夏の秘めごと 10
勝手知ったる小さな風呂に、禎克は湯を張った。
シャワーだけでなく、きちんと湯につかりたかった。
「さあちゃん、着替え持ってる?おれの使う?」
「あるよ。一回戦で負けてしまったからね。」
「あんなところで眠ってるんだもの、驚いたよ。汗だくでしょ?」
「うん。 べたべた。」
「ねぇ、さあちゃん。一回戦の相手って、強かった?」
「うん。半端なく強かった。ガタイがでかくて、何度も飛ばされたよ。ほら、ここの所、痣になってるだろ。」
「うゎぁ、いたそ~……」
肩や腕に幾つもできた大きな青痣に、大二郎は目を剥いた。
「バスケットって見てるぶんには、もっと優雅な優しいスポーツだと思ってたけどな。」
「俊敏性の必要な格闘技だよ。2メートル近い相手から、ボール奪うんだ。ぼくなんて、ガタイが無いからボールごと転がされまくりだ。大二郎くんは、アメリカのNBAって知ってる?」
「うん。聞いたことくらいはある。」
「日本人でね、NBAの選手がいたんだよ。今は、全日本の選手なんだけど、173センチででかい相手と渡り合って、すごく格好良かった。ポジションがぼくと同じポイントガードなんだけど……ほんと、すごいの。こうやってね、シュート体勢に入るだろ、その時に、相手の二メートル級の選手を抜くようなそぶりして、身体を沈めて一つフェイクを入れるんだ。」
「じゃあ、おれが相手のでかいやつね。さあ、来いっ。」
大二郎は張り切って、両手を上げると禎克の前に立った。
「ぼくがこう沈み込むと、つられるだろ?」
「うん。頭が下がると、ボール取りに行きたくなるよね。」
「そこでステップバックするんだ。一歩下がれば、そこは3ポイントラインで、相手は反応できない。そこからシュート……。」
「おお~。」
禎克はしゅっと、シュートを打つ素振りをした。
「今のでスリーポイントが決まりました。」
「そっか~!やっぱりかっこいいな、さあちゃん。バスケットやってる所、見てみたいな。試合とか見に行ってさ、周囲がきゃ~とか言ってる横で、かっこいいでしょ、あれ、おれの恋人なんだって、さりげなく自慢したいよ。」
「あはは……本気で言ってるの?大二郎くんが試合会場に現れたりしたら、大変だよ、まじで。」
「う~ん……、さあちゃんが思ってるほど、おれは知名度ないからね。電車に乗っても、ほとんど何も言われないし、平気かも。」
「そうなの?すごく目立つと思うけどなぁ。」
意外だなと思う。誰がどう見ても、目だって仕方がないと思うのだが、本人が自然体なせいだろうか、普段騒がれたことなど無いと言う。
暗い気持ちがいつしか晴れてきているのに、禎克は気付いていなかった。自然に笑っていた。
Σ( ̄口 ̄*) 大二郎 「さあちゃん、痣だらけ~」
(*⌒▽⌒*)♪禎克 「こんなの平気~」
(*⌒▽⌒*)♪ちょっといい感じです。良かったね。
本日もお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチもコメントもありがとうございます。
とても励みになっています。 此花咲耶
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「あるよ。一回戦で負けてしまったからね。」
「あんなところで眠ってるんだもの、驚いたよ。汗だくでしょ?」
「うん。 べたべた。」
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「うん。半端なく強かった。ガタイがでかくて、何度も飛ばされたよ。ほら、ここの所、痣になってるだろ。」
「うゎぁ、いたそ~……」
肩や腕に幾つもできた大きな青痣に、大二郎は目を剥いた。
「バスケットって見てるぶんには、もっと優雅な優しいスポーツだと思ってたけどな。」
「俊敏性の必要な格闘技だよ。2メートル近い相手から、ボール奪うんだ。ぼくなんて、ガタイが無いからボールごと転がされまくりだ。大二郎くんは、アメリカのNBAって知ってる?」
「うん。聞いたことくらいはある。」
「日本人でね、NBAの選手がいたんだよ。今は、全日本の選手なんだけど、173センチででかい相手と渡り合って、すごく格好良かった。ポジションがぼくと同じポイントガードなんだけど……ほんと、すごいの。こうやってね、シュート体勢に入るだろ、その時に、相手の二メートル級の選手を抜くようなそぶりして、身体を沈めて一つフェイクを入れるんだ。」
「じゃあ、おれが相手のでかいやつね。さあ、来いっ。」
大二郎は張り切って、両手を上げると禎克の前に立った。
「ぼくがこう沈み込むと、つられるだろ?」
「うん。頭が下がると、ボール取りに行きたくなるよね。」
「そこでステップバックするんだ。一歩下がれば、そこは3ポイントラインで、相手は反応できない。そこからシュート……。」
「おお~。」
禎克はしゅっと、シュートを打つ素振りをした。
「今のでスリーポイントが決まりました。」
「そっか~!やっぱりかっこいいな、さあちゃん。バスケットやってる所、見てみたいな。試合とか見に行ってさ、周囲がきゃ~とか言ってる横で、かっこいいでしょ、あれ、おれの恋人なんだって、さりげなく自慢したいよ。」
「あはは……本気で言ってるの?大二郎くんが試合会場に現れたりしたら、大変だよ、まじで。」
「う~ん……、さあちゃんが思ってるほど、おれは知名度ないからね。電車に乗っても、ほとんど何も言われないし、平気かも。」
「そうなの?すごく目立つと思うけどなぁ。」
意外だなと思う。誰がどう見ても、目だって仕方がないと思うのだが、本人が自然体なせいだろうか、普段騒がれたことなど無いと言う。
暗い気持ちがいつしか晴れてきているのに、禎克は気付いていなかった。自然に笑っていた。
Σ( ̄口 ̄*) 大二郎 「さあちゃん、痣だらけ~」
(*⌒▽⌒*)♪禎克 「こんなの平気~」
(*⌒▽⌒*)♪ちょっといい感じです。良かったね。
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