夏の秘めごと 8
キャプテンが最後の挨拶をした。
「今日は、各自ゆっくり休め。明日は一日休養日にする。明後日からは、ウインターカップ予選に向けて通常練習開始。いいな。」
「はい!」
「ん、金剛?どうした?いつも一番返事でかいくせに、今日はおとなしいな。」
禎克は、何も言えなかった。キャプテンの横に佇む上谷を意識して、とても平常心ではいられなかった。
「車酔いでもしたか~?」
思わず、そうだと肯いた。
「金剛は、よく頑張ってくれたから、疲れが出たのかもしれないな。身体をきちんとケアして、ゆっくり休めよ。」
「はい……。」
キャプテンは、恋人の上谷が自分に何をしたか知らないんだ……と思うと申し訳なくて、まともに顔を見れなかった。
*****
解散式の後、禎克は大二郎が公演しているホテルへと、一目散に急いだ。
ごわごわとした下着が気持ち悪く、早くシャワーを使いたかったが自宅に帰るよりも先に大二郎に会いたかった。
さあちゃんと、呼んでくれたらきっとこの暗い気持ちも晴れる気がする。
立ちこぎで坂を一気に駆け上り、ホテルまでは一直線だ。
劇団醍醐一座の幟旗が、禎克を迎えてくれる……はずだった。
「うっそ……。」
いつかと同じ既視感に呆然とする。
あるはずの、色とりどりの役者名を染め抜いた旗は、既にそこになかった。
「……何で……。何でいつも黙って行っちゃうんだよ。」
その場に自転車を置き、裏口を確認したが、「劇団醍醐関係者出入り口」の張り紙も外されて、侵入を拒んでいた。
一度潤んでしまった涙腺はあっさりと崩壊し、喉元から嗚咽が迸った。誰かが居れば、気を張って立っていられたが、部外者がここに立っていても見咎めるものもいない
「大二郎くん……のばか。」
ひと気のない裏口に座り込んだ禎克は、子供のように膝を抱えて座り込んだ。
(´・ω・`) 禎克「大二郎くんがいない……此花のあんぽんたん……」
(〃ー〃)……えっと~。
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