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紅蓮の虹・10 

「あのさ。俺、まだあんたの名前も聞いてないんだけど。」

あれ・・・?

ちょっと暗い顔になった・・・?

聞いちゃいけなかったのか?

「わたしの名は・・こ・・・」

言いかけたとき、思い切りドアが放たれた。

「虹!」

「わたしの虹が、来たって本当なの?顔を見せてちょうだい!」

うわ~、うぜぇ、こいつもかよ!

寄ってたかって、頭に「わたしの」って付けるの止めろよっ!

と、言いたかったが我慢した。

俺は紳士だから、基本女性には優しい・・・と言いたいけど実際はあっけに取られたんだ。

入ってきたのは、俺みたいな赤い髪の女性だった。

染めた茶髪ではなくて、もとから紅いのだ。

「ちょうどよかった。今、彼に名前を聞かれていたところだ。」

女性はくすくす笑った。

「言いにくいわね。意味から説明した方がいいかもしれない。」

「どうせ、その分じゃ誤解されそうなことをさんざんしてたでしょうからね。」

誤解されそうなことって、なんだよ。

「彼の名前の意味は、君と同じよ、虹。」




「君は自分の名前のいわれを知っている?」

俺は、施設長から聞いていた捨てられたその日に、空に現れたと言う大きな虹の話をした。

「そう・・。大きな虹が昇っているように見えたのね。」

「それは、きっと空にこの人の影が映っていたの。」

誰か、近くにお医者さまはいませんか・・・?

脳内に、ドラマで機内に向かって叫ぶキャビンアテンダントの甲高い声が響いた。



 


「大切な人を守るために、わたし達は虹を、施設の前に託したの。」

「大切な人って誰?」

「説明は、した方がいいけど理解できないと思うわ。」

「いえるのは、わたし達は龍族だってことね。」

爺さんがやってきて、やたら達筆で示してくれた。

「虹霓」と書いたそれは、「こうげい」と読むのだそうだ。

初めて知った。

龍・・・?

わけわかめ。

じゃあ、父親じゃなくてこいつは兄弟みたいなもの・・?

支離滅裂な話を聞きすぎて、俺は熱が出たみたいだった。

話は明日の朝にして、俺は睡魔の腕に抱かれた。

「あ、結局名前聞いてない・・・」

平凡な日常が終わりを告げたのだけは、確かだった

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