゃんを泣かすな~!」と、酷い悪態を吐きながら、禎克には優しい顔を向ける位の余裕は持っていた。
*****
「うっわ!さあちゃん、これ水風呂だよ~。お湯の温度確かめなかったのか?」
「ん?お湯って、ちょうどいい温度で自動で出て来るんじゃないの?」
「この、ええとこのぼんぼんめ~……えいっ!」
湯船から片手で掬って飛ばした湯は、本当に水のようにぬるかった。
大二郎 「泣いちゃ駄目。」(o・_・)ノ”(´・ω・`)禎克 「泣いてないっす……」
痴漢に遭うから、満員電車は嫌いだったんだけど、さあちゃんに会いたいので乗ることにしました。(`・ω・´)
本日もお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチもコメントもありがとうございます。
とても励みになっています。
お礼に挿絵を描きました。(*⌒▽⌒*)♪←努力中~ 此花咲耶
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「お師匠さんとおれは顔は似てても、やっぱりまるでオーラが違うってことなんじゃないかなぁ?この間なんて、満員電車に乗ったら痴漢されちゃって。」
「え……大二郎くん、痴漢されたの?」
「うん。何かさ、手を前に回して来て、後ろからもぞもぞしてたやつが、おれのちんこに触って驚いたみたい。女の子だと思って一生懸命触ってたのに、柏木大二郎には顔に似合わぬ立派なものが付いてましたって感じ。」
うふふ~と、何でもなかったかのように笑う。
「平気だったの……?」
半分冗談めかして話したのに、強張った顔を向けた禎克に何か違和感を感じて、大二郎はいぶかしげにじっと見つめた。
禎克は、思わず視線を逸らした。
「平気じゃないと言うか、腹は立ったよ。振り向けば普通のおっさんだったんで、取りあえず足を思い切り踏んづけて、電車から引きずりおろして「ふざけんじゃないぞ、こら。」って、優しく凄んでおいたけどね……。ねぇ、さあちゃん……何があった?」
「え……?何かって……。」
「会った時から、様子がおかしいって思ってたよ。話せない事?」
「何でもない。考えすぎだよ。」
顔を背けた禎克の目元が赤くなっているのを、大二郎は見逃さなかった。それでもそれ以上は、無理に聞き出そうとは思わなかった。
床に力なく腰を下ろした、禎克の髪をくしゃと撫でて引き寄せた。そっと髪に口づけする。
「さあちゃん……。これだけは覚えておいて。おれさ、何が有ってもさあちゃんが好きだよ。本当だよ。さあちゃんは、痴漢に遭ったおれのことは嫌いになる?汚いって思う?」
禎克はぶんぶんと首を振った。
「そんなこと何も思わない。大二郎くんに何が有っても、何かが変わったりしない。そうじゃないんだ。ぼくがショックを受けたのは、信頼してた先輩が……好きな人が居るくせに、相手の近くで信じられないようなことをしたから……哀しかっただけ。」
「そっか。」
ばしゃばしゃと湯の溢れる音に、大二郎は気付いた。
「さあちゃん。お風呂いこ。気分転換はお風呂が一番。」
大二郎は、どうやら禎克が本当に奥手なのに気が付いたようだ。
禎克をこれほど落ち込ませた「先輩」相手に、内心で「ぼけ~、かす~、さあちゃんを泣かすな~!」と、酷い悪態を吐きながら、禎克には優しい顔を向ける位の余裕は持っていた。
*****
「うっわ!さあちゃん、これ水風呂だよ~。お湯の温度確かめなかったのか?」
「ん?お湯って、ちょうどいい温度で自動で出て来るんじゃないの?」
「この、ええとこのぼんぼんめ~……えいっ!」
湯船から片手で掬って飛ばした湯は、本当に水のようにぬるかった。
大二郎 「泣いちゃ駄目。」(o・_・)ノ”(´・ω・`)禎克 「泣いてないっす……」
痴漢に遭うから、満員電車は嫌いだったんだけど、さあちゃんに会いたいので乗ることにしました。(`・ω・´)
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